238 / 537
第二部 10章
マースールー迷宮たる所以【2】
その後、ドロップ品を回収しながら進んで十一階層まで降りてきた。
ネラース達が見つけてくれた宝箱は今のところ全部ポーション。
出てくる魔物は全部ブーメランパンツにマッチョポーズだったよ……
一応、グレンとガルドさん達もちょっと戦って、レベル帯を調べてくれた。私はみんなに「近付いちゃダメ」って言われてドロップ品回収係りに徹してました。
「次は普通の魔物がいいな……」
〈どうだろうな?〉
筋肉は好きな方だけど、魔物の筋肉見せられてもねぇ……
願掛けしながらボス部屋の扉に手を当てると、ギリギリと音を軋ませて扉が開いた。
「今度は筋トレ?」
大きなゴリラが『フンッ、フンッ』と重そうな錘が付いてしなるバーベルを持ち上げ、ベンチプレスしている。
襲いかかってはこない……と言うよりも、集中していて私達が入ってきたことに気が付いていない。
「なんなのこのダンジョン……」
《どれ、気付かせてやろう》
エルミスが魔法で水をかけると、ゴリラは驚いて持ち上げていたバーベルを自分の胸に落とした。
「うわっ……めっちゃ痛そうだし、重そう」
バーベルが重すぎて持ち上がらないのか、唸りながらバタバタと足を動かして……モヤッとしたエフェクトが現れて消えた。
「えぇ!? 今ので終わり!?」
「なんつーか……呆気ねぇな」
《えっと……すまん》
「いや、エルミスのせいじゃないよ。むしろ戦わなくてラッキーだよ。チャキチャキ進も!」
ドロップ品は、【マッスル粉(微)】で、今までのプロテインより効果がちょびっとだけいいらしい。
うん。いらないね。
「お昼ご飯の時間だから、セーフティーエリアで食べよー」
〈おぉ! 今日は何だ?〉
ジュードさんの号令で、ボス部屋の続き部屋の安全地帯でお昼ご飯。
ボディビルダー達にジワジワと精神を抉られているので、ホッコリするご飯が食べたい。
「ジュードさんの野菜スープが飲みたい……」
「おー。嬉しいこと言ってくれるねー! いいよー!」
ジュードさんは早速スープを作り始めてくれた。
私にとってジュードさんのスープはおふくろの味。飲むと安心するんだよね。
ちなみに、私がコンロ持ってるのを知って、ジュードさんも四口コンロ買ったんだ。コンロは思ってたより高くて、四口コンロ一台で百万もした。リシータさんが半額以下にまけてくれたけど……それを私にポンッとプレゼントしてくれたデタリョ商会のおじいちゃん太っ腹じゃない?
ジュードさんがスープを作ってくれているので私はメイン料理。
ガルドさん達も気に入ったお米で親子丼にしよう! お肉と卵はダチョウでいいよね!
みんなが大量に食べるので、大鍋で大量生産のズボラ丼。
出来上がった親子丼はガルドさん達も気に入ってくれたらしく、大絶賛してくれた。
私もジュードさんのコンソメスープですり減った精神が復活した。
「やっぱりジュードさんのスープが一番好きー。安心する」
私が満面の笑みで言うと、ジュードさんは虚をつかれたように驚いて、その後私の頭をクシャクシャと撫でた。
ちょっと目が泳いでるから、照れてるみたい。
「珍しいもん見た……」
「ガールードさーん?」
ボソッとガルドさんが言うと、ジュードさんが低い声でガルドさんを呼んだ。
ちょっと慌てるガルドさんに笑ってしまった。
◇
お昼ご飯を終えた私達は十二階層へ。
出てくる魔物は変わらずマッチョポーズ。
「ポーズ取ってて攻撃してこないから楽だけど……いい加減違うの出てきて欲しい……」
そう文句言う私は、変わらず戦わせてもらえなくてドロップ品のプロテイン回収係り。
拾って、拾って、拾いまくりながらダンジョンを進んでいく。
十六階層はオークのマッチョ版。二十一階層は灰馬。
部屋に入ったとき、マッチョオークはブリッジをしていて、灰馬は障害飛越競技みたいなのをやっていた。やっていたけど…………マッチョオークはブリッジからギックリ腰(背骨が折れたのかも)で自滅、灰馬は障害物に当たって自滅っていう、なんとも微妙な終わり方だった。
そう。私達は戦ってすらいないんだよね……
ボスのドロップ品は全部肉。馬は毛皮も出た。雑魚敵のプロテインは変わらず(微)のままだけど。
灰馬との戦闘が終わって、ボス部屋の続き部屋で休むことになった。
夜ご飯を食べて、まったりタイム。ネラース達は私が作ったボールで遊んでいる。
「このダンジョンは五階層毎にボス部屋みたいだね。【マースールー迷宮】って名前らしいけど、〝マッスル迷宮〟の方が合ってる気がする」
「まぁ、そうだな。今のところ攻撃される前に倒せているが、アレが立ち向かってきたら戦闘はキツいと思うぞ」
ガルドさんいわく、入るならAランクは必要で、一人だと攻略は不可能。
私達はネラース達が狩ってくれてるけど、普通の冒険者は従魔と契約していない人が多いから。
「オレっち達、特に何もしてないもんねー」
「そうですね。正直、任せきりでいいのかな……と思います」
「ん? 戦ってくれてるよね?」
一番何もしてないのは私。プロテイン拾ってただけだもん。
「ほとんどセナっちの従魔が倒してくれてるでしょー? オレっち達かなり楽させてもらっちゃってるからさー」
「いつもなんだけど、聞いてみるね。ルフスー」
ボールで遊んでいるネラース達を見守っていたルフスを呼ぶと、すぐに飛んできてくれた。
『ご主人様どうしたっち?』
「今はルフス達がいっぱい倒してくれてるけど、私達もいっぱい倒した方がいい?」
『なんでっち!? アタシ達まだまだ戦えるっち!』
私が質問すると、ルフスが叫ぶように訴えてきた。誤解されたっぽい。
「違うよ~。ルフス達に任せるのが力不足とかじゃなくて、ジュードさん達が任せきりでいいのかな? って心配してるから聞いてみようと思って」
『驚いたっち……強くないからアタシ達余裕っち! ご主人様の敵は殲滅してやるっち!』
ルフスは胸を張りながら宣言すると、ジュードさんの方へ飛んでいき『余計なこと言うなっち!』と嘴でつついた。
「いてっ、いてて! なんでオレっち、つつかれてるのー?」
「ルフス! こっちにおいで!」
私が呼ぶと、再び私の膝の上に飛んできた。
「ルフス。ジュードさん達は、ルフス達が無理してないか、疲れてないかって心配してくれたんだよ。つついちゃダメ。ちゃんと謝って」
『そうだったっち?』
「そうだよ。さっきもみんな強いって褒めてたんだから」
『ごめんなさいっち……』
「私じゃなくてジュードさんに謝らなきゃ」
誤解が解けたルフスはジュードさんの方へ体を向けると、『ごめんなさいっち』と頭を下げて【ヒール】をかけた。
「おぉー! ヒールも使えるのかー! すごいねー! ありがとー」
褒められたルフスはちょっと得意気。ルフスに戻って大丈夫だと言うと、ネラース達の方へ飛んでいった。
ジュードさんにルフスがつついたことを謝ると、「大丈夫だよー。気にしないでー」と笑いながら頭を撫でてくれた。
〈ルフスもそうだが、ネラース達は喜んで戦っている。戦うななんて言えば間違いなく拗ねる。気にせずやつらに任せておけばいい〉
「いいんでしょうか?」
『戦闘後、褒めてあげればいいのよ』
「ん? なんでしょう?」
クラオルの言葉がわかっていないモルトさんに、クラオルの言葉を伝えると「そうします」とモルトさんはふんわり微笑んだ。
寝る時間になると、ルフスが大きくなってジュードさんの羽毛枕兼布団になってあげていて、ジュードさんが「気持ちいい」と喜んでいた。
つついちゃったお詫びだね。わだかまりみたいにならなくてよかった。
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。
赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。
アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。
その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。
そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。
街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。
しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。
魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。
フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。
※ツギクルなどにも掲載しております。
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。