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第三部 12章

あるあるパターン

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 翌日、ニキーダとアチャはタルゴー商会に買い物に行き、ジィジとスタルティは聞いていた通りに会合へ。
 私達は料理人さん達に挨拶しに食堂を訪れた。

「お、先生! 来てくれたのか!」
「昨日約束したからね」
「おれらの出来はどうだった!?」
「美味しかったよ~」
「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」

 料理長に感想を伝えると、厨房に歓声が上がった。
 褒められたのがうれしいのか、「食ってってくれ!」と料理長からはまたもカレーを渡された。
 朝ご飯でおなかがいっぱいの私はグレンにお願い。
 料理長からは見習い君が昇格して、ベビーカステラ担当になったと紹介された。
 何でも、アーロンさん達もそうだけど兵士や使用人に大人気で、毎日ベビーカステラを朝から晩まで作り続けているらしい。

「そんなに!? ごめんね?」
「いえ! やりがいもありますし、陛下よりお褒めの言葉をいただきました! 給金も上がっていいこと尽くめです!」
「なら、いいんだけど……無理はしないでね?」
「はい! ありがとうございます!」

 元見習い君はそれはもういい笑顔でベビーカステラ作りに戻って行った。
 そのまま厨房で料理長達と話していると、他国の貴族の話やアーロンさんの甥っ子と姪っ子の話などいろいろ聞けた。

「なるほどねぇ……」
「先生はニェドーラ国と仲がいいんだろ? 知っておいた方がいいと思ってな。みんな食事を運ぶときに聞き耳立ててたんだ」
「すっごく助かる!」
「いいってことよ! また何か聞いたら教えてやる」
「ありがとうー!」

 まさか利用しようと考えている本人に筒抜けだとは思うまい。
 パーティーで特に絡まれたり、変な視線は感じなかったけど、やっぱり気を引き締めておいた方がよさそう。
 ニキーダやアチャ、スタルティにもちゃんと伝えないと!



 一度部屋に戻り、お昼ご飯を食べたらこの後のために着替える。
 気が乗らないけど、お茶会なんだよね……
 昨日戻ってきたジィジに「子供達は子供達で交流させようという話になった」って言われた。

《セナちゃんできたわよ~。今日は花を編み込んでみたわ!》
「プルトンありがとう」
〈こんな髪型にしたら余計な者が寄ってくるではないか! いいか? ジルベルト、セナを守るのだぞ!?〉
「もちろんです。命にかえてもお守りします」
「いやいや、物騒なこと言わないで!」
〈昨日のパーティーではわれが睨みを効かせていたが、われが傍にいれないなど……〉

 グレンはぶつぶつと不穏なことを呟いている。
 グレンさん……そんなことしてたの? もしかして、そのおかげで絡まれなかったのかな?
 私が参加するお茶会にはグレンは大人だからという理由で参加できない。

「大丈夫だよ。パパ達のアクセ着けてるし」
〈セナは甘すぎる! さっきも食堂で言われてただろ。いいか? 何かあればわれを呼ぶのだぞ!?〉
「わかったよ。グレンはジィジと大人のお茶会でしょ? 喧嘩売っちゃダメだよ?? ジィジの取り引きに支障が出るかもしれないからね」

 グレンに注意すると、〈われより自分の心配をしろ!〉と怒られた。
 相手は子供だし、大丈夫だと思うんだけどな……



 会合が終わったスタルティとジルと一緒にお茶会の会場に向かう。
 スタルティは昨日と色違いの王族スタイル、ジルは執事服だ。
 イケメンは眼福だけど、挟まれてるのが私ってところが残念だよね……

 普段ならジルに支えてもらうんだけど、今回はスタルティにエスコートしてもらっている。
 理由は王族だから。王家のメダルを持ってはいるけど、私自身は平民のため、舐められない措置なんだそう。ちなみに、言い出しっぺはジィジ。

 会場へ着くと既に子供達は集まっていて、入った瞬間、注目を浴びた。
 ただ、子供達ゆえか、早々に視線は外され、それぞれグループ毎の話に戻った。

 総勢四十人以上はいそう。
 昨日のパーティーではここまで多いとは思っていなかったし、おそらく昨日のパーティーに参加していない子供もいる。

「セナ様、あちらの食事を食べながらの立食パーティーのようです」
「なるほど……とりあえず取りに行こうか?」

 並べられている料理はベビーカステラ、砂糖コーティングのクッキー、ナッツパン、ドライフルーツパン。
 私は一番小さいベビーカステラをお皿に盛り、私達は壁際へ。

 食べようとすると、早速中学生くらいの女の子が話しかけてきた。

「初めまして。わたくしはヴァリージェ国、第三王女、べギー・ヴァリージェでございます」
「……ニェドーラ国、第一王子、スタルティ・ジュラルだ」
「えっと……セナです」
「まぁ! 平民風情が許可を得ず話し出すなんて! 非常識ですのねぇ!」

 女の子は私を鼻で笑い、扇を口元にあててふんぞり返った。
 あぁ……またこのパターンか……面倒だなぁ……

「((ジル! 武器はダメだよ! しまって!))」
「((セナ様を侮辱するなど……あの無駄な腹肉を削ぎ落としてやりましょう))」
「((ダメだって! 我慢して我慢!))」
「……僕の大切な友人をバカにするのは止めてくれないか? 不愉快だ。それにセナは僕の国の恩人、シュグタイルハン国やキアーロ国にとっても恩人。キミの発言は三ヶ国にケンカを売っているようなものだ。その言葉、そのまま報告させてもらう」

 ジルを念話で止めていると、スタルティが私を庇いながら目に鋭さを持たせる。
 冷たく言い放たれた女はわなわなと震え、私をすごい形相で睨んできた。

「その顔、鏡で見るといい」

 スタルティが尚もあしらうと、「ひどい!」と走っていった。途中、思いっきり転んでたけど。
 ジルはスタルティの言葉に満足そうに武器をしまった。

「全く、ひどいのはどちらだ」
「スタルティ、あんな言い方していいの? 私は大丈夫だよ?」
「お爺様にも言われているし、僕も許せない。嫌な気持ちにさせてごめん」
「ううん。庇ってくれてありがとう」

 元々冷めた考え方だったけど、ここへ来てから一気に大人びた感じ。
 そんなに生き急がなくてもいいのに……と思うけど、そうは言ってられないのかもしれない。王族や貴族のドロドロは料理人さん達にもバレているくらいだもんね……あんまりストレスを抱えないで欲しい。

 その後スタルティや私に挨拶してくる子供達はマウントをとることもなく、無難に話しては去って行く。
 マウントを取ろうとしていた子達は遠巻きに見ている感じ。

 ぶっちゃけ、名前も国も覚えきれない。国毎にまとめて来て欲しい!
 覚えることを諦めた私は、途中から心の中であだ名を付けて遊んでいる。
 カボチャパンツはどっかの国の王子だった。彼のあだ名はもちろんカボチャパンツだ。

 子供達を見ていると、意外にも美男美女ではなく普通の子達が多い。この世界はイケメンと美人がほとんどだと思っていたけど、そうでもなかった。私的には親近感が湧く。
 本来なら私はそっち属性だよな~なんて思いながら、挨拶しにきた女の子に微笑みかけると、顔を赤くされた。

「大丈夫ですか? お顔が赤いですけど……」
「しゅっ、しゅみません! 大丈夫でしゅ!」

 いや、めっちゃ噛みまくりじゃん! 全然大丈夫じゃなくない!?
 女の子はガバッと頭を下げて走っていってしまった。
 ジルはその子のことを「要注意ですね」なんて言っていて、どこを見てそうなったのかさっぱりわからなかった。

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