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13章
高級蜂蜜
しおりを挟む目が覚めると、何故かジルとグレンに挟まれていて、胸元にはクラオル達がいた。
私が眠った後に、いつの間にやら移動してきたみたい。
グレンの腕に私とジルの頭が乗っていて、グレンの反対の手がジルがベッドから落ちないように支えている。
シングルよりは大きいけど、セミダブルほど大きくないベッドに三人は狭い。間の私は苦しくはないけど、寝返りがうてない。
〈……ん。起きたのか?〉
「うん。おはよう」
〈……大丈夫そうだな。おい、ジルベルト。起きろ〉
「!」
私がモソモソと動いていたせいで起きたグレンが声をかけると、何の前触れもなくジルがパチッと目を開けた。
鋭い目でキョロキョロと部屋の様子を窺い、状況が掴めたのか「セナ様、おはようございます」と私に微笑むジルに私が驚きを隠せない。
「お、はよう。だ、大丈夫??」
「はい。プルトン様が結界を張っているのを失念しておりました。セナ様は寝不足などございませんか?」
「それは大丈夫。クラオル、グレウス起きて。朝だよ」
『んん……主様おはよう』
『おはようございましゅ』
「二人ともおはよう」
いつもより早い時間だからか、私が眠った後に私のところに移動したからか……眠そうに目をシパシパさせている二人を撫でてから行動を開始する。
今日はタルゴーさんの付き添いでシノノラーって妖精を見に森へ行く約束だ。
朝ご飯を食べに一階に降りると、既にタルゴーさんがご飯を食べていた。
楽しみすぎてあまり寝ていないと言うわりには、いつもより肌ツヤがいい気がするのは何でだろう?
タルゴーさんがマシンガントークを炸裂させている間にも、ラゴーネさんが朝ご飯を運んでくれたおかげで、食べる時間がない! なんてことにはならなかった。
「セナ様、頼まれていたパンはコチラでよろしかったでしょうか?」
「わぁ~! いっぱい! こんなにいいの?」
「もちろんです。本日お出かけとお伺いしておりましたので……簡単なもので申し訳ありませんが、こちらは昼食時にお召し上がりください」
「おかずまで! とっても助かる! ありがとう!」
頼んでいた以上の大量のパンとグレンが喜びそうな大量の串焼きを用意してくれたラゴーネさん。
朝ご飯もグレンの分は私の倍量を好意で準備してくれてるのに……
これ、串焼きだけでも焼くのに相当時間かかってるよね……何かお礼しないとね!
朝早いため、通りを歩いている人は少ない。
護衛さん達との待ち合わせ場所である冒険者ギルドの馬車置き場で大人数用の馬車を出し、グリネロを呼ぶ。
案の定タルゴーさんが大興奮だったんだけど、想像以上に護衛さん達にも食いつかれた。
全員乗ったら出発。
質問攻めに予想外に時間がかかったため、グリネロにはちょっと急いでもらう。
グレンはタルゴーさんがうるさいと御者席に避難したため、ジルが荷台に来てくれたんだけど……まさかの布教活動が始まってしまった。
ジルの信者発言にタルゴーさんが激しく同調、さらに護衛さん達まで感心しちゃって収拾がつかない。
なんとか息継ぎのタイミングを見計らって声をかける。
「はい、はーい! ジルさんもタルゴーさんもちょっと落ち着こうか? はい。これ飲んで」
「ありがとうございます」
「ありがとうございますわ。そうですわ! セナ様にご報告をしようかと思っていたことがありますの」
「報告?」
話を逸らしたからか、タルゴーさんが何かを思い出したらしい。
これ幸いと聞き返すと、ピリクの街からニャーベルの街まで行く間の山の野営地で会った夫婦についてだった。
私が言ったアドバイスに従って、タルゴー商会に仕事を求めに行ったそう。今では夫婦共にタルゴーさんの工房で働いているらしい。
「そっか。よかった、よかった!」
「他にも仕事を探している方がいれば雇いますので、遠慮なく紹介して下さいまし」
それは大変じゃないかと聞くと、中敷きも他のアイテムも生産が追いつかないくらいの売れ行きらしい。
現在、タルゴー商会がある街では新しい工房と寮を建築してるんだって。それと並行して、従業員の教育をしているそう。
紹介はいいんだけど、私はあんまり他の人と関わっていないから期待はしないで欲しい。そう言うと、それは織り込み済みらしい。
それならいいかな?
「あ、紹介で思い出した。護衛さん達にプレゼントがあったんだった」
「プレゼント?」
「そそ。はい、タルゴーさんもどーぞ」
「わたくしもよろしいんですの?」
「ん? これは?」
「ミエールツだよ。ハニーベアのね」
「んな!?」
正確に言えば、ハニーベアが持っていた壺に入ってたやつ。
他の蜂蜜と何が違うのかと思ったら、香りがよくてあっさりした甘みだった。栄養価もちょっと高いみたいだけど、際立った差異はなかったんだよね。その辺は好みの問題じゃないかな?
グレンいわく、壺を奪って倒さないと手に入らないからレアな扱いなんだって。
リーダーが目を丸くしている横から、丸っこい人が目を輝かせてバッと蜂蜜が入ったポーション容器を奪い取った。
「出たんだすか!? もらっていいんだすか!? 高級ミエールツだすよ!?」
「ふふっ。うん。好きって言ってたから。少なくてごめんね? その代わり、その容器は劣化しないようになってるから、新鮮なままだよ」
丸っこい人は「おおおおお」と言葉になってない声をあげながら、ポーション容器にスリスリと頬擦りした。
「気持ち悪ぃな。どんだけ好きなんだよ……っつーか、本当にダンジョンに出たのか?」
「うん。最後のボス部屋倒した後に普通の続き部屋と違う隠し部屋見つけたの」
「隠し部屋……そりゃ見つけらんねぇハズだな……それ他のやつに言ったか?」
「ううん。今初めて他の人に言ったけど、どうかしたの?」
リーダーが言うには、そういう情報はお金になるんだそう。しかも今回は高級な部類に入るものだから、情報を寄越せと襲われる可能性も出てくるらしい。
「そうですね。貴族も欲しがる情報かと。セナ様の安全のためにも秘匿することをオススメ致します」
「マジか……内緒にしとく。みんなも秘密ね?」
私がお願いすると、快く了承してくれた。
いい人達でよかった!
護衛さん達はハニーベアの強さをジルから聞いて、タルゴーさんをピリクの街まで送ったら戻ってきて入ることに決めたらしい。
「壺取らなきゃ手に入らねぇんだから、一気に食うなよ?」
「わかってるだす! 毎日ひと舐めひと舐め大事に舐めるだす!」
「発言が気持ち悪いぃぃ~」
「なんとでも言えばいいだす! この美味さがわからないなんて!」
護衛さん達が騒ぎ始め、荷台は賑やか。
私は心配性なジルによって、少し離れて見守ることになった。
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