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13章
村の慰労会
しおりを挟む三時間以上かけ、ようやく一番手こずっていた若いお兄さん達が最後の一匹にトドメを刺した。
「だぁぁぁ! 終わったー! 勝ったぁぁぁぁ!!」
ギルドで私を心配してくれたお兄さんがガッツポーズをしたままバタンと寝転がった。パーティ仲間も地面に座り込んで息を切らせている。
みんな疲労困憊みたいだけど、そこまで大きなケガは見当たらないことにホッと一安心。
「グレンとジルは大丈夫?」
〈思いっきりできなかったのが不満だ〉
「少々疲労を感じますが、そこまでではありません。セナ様は?」
「私も疲れたけど大丈夫だよ」
〈早く肉が食べたい〉
「一応ギルドに報告してからじゃないと。今は……パンで我慢して?」
不服そうに口を尖らせたグレンにメロンパンを渡すと、ちょっと機嫌がよくなった。
グレンさんチョロい……
〈むぐ……さっさと帰るぞ〉
「か、帰りたくねぇ……」
「もう動けないわ……」
「まぁ、気持ちはわかるが……」
ここまで来るのにゲーノさんの村から早歩きで二時間。これからその道のりを帰る元気がないみたい。
「ギルドからもらったポーション飲んだら?」
「あれ買い取りだろ? ケガでもないのに飲めるかよ」
「え? そんなこと一言も言ってなかったよね? 『ポーション類も用意しましたー』って言ってたから飲んでいいやつだと思ってた」
「おたくが虚偽の申告させないようにしただろ」
フリクエさんと話していると、モノクルおじさんが割り込んできた。
いちいちトゲのある言い方する人だな……
「嘘付かなきゃいいだけでしょ? 普通に『疲れたから飲んだ』って報告すればいいんじゃないの? あの騎士さん達はどれだけ使ったって報告しなきゃいけないから、渡すつもりがなかったんだろうし、ギルドは何も言わず持ち逃げされるのが嫌なんだと思うよ? 転売とかされる可能性も捨てきれないからね」
「んん? なら飲んでいいってことか?」
「うん!」
私が断言すると、フリクエさん達はグイっとポーションを煽った。フリクエさんが飲んだことで同じ馬車に乗っていた人も飲み、それに釣られて寝転がったままの若いお兄さん達も飲み……結局、私達以外の全員が飲んだ。
ポーションを飲んで疲れが少し緩和されたらしく、全員歩きだした。
村に着くと、騎士達と一緒に何故かゲーノさんが落ち着かない様子で待っていた。
「あれ? ゲーノさん!」
「んおぉ! 無事だったか! ケガは!?」
「みんな大きなケガはしてないよ~。心配して待っててくれたの?」
「騎士達からアンタらが参加してるって聞いただ」
「なるほど。ちゃんと倒したからもう大丈夫だよ」
私が笑顔で言うと、ゲーノさんは「よかっただ……」と笑った。
「全て退治していただけたということでよろしいでしょうか?」
「この救世主のおかげでな」
私達を森まで案内した騎士の質問に、モノクルおじさんが私を指さしながら答える。
さらにモノクルおじさんは「五体だと聞いていたイグアナドンは十五体だった。救世主の補助がなければキツかったぞ」なんて続けた。
なんでいちいち〝救世主〟って言うかな……
「十五!? 申し訳ありません! ケ、ケガは?」
「救世主のおかげで小さなものだけだ。疲れてはいるがな」
「ギルドからもらったポーション、疲れたから飲んだぞ。買い取りなのか?」
「いえ! キチンと報告さえしていただければ構いません。報告書に記載しなければならないので」
「今日は泊まってってくれ! 騎士達に聞いて村のみんなで準備してただ!」
何か言いたげな視線をモノクルおじさんから感じたけど、笑顔のゲーノさんが話題を変えてくれた。
ゲーノさんに案内された先は村の宿。
宿の前にテーブルが用意されていて、その上には大量のラップサンド。さらに村の女性達によって、どんどんと増えている。
「さぁ、食ってくれ! 村からのお礼だ!」
「「「「おぉー!」」」」
ゲーノさんが振り向いて両手を広げると、冒険者達から歓声が上がった。
早速手を伸ばした若いお兄さんに、宿の女将だと思われる女性が「食べる前に【クリーン】かけな!」と怒り、笑いがおこった。
〈セナ! 食べていいのか?〉
「いいよ~。みんなも食べるからほどほどにね?」
〈ジルベルト! たらふく食べるぞ!〉
テンションの上がったグレンはジルを引っ張っていってしまった。
私の話聞いてたかな?
「セナ様、ちょっとよろしいでしょうか?」
「うん。どうしたの?」
「ギルドへ報告をすると思いますが、我々も国王に報告しなければなりません。ですので、お話をお伺いしたいのです」
「あぁ、なるほど。いいよ。ここだとあれだから、ちょっと離れよっか」
「お手数おかけします」
ちょっと騎士さんに待っていてもらい、ラップサンドを確保。話をする間、騎士さんも食べられなくなっちゃうからね。
「お待たせ。食べながら話そ? いっぱいもらってきたから騎士さんも食べてね」
「え……ありがとうございます。では」
食べながらイグアナドンの様子や戦闘中のことを伝える。途中いくつか騎士さんから質問もされた。
騎士さんはもぐもぐとラップサンドを頬張りながら、私の話を書き留めていた。
「……なるほど。では、もうイグアナドンの脅威はないと思ってもよろしいのでしょうか?」
「うーん……断言はできない。グレンが言うにはイグアナドンって二種類いるんだって。肉食と草食。今回のは草食しかいなかったから、肉食の方に山を追われたんじゃないかって。だから、生息域を広げようとしてるワケじゃないと思う。ただ、もう絶対山から下りて来ないとは言えないんだよ。他にも追われてくるのがいるかもしれないから」
「……ふむふむ。では必要以上の警戒はしなくていい……ということでしょうか?」
「うん。それがいいと思う。安心できないっていうなら、一ヶ月くらい警戒しながら様子見ればいいんじゃないかな?」
「……なるほど。ありがとうございます。とても助かります」
「いえいえ」
騎士さんは分厚くなった報告書を片手に、頭を下げて去って行った。
すぐに国に送らないといけないため、単身ピリクの街に戻るんだそう。
大変だなぁ~なんて思っていると、グレンが私を呼ぶ声が聞こえた。
〈セーナー!〉
「はーい! ここだよ」
〈これが美味しいぞ! この肉がいい!〉
グレンに押し付けられたラップサンドを食べてみると、味付けがお肉の風味にマッチしていた。ハーブでさっぱりしているのに、コクがある。
「へぇ~、美味しいね! この味付け初めてだ」
「こちら、宿の女将が考案したそうです。セナ様にぜひ食べていただきたいと」
「そうなんだ。美味しいって言わないとね。女将さんは?」
「あちらです」
ジルが示した方を見てみると、宿の中と外を行ったり来たりして忙しそうに動き回っていた。
女将に挨拶に向かうと、「よく来たね」と抱きしめられた。
なんとこの女将、ゲーノさんの奥さんだった!
「いつの間に結婚してたの!? 言ってくれればよかったのに!」
「そんなこと小っ恥ずかしくて言えっかよ!」
「おめでとうー! お祝いしなきゃ!」
「アッハッハ! 気にしなくて大丈夫だよ。セナ様はこの人の恩人だし、この村の恩人だからね! 『おめでとう』って言ってもらえるだけで嬉しいよ!」
女将さんはゲーノさんの背中をバンバンと叩き、豪快に笑っている。
女将さんは新しいラップサンドをメニューとして出していいかと私に聞きたかったらしく、褒める度に照れ隠しでゲーノさんの背中を叩いていた。
その様子はカリダの街のパン屋【パネパネ】を思い出しちゃう。
あの暖かい家族みたいに仲良しの夫婦でいて欲しい。
(何か記念になるものをプレゼントしたいな)
--------キリトリ線--------
昨日のお昼、『もやし工房』が表示されました。
非公開だった『五章登場人物まとめ(ネタバレ)』も公開されてしまったので、よかったれコチラもご覧下さい。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
引き続き読んでいただけると幸いです。
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