転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
218 / 537
9章

奪われる時間



 私は一瞬にして魔力溢れる空間に立っていた。
 淡白く発光していて、十メートルほど先に小さなログハウスが建っている以外何もない空間。

「クラオル? グレウス? ポラル? ウェヌス? みんなドコ!?」

 キョロキョロと見回しても、一緒にいたはずのみんながいない。念話しても通じず、ウェヌスの指輪も作動しなかった。
 完全に一人だけ隔離空間に囚われたらしい。

「マジか……ウェヌスもくっ付いてたのに……」

 転移もできず、この先のログハウスに行くしかない。
 自身に結界は張れたから魔法がつかえないわけではないみたい。
 緊張からつばを飲みこむと、ゴクリと音が鳴った。

 一歩一歩進んで、覚悟を決めてログハウスのドアノブを握る。
 ドアがすんなりと開くと、男性の声が聞こえた。

「ついに訪れる者が現れたか……」
「誰!?」
「神に守られし女子おなごよ。ここは私の空間だ」

 どこからか光の粒が集まり、人型を形作っていく。
 発光が落ち着くと、そこにはジルを大人にしたような男性が立っていた。見た目は二十歳くらいに見える。

「お初にお目にかかる。私はアルヴィン・プラティーギア。子孫が大変迷惑をかけた。心から謝罪する」
「幽霊?」
「幽霊とは?」
「んと、ゴーストってこと」
「少々異なる。私は既に肉体は死んでいる。思念体だ」

 それはオバケと何が違うのかと思ったけど、ラチが明かなさそうだから止めておいた。
 アルヴィンさんは、直接見たわけではないから細かいことはわからないけど、子孫が起こした問題についてはわかるらしい。
 何でわかるのかを説明してくれたけど、小難しい単語ばかりで私には理解できなかった。たぶんで感じるみたいな説明だと思う。ちょいちょい子孫の愚痴になり、そっちは理解できちゃったのが悲しい……

「まぁ、いいや。聞きたいことがあるんだよ」
「私にわかる範囲であれば。その前にそなたの名を聞いてもよいだろうか?」
「あ、ごめん。私はセナだよ。セナ・エスリル・ルテーナ」
「ふむ。セナか……善き名だ。して、質問とは?」

 今のヒュノス村について説明した後、エルフの森の隠れ家に行った話をすると、アルヴィンさんは首を傾げた。

「私の日記を読んだのだろう? 当時はセナが言う症状ではなかった。鑑定結果を考えると、神の使いに何かあったのだと私は思う」
「何かって?」
「それはわからない。当時、神殿には鍵などかかっていなかった。まずは神の使いに会うべきだ」

 アルヴィンさんは鍵開けの魔法を教えてくれた。魔力を細くして鍵穴に通すやり方だった。針金でピッキングする泥棒みたいで、顔が引きつってしまったのは仕方ないと思う。

「セナよ。頼みがあるのだが……」
「なーに?」

 アルヴィンさんのお願いは、ジルについてだった。もし可能なら、これからも唯一の生き残りと言っても過言ではない子孫を導いて欲しいと。

「ジルが一緒にいたいって思ってくれてる限りは、一緒にいるつもりだよ。私は一緒にいたいけど、ジルが嫌なら強制はできない」
「そうか……セナは心優しいのだな……時間が迫っている私には朗報だ」

 時間が迫っているとはどういうことかと聞いてみると、子孫である老害達がを重ねすぎたからあと数十年しか持たないと返された。
 思わず「充分長ぇわ!」とつっこんでしまったのは私だけではないと思う。

「思念体ならジルに憑くことってできないの? そしたらその目で見守っていけるじゃん」
「やり方を知らぬ」
「うーん。クラオルがいないからガイにぃにも連絡が取れないんだよね……って、そういえばを奪うってどういうこと?」

 私が聞くと、この場にいるのは私の精神で、本体はあの書庫にいるままだと説明された。

「こことでは時間の流れが違う。例えここで一日過ごしたとしても、ではさほど経っていない」
「なるほど……実際に年取るワケじゃなくて精神だけってことね。あの修行大好きな主人公のバトル漫画の修行の空間みたいな感じか……」

 そういえば神界もそうだったかも。神界でパパ達とゆっくり過ごしても、戻ったときにあんまり時間が経っていないことがよくあった。
 中身三十路からしたら大差ないわ。すでに思考回路が五歳児じゃないことも周知されてるし。

「安心してゆっくりしていくといい。ここを訪れたのはセナが初めてだ」

 嬉しそうに私に微笑みかけるアルヴィンさんに気が抜けてしまった。
 どうせならと薬草について質問を投げかけると、だんだんとヒートアップし始めてしまった。
 実際に時間は経過しないとしても体感では三時間以上知識を披露してくれている。
 落ち着くように無限収納インベントリからジルに淹れてもらった紅茶を出すと「久しぶりだ」と嬉しそうに飲んだ。

「これはジルが淹れてくれた紅茶だよ」
「まだまだだが及第点としておこう。先程から出てくるそのジルという名の者が私の子孫か?」
「そうだよ」

 気になるみたいなので、元々の名前はトリスタンだったこと。祖父である老害に虐待されていたこと。キアーロ国から今までのことを教えてあげた。

「トリスタンとは〝労働者・悲しみの涙〟という意味の名だ。可哀想に……しかしジルベルトでジルか。面白い名を付けたな」

 クツクツと楽しそうに笑われ、ジルの名前の意味もわかっているんじゃないかとドキッとした。

「しかし、セナは面白い。私が生きているうちに会いたかったものだ」
「会ったらどうしたの?」
「付いていくに決まってるだろ? 愉快な旅になるだろうな」
「それはどうだろう……」

 面白そうだと一緒にいることになった精霊二人と、グレンを思い出して苦笑いが零れてしまった。
 果たして彼らは楽しい旅だと思ってくれているんだろうか……迷惑かけまくりだけど、そう思ってくれてたら嬉しいな!

 暇を持て余しているらしいアルヴィンさんは、私のことも聞いてきた。
 アルヴィンさんには、私が神聖な気配に護られているように見えるらしい。
 パパ達からの加護をもらっていることを教えると、さらにいろいろと聞かれて、結局この世界にきてからのことを説明することになった。
 異世界である地球のことはさすがに言えない。嘘は付いていないから、かなりボカした内容になってしまったけど、アルヴィンさんは特に気にした様子はなかった。

「そろそろ戻ろうかな?」
「そうか……残念だ」
「どうやって戻るの?」
「む? 考えていなかったな……」
「は!?」
「時間はたっぷりある。セナが戻れる方法を私も考えよう」
「いやいやいや!」

 いつ帰れるかわかんないじゃないの! マイペースすぎでしょ!
 ここで一生を終えるなんて冗談じゃない! 起きたときに私の体が生きているとは限らないし、グレン達のこともある。何よりもクラオル達に会えないとか無理!
 こうなったら…………

「パパーーーー!!!」

 思いっきり息を吸い込んで、助けてくれとパパ達に向かって叫んだ。


感想 1,819

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜

由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。 初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。 溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。