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第三部 12章

友好条約締結パーティー【3】

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 子供達の恋の行方が気になってそのまま覗いていると、どうも恋する少年は好きな子に意地悪をするタイプらしいことがわかった。
 女の子は想い人と面識があるみたいで「相変わらずクールなところがカッコイイ」んだそう。
 そこから何故か話が罰ゲームの話に発展したところで、ジルから私を心配する念話が届いた。
 流石に全部を聞くのは野暮かと、私はその場を後にする。

 会場に戻った私に、アーロンさんが話しかけてきた。

「セナは踊らないのか? それとも踊れないのか? そろそろ終わりだぞ」
「半々かな? ダンスタイムがあるって聞いてたから、一応ジルとスタルティに付き合ってもらって練習はしたんだけど……って、スタルティは?」
「トイレだ。けど何だ? 気になるところで止めるな」
〈フンッ。得体の知れないやつがセナに触れるなんぞわれが許さん〉
「ってグレンが言うから。ジルとスタルティまで賛成するし、私も得意じゃないから、踊らなくて済むようにこの格好になったんだよ」
「……ハッハッハ! なるほどな!」

 アーロンさんは一瞬目を丸くして、その後爆笑。
 さらに、ちょうど近くにいたアーノルドさんまで「プッ」と噴き出した。

「確かにその服装は踊れないだろうな。さっきどこの服なのかと聞かれたぞ。あと、その髪型についても聞かれたな。全部遠い異国のものらしいと答えておいた」
「ありがとう。そう言うアーロンさんは踊らないの?」
「オレはダンスは好きじゃない。だから最初のダンスをレナードに押し付けた」

 聞けば一番最初のダンスは一番格が上の人が踊るんだそう。今回は王族が多いから、開催国であるアーロンさんの予定……だったんだけど、相手がいないってことで逃げたらしい。
 じゃあ、レナードさんと一緒に踊ってたのはレナードさんの恋人かと思えば、あれはグティーさんの妹で、このためにわざわざ頼んだんだって。

 女性陣はブラン団長達やアーロンさんを熱烈に見つめているし、男性陣はニキーダとアチャをチラチラと窺っている。
 ブラン団長達もニキーダ達もダンスに興味がないのか、他の人とのお喋りに夢中。
 会場を見渡していると、あの女の子がカボチャパンツの男性に話しかけているのに気が付いた。

 えぇ!? まさかクールでカッコイイってそのカボチャパンツの人!? あ、違うのね……って後ろからミニカボチャパンツ!?

 カボチャパンツの男性は父親だったらしく、同じスタイルの少年がいた。
 女の子は頬を赤く染め、少年カボチャパンツに手を引かれて中央へ。
 踊り始めた二人を見て、私は開いた口が塞がらない。
(マジか……少女はマシュマロボディがタイプなのか……目の一重の感じがクールに見えたのかな? でも……カボチャパンツに白タイツ……)
 私は服装が気になってしょうがないけど、女の子は嬉しそう。
 人の好みは千差万別だと実感。
 ドンマイ、恋する少年よ。

「セナ、ちょっといいか?」
「なーに?」

 アーロンさんに呼ばれて振り向くと、アーロンさんの隣りに資料に載っていた男性が二人。
 えっと……顔は似顔絵で見た。確かどっかの王様だったハズ。んー……どこの国だっけ?
 肝心なところが思い出せなくて首を捻る。

「ルィーバ国のヴァッサー・ルーバー王とアプリークム国のビュイソン・アプーム王だ」
「あぁー、えっと……どうも?」

 ルィーバ国の王様は灰がかった青……スチールブルーの髪色に、それに緑を足したような色の瞳の男性。人間の気配とはちょっと違う気がするから、おそらく魔族。気まずそうに眉を八の字にしていて、ちょっと気弱そう。
 アプリークム国の王様は薄茶色の髪の毛で、モスグリーンの瞳をしている男性。ケモ耳やしっぽは見えないけど猫みたいなヒゲがあるから、おそらく獣族。割腹がよく、着ている服がパンパン。ルィーバ国の王様とは対照的に得意気に微笑んでいる。

「南パラサーの街では迷惑をかけた……」
「ふんっ。最初に、ふんっ、チミを助けたのは、ふんっ、ニャーの国の冒険者と聞いた。ふんっ」

(暗い! ルィーバ国の王様、めっちゃ暗い! っていうか、ニャーって! 自分のことニャーって言っちゃうの!? そしてタルゴーさんの〝ですわ〟ばりに鼻息が気になるよ!)
 心の中で騒ぎつつ、「あ、はい」と返すと、ルィーバ国の王様はさらに眉を下げ、アプリークム国の王様は自慢気に鼻を鳴らした。

「ふんっ。ニャーの国に来るなら城に招いてやろう。ふんっ」

 アプリークム国の王様は言い終わると、私の返事も聞かず、のっそのっそと歩いていった。
 残ったルィーバ国の王様は再び私に謝罪し、フォースタンケの街のサーカスのことでお礼を言われた。領主から虎を捕まえた報告が行っていたらしい。
 他にも何か言いたそうだったけど、ギルマスに頼んで送ってもらった書類についてはシラを切るよ!

「……我が国の領内で今回の事件に至ったと聞いたのだが……」
「あぁー、うん」
 あ、そっちね! ってことはバレてないのかな?
「! 申し訳なく思う……」
「あれは王様のせいじゃないから大丈夫だよ」

 どんどんテンションが落ちていく王様をフォローする。
 確かにあの実験場はルィーバ国の領地だったけど、あそこに落ちたのはパナーテル様のせい。本当だったら落とし穴はなかったっておばあちゃんが言ってたからね。

 「お詫びを」って言われたのは断らせてもらう。
 正直に言えば、南パラサーの領主を替えて欲しいけど、赤カワクサについてはギルマスに頼めばいい。
 腐呪ふじゅの森も行ったし、さらに北の湧き水も精霊達がゲットしてくれた。
 新しい食材や素材があれば行くけど、今のところその予定はない。
 アプリークム国は……ガルドさん達の故郷だから行くかもしれないけどね。

 ルィーバ国の王様とも話終わったころ、やっとダンスタイムが終了。
 パーティーも終わりかと思ったけどまだ続くらしい。
 曲調が変わり、今度はベビーカステラが運ばれてきた。
 もう飽きちゃったよ……いつの間にか戻って来ていたスタルティもちょっとお疲れモードだし。

「ねぇねぇ、スタルティと一緒に部屋に戻ってもいいと思う?」
「あら、戻るならアタシ達も戻るわ」
「いいの?」
「もちろん。イイ男もいないし、足が疲れちゃったわ。ね?」
「はい。戻っても大丈夫なら、わたしも戻りたいです」

 ジィジやアーロンさん、ブラン団長達に戻ることを伝え、私達は部屋に戻る許可をもらった。



 私達はそれぞれの部屋で着替え、私の部屋で紅茶を飲みながら一息つく。

「スタルティ、大丈夫?」
「うん。ただちょっと疲れた……」
「頑張ってたものね。エラいわ」

 ニキーダとアチャに撫でられたスタルティはくすぐったそうに笑っている。
 パーティーでは恋バナを覗いたくらいで、これといって問題は起きなかった。
 私が知り合い以外で話したのはルィーバ国とアプリークム国の王様二人だけ。
 他の人はアーロンさんとジィジには挨拶しに来てたけど、私には近付いてすら来なかった。
 私の作戦が幸をそうしたのかもしれないし、ジィジが歴史上の人物だからかもしれない。
 何にしても平和が一番だよね!

 みんなは明日どうするのか聞いてみると、ニキーダとアチャは特に決まってないけど、スタルティはジィジと一緒に他国との会談があるらしい。
 まだ子供なのに王族って大変だ……

 ニキーダにこの国のことを聞かれ、話しているうちにスタルティはアチャに寄りかかりながらウトウト。
 戻ってきたジィジにスタルティを任せ、今日は解散となった。

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