転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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5巻

5-1

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   第ゼロ話 これまでの話


 ラノベあるあるネタのトラ転……ではなく、〝神様のミス〟で異世界へと転生することになった私は、その記憶を失い、森の中で目を覚ました。危険なモンスターが蔓延はびこる森の中を、後に従魔契約することになるクラオルと一緒に彷徨さまよい……運よく【黒煙こくえん】という冒険者パーティに助けられた。勃発したトラブルで【黒煙こくえん】のみんなとは離れ離れとなり、キアーロ国――カリダの街にある騎士団に身を寄せることに。記憶も取り戻し、何故か私に甘い神様達を今ではエアリルパパ、アクエスパパ、イグねぇ、ガイにぃと呼んで、可愛がってもらっている。
 心配性なブラン団長達の希望と、「まずはこの世界に慣れるべき」とのパパ達の助言に従い、カリダの街で気ままに冒険者生活を送っていた私。そこで天災級の魔獣を倒したことと、古代龍エンシェントドラゴンのグレンと契約したことで国王から呼び出しをくらうハメになった。
 私を利用する気満々の国王とし、自由を確保できたまではよかったのに、宿のお部屋が荒らされてお城で寝泊まりしなきゃいけなくなったり、お世話になった服屋さんで問題が起きたり、脅されていた付き人に命を狙われていたり……
 犯罪者として処刑されることになった付き人――トリスタン君を助けるため、隣国シュグタイルハンの国王――アーロンさんも巻き込んだにて、を勝ち取ったところである。



   第一話 救われた者の望み


 キアーロ国の王――マルフト陛下との交渉の場だった応接室を後にした私達は、宛がわれている部屋へと戻ってきた。ソファに座ってから、先ほど髪を切ったトリスタン君……じゃなくてジルベルト君か。別人として生きるため、改名した彼の毛の束を握ったままなことに気が付いた。

「あぁ、これ忘れてたや。どうしよう?」
《髪の毛には魔力が籠もっているから、捨てることは推奨しない。呪いなどにも使われるからな。あるじは魔道具も作るから活用できると思うし、持っていて損はないと思うぞ》

 私の呟きに反応してくれたのは青い精霊のエルミスだ。呪いなんて聞いちゃったら捨てられないじゃないか。一本残らず無限収納インベントリへ収納しておく。

「トリスタン……いや、ジルベルト君だ。髪の毛をどうするかはジルベルト君本人に聞いてから決めよう。それにしても簡単に許可が下りたねぇ。もっとごねられるかと思ってた」
『主様が前に怒ったのが効いたんじゃない?』
「それも国の代表としてはどうなんだろう……」
『主様。今日この後はどうするの?』
「うーん、どうしようか? 夜ご飯までは時間があるよねぇ……ちゃちゃっと魔道具作っちゃおうかな?」

 クラオルとグレウスのモフモフが疲れた心に効く。今日も素晴らしいモフモフである。

『王都に来てからご飯作ったり、いろいろと調べたりして忙しいから休んでほしいわ』
「そうだねぇ。ちょっと疲れたから甘いものでも……そうだ、シャーベット食べよ?」
『さっき言ってたやつよね?』
「うん。食べてみたらわかるよ」

 王都に来る馬車の中で作っておいたシャーベットをみんなに配る。疲れたときに甘いものが食べたくなるのはなんでだろうね?

「美味し~。生き返るねぇ」
『んん! 冷たくて美味しいわ!』

 みんなニコニコでパクパク食べている中、グレンが〈クッ!〉と顔をしかめてこめかみを押さえた。

「グレン、もしかして……キーンってなった?」
〈うむ……〉
「ふふっ。急いで食べるとなるんだよ。焦らないで食べたら大丈夫だから」
〈わかった〉

 頭痛が治まったグレンはゆっくりと食べるのを再開し、グレンを見ていた他のメンバーもみんなゆっくりしたペースに変えている。この世界でも頭キーンは嫌がられるのね。


 食べ終わった後は幻影の魔道具作りのため、精霊三人にお願いして調べてもらったり、精霊の子達に調べてもらったり。知識の準備が整ってからコテージへと移動した。
 精霊三人の協力の下、魔道具の核となる魔石に魔力を込める。この魔道具でジルベルト君の処刑の様子を映し、彼が死んだと貴族達に思い込ませるのだ。私の想像力が成功の鍵を握るため、責任は重大。リアリティが出るように具体的に想像を膨らませていく。処刑というからには血や内臓なども出さなきゃいけない。魔物との戦闘経験があってよかったし、日本で楽しんでいた映画やゲームがものすごく参考になった。
 集中して魔力を込め、おそらく核はできた。あとは精霊の子達が仕上げの部品を付けてくれる予定になっている。
 スプラッタな光景を詳細に想像したせいで、私は気持ちが悪い。ガイにぃ危惧きぐしていた通り、これを謁見の間に集まった貴族全員に発動することになったら、魔力消費と内容が相まって確実にグロッキーになるに違いない。ウェヌスには「精霊の子に頼むとき、魔石に込めた魔力が一定の量で出続けるように作ってほしい。あと、再生と停止ができて、壊れたように見せる仕掛けを作ってもらえると助かる」と伝言を託した。精霊の子達で作れなかったら……なんとか自分で作るしかない。ぜひとも成功してほしい。
 ウェヌスとプルトンは私からパンと魔石を受け取るとすぐに精霊の国に行き、魔道具作りが得意な子達に渡してくれた。戻ってきたウェヌスによると、プルトンが残って監修してくれるとのこと。
 魔道具の核が作り終わってもまだ寝るには早い。思っていたよりもスピーディーに核を作り終えていたらしい。みんなに自由にしていいと伝えると、クラオルとグレウス以外はどこかへ遊びに行った。
 簡単な夕食を作り、お風呂に入った私はソファに座ってクラオルとグレウスをモフモフ。二人共、私の手にスリスリと身を寄せてくれるところがたまらなく可愛い!

「グータラが大好きなのに全然グータラできてないよねぇ……事件じゃなくて、楽しいことならウェルカムなんだけどな」
『ねぇ、主様。ここを出たら、ガルド達を捜しながら旅をするんでしょ? どうやって移動する気なの?』
「馬車を買うか、走って行こうと思ってたよ?」
『走るってずっと?』
「グレンもドラゴンだし、体力あるだろうから大丈夫かなって」
『そう……わかったわ。無理はしないでちょうだいね』
「そうだねぇ。もう寝込んだりしたくないから、そんな無理はしないよ。それにしてもシュグタイルハンの王様……アーロンさんの到着早くない? カリダの街から王都まで魔馬車で十日かかるのに、それとは比較にならないくらい遠い隣の国から来るなら何ヶ月もかかりそうじゃん」
〈王族のみが使える転移門ゲートを使ったんだろう〉
「あれ? グレンおかえり。転移門ゲートって?」
〈ただいま。転移門ゲートはそのままの意味だ。転移できる門だな。城や古代遺跡などにある。シュグタイルハンは歴史が古いから持っていても不思議はない。転移門ゲートは、範囲は限定されるが目的地を自由に決めて飛べるタイプ、飛ばされる場所が固定されているタイプ、飛ばされる場所はランダムで運次第のタイプ、と三種類あると言われている。シュグタイルハンのあやつは転移門ゲートで近くまで飛んできたか、直接城に来たんだろう〉
「なるほど。RPGのあの渦巻きみたいな感じか。王族しか使えないの?」
〈城にあるものは王族限定だと言われているな。許可されたり、王族と一緒だったりすれば使えるかもしれないが……秘匿されているため細かいことまではわれは知らん〉
「そっかぁ。じゃあ私達はやっぱり使えないね」
〈おそらくな。セナ、そろそろメシの時間ではないか?〉
「なるほど。戻ってきた理由がわかったよ。もう作ってあるから、みんなを呼ばないと――」
〈呼んだ!〉
「……早いね」

 グレンに苦笑をこぼしたとき、タイミングよくプルトンが魔道具を持って戻ってきた。プルトンから魔道具の説明を受けている間に全員集合。
 説明を受けた後はご飯タイムに。今日の夜ご飯はオニオングラタンスープとパンとサラダだ。いつもなら肉じゃないと騒ぐグレンなのに、今日は何も言わずに食べている。珍しいこともあるもんだと思っていたら、〈明日は肉がいい〉とブレないグレンだった。


 コテージでの夕食を終えた私達はお城の部屋に戻ってリバーシ。やいのやいのと盛り上がっている。みんな本当にリバーシ好きだねぇ。

(ん? ブラン団長とトリ……じゃなくてジルベルト君?)

 ほど近い場所に二人の気配を察知。二人は私がいるこの部屋に向かってきているらしい。みんなに伝えてリバーシを中断し、テーブルの上を片付ける。
 素早いノック音と共に「……セナ、ブランだ。急ぎなんだが、今いいか?」と焦っているのか早口で告げられた。「はーい」とドアを開けた途端、ブラン団長とジルベルト君が滑り込むように部屋へ入室。そのことに驚いている間に、ジルベルト君はドア前で土下座状態に。流れるような動作だった。

「えっと……ジルベルト君、だよね?」

 フードを目深に被っているせいで表情が窺い知れないジルベルト君に確認すると、ハッとしてフードを外し、再び頭を下げた。

「大変失礼いたしました。はい、セナ様に名付けていただいたジルベルトです。セナ様……僕なんかのためにありがとうございます」

 えっと……どういうこと? とブラン団長に視線を向ける。視線を受けたブラン団長は困ったように眉尻を下げた。

「……すまない。ト……いや。ジルベルトがどうしてもセナに会って話がしたいと言うから、フードで顔を隠して連れてきた」
「そっか。ブラン団長ありがとう。とりあえず座ろうよ」

 なるほど。周りの目があるもんね。老害一族は捕まっているハズだから、「なんでコイツだけ出歩いている!」なんて文句を言われる可能性が高いワケだ。
 私の言葉でブラン団長はソファに移動してくれたけど、ジルベルト君は土下座をしたまま、その場から動かない。見かねたグレンが首の後ろ側を掴んで持ち上げ、強引にブラン団長の隣に座らせた。
 首根っこって……扱いが猫ちゃんじゃん。
 とりあえずどうぞ~と、ラスクと果実水をテーブルに載せておく。

「それで、ジルベルト君はどうしたの?」
〈セナに文句でも言いに来たのか?〉

 威圧はしないものの、警戒心をあらわにグレンがジルベルト君に問いかける。

「いえっ! とんでもありません。許される罪ではないと覚悟していたので、本当にいいのかと思う気持ちもありますが……その…………あの……」

 ジルベルト君はだんだんと小声になり、言いづらそうにモジモジし始めてしまった。

「ん? なーに?」
〈ハッキリ言え〉
「えっと……あのっ! 僕を連れていってくださいませんか!?」
「〈「は?」〉」

 予想外のセリフに私とグレンとブラン団長の気の抜けた声が揃った。

「僕を救ってくださった、女神様の化身であらせられるセナ様のお役に立ちたいのです」
「いやいや。私は女神様じゃないよ。イチ平民の一般ピーポーだよ」
「ダメでしょうか?」

 ショボーンと効果音が付きそうなほど肩を落とし、窺うようにこちらを見てくるジルベルト君。そんな彼にグレンが呆れ顔でため息をついた。

〈ハァ……大体セナの方が強いだろう〉
(グレンさん、まずは女神の化身について否定してくれ……)
「はい。それは重々理解しています。僕も強くなってセナ様の盾くらいにはなれるように粉骨砕身努力していく所存です。以前、セナ様に自由になったら何がしたいかと聞かれた際、セナ様と一緒に旅がしたいと思ったのです。あのときは叶うはずがないと諦めていたのですが……生きることを許され、自由の身となれるのならば、セナ様と共に生きていきたい。……いえ。セナ様にお仕えしたいのです」
(こ、これは……雲行きが怪しいぞ。想定外だわ……)
〈構わず置いていけばいい〉
(それもどうだろう……)
「セナ様が僕なんかとは一緒にいたくないとのことでしたら、セナ様方から離れ、後ろから見守りながら付いていきたいと思います」
「いやいや! それ完全にストーカーだから!」

 ずっと心の中でツッコんでたけど、ジルベルト君の発言が衝撃的すぎて思わず叫んでしまった。
 無表情なのに捨てられた子犬のような雰囲気をかもし出すジルベルト君にどうしようかと考える。
 この子、こんなキャラだったっけ? 後ろを付いてこられても困る。後ろにいるとなれば気になってしょうがない。本業の冒険者もパーティ組んでることが多いのに、一人ってキツくない?

「私が寝てる夜中に、ジルベルト君とポラルが守ってくれてたのは知ってるけど……」
『気付いてたの?』
「うん。気配が騒がしかったからね。危なそうだったら助けに行こうかと思ってたけど、ポラルは遊んでるみたいだったし、相手の人数も少なかったし、すぐに終わったから大丈夫かなって。数日で刺客っぽいのは来なくなったしね」
〈セナが助けたんだ、どうするかはセナが決めろ〉
「私はジルベルト君が希望する街で暮らしていくためにいろいろ準備してあげるつもりだったんだよ。……うーん……知らないうちにケガされるのも心配だから……わかった。いいよ」
「あっ、ありがとうございますっ!」
「でも! 条件があるの!」

 先ほどの無表情から一転、瞳を輝かせたジルベルト君に待ったをかける。

「条件、でございますか?」
「うん。無理そうだと思ったら一緒にはいられない。危険だと判断したら街に残ってもらう。グレンやクラオル達、私の大事な家族も危なくなっちゃうからね。それでもよければになるよ」
「チャンス、ということですね」
「えっと……まぁ、そうかな?」
「かしこまりました。ありがとうございます。セナ様に誠心誠意尽くしたいと思います」
「いや、尽くさなくて大丈夫だから。ジルベルト君の安全第一にして」
「セナ様はやはりお優しいですね。僕のような者の安全を考えてくださるとは。さすが女神様。セナ様をお守りできるよう、精進いたします」
「私、女神じゃないんだけど……」

 女神の化身から女神そのものになってるし……
 侵入しようとした人から守っていてくれたから、多少は戦えると思うものの、街から出たあとは身体強化で走る予定である。カリダの街で私が身体強化した走りに諜報員が付いてこられなかったことを考えると、私達のスピードに合わせることは難しいだろうなぁ……馬車を買うべき? でも早々にお別れになる可能性もあるんだよね。どうしようかな……

「……つまり、ト……いや、ジルベルトはセナに付いていくということでいいのか?」

 成り行きを見守っていたブラン団長に確認された。ブラン団長、名前変わったのに慣れないんだな。私も間違えそうになるから気を付けないと。

「うん。そういうことになったみたい」
(まさか自己満足のために助けた結果こんな展開になるとは……責任って大事ね。これから気を付けないと。国王に「足元すくわれる」なんて偉そうに言ったけど、人のこと言えないわ)
「……わかった。陛下には俺から伝えておこう。セナはいいのか?」
「ごめんね。お願いします。自分の行動に責任持たなきゃいけないからね。予想外ではあるけど」
「……セナがいいならいいが…………ところでセナ。寝ている間に守ってもらった、ということは別の刺客が来ていたということだな?」

 ブラン団長は一見、笑みを浮かべているものの、目が笑っていない。これは……確実に怒っていらっしゃる! 笑顔の圧が……!

「えっと……うん。でも犯人わかってるよ?」
「……ハァ。そういう問題じゃない。国賓であるセナが城内で狙われること自体が問題なんだ。この件も俺から報告しておく。ちなみに誰だ?」
「デビト・ワーレス一派に雇われた人だよ」
「またデビト・ワーレスか……他には何かないか?」
「他に何か? ……特にないかな?」
「……本当に何もないんだな?」

 めっちゃ怪しまれてる! とある人物が夜中に近付いてきていたけど、途中で引き返していったし、これは言わないほうがいいと思うんだよね。

「特にないんじゃないかな? 私自身は絡まれてない……っていうか、他の人と接触すらしていないよ。あっちはまだ調べてるけど」
「……そうか。俺達もあっちの件は調べている途中だ。今のところセナの推理通りになっている。あと二、三日もあれば全て調べ終わるだろう」
「おぉ、ありがとう」
「……そうだ、大事なことを伝えていなかった。謁見は明後日あさってという話だったが、二日ほど延びそうなんだ」
「あれ? そうなの? あらぬ噂を流される~とか言ってなかったっけ?」
「……あぁ。そうなんだが、取り調べで立て続けにトラブルが起きた。悪いが四日後の予定をけておいてほしい。大丈夫か?」
「四日後に謁見ってことね。大丈夫だよ」
「……ありがとう。よろしく頼む。さて、もう遅い。俺達は戻ろう。それにジルベルトには話があるからな」
われも話がある〉

 立ち上がったブラン団長に続いてグレンまで立ち上がった。二人はアイコンタクトを取り、頷いている。よくわからない私の頭には〝?〟しか浮かばない。

〈先に寝ていろ〉

 私の頭を撫でたグレンがブラン団長達と出ていくのを「おやすみなさい」と見送ることになった。

「うーん、グレンどうしたんだろ?」
『放っておいて大丈夫よ。お話ししてくるだけだわ。主様は心配しなくて大丈夫よ』
「大丈夫ならいいけど」
『もう遅いから寝ちゃいましょ』

 ほっぺにスリスリと身を寄せたクラオルに促され、私はベッドに入った。



   第二話 開かずの間と妖精


 クラオルに起こされるまで、夢も見ずに爆睡。いや、爆睡というか寝落ちたというか……

「うーん? またパパ達かな?」
『何が?』

 ベッドに腰掛け、以前疲れているからとパパ達に深い眠りにつかされたことを思い出して呟いた私にクラオルが首を傾げた。

「ううん、なんでもない。グレンは……戻ってきてないみたいだね」
『そうね。今日戻ってくるのかしら?』
「え、そんなに長引くような話なの? 普通の話じゃないの?」
『主様が心配するようなイジメとか、詰問とかじゃないから安心してちょうだい』
「本当?」
『本当よ』
「クラオルが言うなら信じるけど……ご飯どうするんだろう?」

 本人に聞いてみようと、グレンに念話を飛ばす。

「((グレンさ~ん。おはよう。朝ご飯どうするー??))」
〈((もうそんな時間か。われの分は大丈夫だ。昼には戻る))〉
「((無理しないでね?))」
〈((うむ、任せろ!))〉

 なんかテンション高くない? そんな楽しい話なん? 寝てないから変なハイテンションになってるのかね?
 首を傾げていると、肩に登ってきたクラオルに頬をチョンチョンとつつかれた。

『どうしたの? 何かあった?』
「いや。なんか〝任せろ!〟ってテンション高く言ってたんだけど、よくわからないし、なんでそんなにテンション高いのかなって」
『寝てなくておかしくなったんじゃない?』
「やっぱそう思う? 戻ってきたらちゃんと休ませよう。とりあえずお昼まで戻ってこないみたいだから、朝ご飯食べちゃおうか」

 ベッドから下りて日課を済ませる。今日もプルトンが髪の毛をセットしてくれた。パーティーの日に言っていた通り、本当に毎日セットしてくれるみたい。今日はポニーテールでございます。ズボラな私にはとてもありがたい。
 ダイニングに移動し、朝ご飯。グレンがいないなら作らなくてもいいかと、カリダの街で生活していたときのお弁当の残りで済ませちゃった。
 朝食後はウェヌスを介して精霊の子達からの報告を受ける。問題の人物達はまだ動き出さないみたい。騎士団が魔法省と老害の家に調べに入ったことで混乱しているらしい。王都に住む貴族全体が事実確認で慌ただしくしているっぽい。

「やっぱ、動きがあるのは謁見で発表されてからかな?」
『聞いている限りだと、その可能性が高そうよね。で、今日はどうするの?』
「この混乱具合だと数日はこのままだろうからなぁ……どうしよっか? 何かしたいことある?」

 取っていたメモから顔を上げ、果実水に口を付けつつ考えてみても、特に思い付かない。

『さっき思い出したんだけど、あの廃教会の一番上の鍵のかかった部屋って結局開けてないわよね? 調べなくていいの?』
「あ……そういえばそうだね。忘れてたや」
《何それ?》

 そっか。プルトンもエルミスも廃教会については知っているけど、修理が終わった後に契約したから中のことは知らないのか。
 前に教会全体の修理をした際、鍵がかかって開けられなかった部屋があったのだと説明すると、《面白そう!》とのこと。
 クラオルに『あの教会に行くならグレンも連れていくべきよ』と言われたので、グレンの帰りを待ってお昼ご飯。プルトンがソワソワしていたので、簡単なものってことでTKG卵かけご飯。それとお味噌汁だ。邪道かもしれないけど、私は卵かけご飯に厚削りのかつお節のカスを入れるのが好き。これはクラオルが気に入ったみたいで、いつもより食べていた。ちなみに、肉欲求が激しいグレンにだけは串焼きも出した。


 昼食を済ませた私達は呪淵じゅえんの森近くの廃教会にやってきた。グレンはやっぱり寝ていないらしいんだけど、大丈夫だからって押し切られたのだ。無理させないようにしないとね。ウェヌスはお仕事のために近くの聖泉から一度精霊の国に戻った。帰りに声をかける予定である。
 三階に上がり、問題の部屋を再確認したものの、やはり鍵がかかっていて開かなかった。

「修理のときも鍵は見当たらなかったんだよね。壊すしかないかな?」
《ほう……これは封印魔法がかけられておるな》
「封印魔法? それってよくないモノを封じ込めているってこと?」
《悪いモノとは限らん。欲深い者なんかは宝石などを自分の所有物としておきたいがために封印して、誰も近付けぬようにしておくヤツもいる》
《封印魔法がかけられているから私達も通り抜けられないけど、嫌な感じはしないわ》
《神による結界の中だし、ここはあるじの魔力が満ちていてあるじの支配下だ。仮に悪いモノでも何もできまい》
「え? 私の魔力? 結界石のおかげじゃなくて?」
あるじはこの教会を直すのに像だけではなく、全てに魔法を使ったのだろう?》
「うん。それってダメだったの?」
《いや。教会全体にあるじの魔力が染み込んでいて、わしらにはとても居心地がいい。結界石もそうだが、悪しき者はとてもじゃないが近付けぬだろうな。解除するか?》
「解除できるの?」
あるじの魔力を借りられれば可能だ。わしらを手の平の上に乗せてくれ》

 エルミスに言われた通り、手の平を上にして両手を出す。それを確認した二人はふわりと手に舞い下りた。二人が何やらブツブツと呟き始めると、ドアに魔法陣が浮かび上がった。


「おぉ~! ファンタジー!!」

 普通に魔法が使える時点で充分ファンタジーなんだけど、イメージのみで使ってるから、光る魔法陣なんて見るとすごく実感する。
 魔法陣の光の強さが増していき、パリンッと音がしたと同時に、魔法陣が砕け散った。

《もう開くと思うぞ》
「おぉ、動いた。開けるよ?」

 ドアノブが動くことを確認した私の声にみんなが身構える。ゆっくり開いていくと……ものが乱雑に置かれた小部屋だった。倉庫かな? ホコリが溜まっていて汚い。

「んん? 構えてたわりには特に何もなくない?」
《こっちで倒れてるわよー》


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