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16章
そんな矜持捨ててしまえ
しおりを挟む「は? ……え!? なんで土下座してるの!?」
それも宰相側に座っていた全員である。それはそれは見事な、お手本となり得る土下座だ。ビックリなんてもんじゃない。
驚きすぎて立ち上がった私を座らせたジルによると、忌み子が冷遇されてたよ~の辺りからすでに土下座していたらしい。
覗き込むように紙芝居見てたから知らんかったよ……
「申し訳ございません!!!!!」
もう怒鳴られることはないかなとプルトンに結界を解除してもらった瞬間に部屋に響きわたった言葉である。
あまりのクソデカボイスに、私達はもれなく全員ビクついた。
「申し訳ございません!!!!!!!!!」
さらにもう一度耳に追い打ちをかけられた瞬間、肩を跳ねさせた私はジルに耳を塞がれた。急いでプルトンが結界を張り直してくれたことで、みんな咄嗟に塞いでいた耳から手を離した。
いつからリピートしてたの? まさか土下座始めた冷遇うんちゃらかんちゃらのところからじゃないよね? 私のクラオルとグレウスの耳が遠くなったらどうしてくれるの? 先に注意しておけばよかった……
「ごめん。結界解除するとき言えばよかったね。まさかあんな声を張り上げてるとは思ってなくて」
「いや、気にしなくていい。セナのおかげで助かってると実感した」
アデトア君、それは怒鳴り声が聞こえてなくてよかったってことかね? こっちの声は聞こえてるハズですよ。
プルプルと頭を振るクラオルとグレウスを撫でて【ヒール】をかけようとしたところで、私も耳がヤられてちょっとモワモワするし、全員に【エリアヒール】をかけることに。
「宰相さん、宰相さん、声量落として。いい? わかったなら頷いて」
土下座したまま頷いたのを見たプルトンが結界を解除してくれた。言わずとも行動してくれる素晴らしさよ。
「……セナ様方に対し、数々の無礼な態度、誠に申し訳ございません」
(無礼だと思ってたんかーい! しかもさっきまで私のこと小娘呼ばわりだったのに、態度の急変具合がすごいな……温度差で風邪引きそう)
「王様のあの説明じゃ致し方ないと思うからいい。宰相さんも他の人も顔上げて。足痛いだろうし、イスに座りなよ」
私がそう言うと、そろそろと顔を上げ、チラチラとこちらを窺いながらノロノロと着席。その様子に苦笑が溢れる。宰相さんじゃないんだから、ブチ切れたり、文句付けたりしないよ。
「さて、質問は後で受付けるから、宰相さん達はちょっと待っててね。アデトア君と王様は補足みたいなことって何かある?」
「いや、オレからは特に」
「うむ、大変わかりやすかった。そういうことだったのだな」
「「……ん?」」
にこやかに頷く王様の言葉に何か違和を感じる。
ちょっとたんま。え、王様が納得するのはおかしくない? テルメの街でちゃんと説明したじゃん。
「王様、もしかしてわかってなかったの? あのときの報告、聞いてなかったの?」
「ん……いやはや、ははは」
「笑って誤魔化さないでくれる?」
「いやー、素材が衝撃的すぎて魔導具の金額が一体いくらになるのか……と、そればかりに気を取られていた故、あまり記憶が……ははは」
「笑いごとじゃないと思うんだけど……」
困り顔でポリポリと頬をかく王様に半目になってしまう。
この人大丈夫? よく今まで王様としてやってこられたよね……せめて事の成り行きくらい把握してなきゃダメでしょうが。宰相の態度を窘めるだけだったのは、王様本人がわかっていなかったことが少なからずあるんだろうな……
ジト目をアデトア君に向ければ、彼はすでに頭を抱えて項垂れていた。
王様と宰相の様子を見ていて、ふと、今まで王様の言葉足らずとか理解不足を宰相さんが先読みして補っていたのでは? と思い至った。そしてそれはあながち間違ってない気がする。それなら彼の国賊扱いも腑に落ちるってもんよ。
今後のことも考えて、ここは一度お灸を据えた方がよさそうだ。
「……ねぇ、王様。真面目な話、楽観視しすぎだよ。あのとき何回も確認したよね? 納得して払うと契約書を交わしたのは国王であるあなた。王様はさ、国を背負う立場なんだよ。知らなくていいこともあるだろうけど、知っていて損になることはないと思う」
アーロンさんとフェムトクトさん親子に対してもそう。いくら予定外の訪問とはいえ、連れの平民である私にはことごとく噛みついていたくせに、王様と宰相さんは王族である彼らやジィジ達に対して、ロクに挨拶もしていないよね? 国交問題になっていないのは彼らの優しさだよ。まぁ、今回のことでこの国の印象は変わったかもしれないけれど。
思いつくままに不満と事実を混ぜたものを述べていけばいくほど、王様と宰相の顔色が悪くなっていく。宰相さんなんて玉のような汗を浮かべ、唇を噛みしめている。
「……せめて外交向けの体裁は整えるべきだったんじゃない?」
「……っ……」
「え? 宰相さん、何か言った?」
俯き加減だった宰相が何か言った気がして声をかけた瞬間、彼はバッと顔を上げた。真っ直ぐ、射抜くような強い瞳に若干たじろぐ。
え、何? わかったような口を利くなって言われる感じ?
「やはり切腹を……!」
「どうしてそうなった!?」
気付いたときには叫んでいた。
体裁は整えるべきって言ったのに、誰が切腹なんて返ってくると思うよ? いやさ、話の流れ的にはわからなくもないよ? わからなくもないけど、極端すぎでしょ! どこの武士よ!?
宰相さんの言い訳は予想通り、「態度の悪さと迷惑を死んで詫びる」というものだった。そんな詫びなんぞいらん。
断っているのに宰相はやたらと食い下がる。
「しかし、大恩に対して何もしないなどとは……国の矜持に反します!」
「そんな矜持なんて捨ててしまえ! ……大体、死んだからって詫びになるとは限らないんだよ。私からしたら迷惑だわ」
「!」
「死んで詫びるって言うくらいなら、今まで通りに働きつつ王様の悪癖矯正してよ。んで、表立たなくてもいいから、アデトア君とフラーマ王子のことも支えてあげて」
「………………それがあなたの望みであれば」
宰相が噛み締めるように頭を下げた。ちょっと瞳を潤ませているのは気のせいだと思いたい。
「あ、宰相さんだけじゃなくてあなた達全員だからね。自分は関係ないなんて思わないで。なんのために呼び出したと思ってるの」
臣下サイド全員にクギを刺す。
それに宰相さんだけだと、また暴走するかもしれないじゃん? 王様を、国を想うあなた達の腕の見せどころだよ。
反発がくるかもって思ったのに、全員嬉しそうに笑みを浮かべているのは何故?
「……えぇーっと、納得したならこの話は終わりね。王位継承について話を進めようよ。王様、もったいぶらないで、サクっと言って」
「あ……あぁ、わかった。先ほど伝えた通り、次代はフラーマ。フラーマからアデトアが継ぐ。王位に就いていないときは互いの手助けをしていくこととなった」
王様の補足として、アデトア君の寿命についてを説明すると、拍子抜けするほどアッサリと納得された。
「そういうことでしたか。セナ様がこんなにも我が国を慮ってくれていたとは……」
いや、宰相さん。私はアデトア君のことしか考えていなかったよ。恋愛感情アリだと思われたくないから言えないけど。
話題を変えさせようと隣に座っているアデトア君の腕をヒジでちょいちょいとつつく。
「……! しかし後任がオレになることを納得しない者もいるだろう。そこでオレが古代龍と友好関係であることを公表することにした――」
内容は私達ですでに取り決めていたこと。今回のキーはアデトア君が言ったように古代龍。
第二王子派の中にはフラーマ王子の後任にはフラーマ王子の子供を……邪魔なアデトア君を始末してしまおう! なんて危険な思考回路を持つ人もいるだろう。ということで、アデトア君が存命中は古代龍の協力が得られるようにおばあちゃんを通してお願いしたのよ。
魔物大量発生とか自国の戦力ではどうしようもない場合のみの契約なんだけどね。古代龍であるグレンとは友人って言える仲だから〝友好関係〟って言葉も嘘にはならない。
あの魔堕ちドラゴンで迷惑をかけたことはわかるものの、利用されるだけは勘弁っていう族長の意見を考慮してこうなった。
古代龍を呼べるのは私かアデトア君だけで、手段は笛。私がグレンの里の族長にもらったアレである。
まぁ、ホントにヤバいときは私も助けに入るつもりだし、笛を使うのは最終手段だ。安心感って大事でしょ?
ちなみに、アデトア君用に新しく作ってもらった笛は魔堕ちドラゴンとグレンの兄者に届く仕様。私の笛は族長はおろか赤獄龍……っていうか私が会った、里の住民全員に届く特別製だそう。過剰戦力もいいところじゃない? インプから知らされて、私が受け取った笛は使いどころがないことを痛感した。
クラオルとグレウスをモフモフしながらアデトア君の説明を聞き流していると、いつの間にやらかなり込み入った内容に移っていた。
私達もいるんだから少しは遠慮して欲しい。人事異動について意見を求められても答えられません。そりゃ、精霊の子達が振込みの件で調べてくれてたから少しはわかるよ? でもさ、そんな大事なこと他国民に聞くんじゃありません!
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