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1話

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 敵性宇宙生命体による地球侵攻……

そんなのは荒唐無稽なバカ話でしかなかった、という時代があったということは今では聞き慣れた一般常識だ。
それがあたしが婚約破棄されてどうにもならないと思っている間にこの世界は動いていたようだ。
 
とはいえ、当時の人々が牛や山羊のような形をした宇宙人にどんな印象を抱いてそれらと死闘を繰り広げる映画や大衆小説をなぜ量産していたのか、まじめに考えたことがあるものはほとんどいないだろう。
 
大昔の人は本当に頭がおかしかったんだな、くらいの認識だったであろうか?
 
もっとも、その生命体に地球を占領されてから五十年も経って生まれてきた僕らの世代からしたらそれが当然なのだろうけれど……
 
そもそも宇宙生命体なんて言い方は今となっては差別的だから良くないらしい、時代にそぐわない不適切な表現ということになるらしい。
 学校の先生たちは、地球外生命体と呼びなさい! といつも口を酸っぱくしてのたまっているのである。
 宇宙生命体と地球外生命体とでなにが違うのかはぶっちゃけよくわからない、しいて言うのなら私達地球人も宇宙生命体に含まれるということか。
 ちなみにその地球外惑星人は一本の毛も生えていないのっぺりとしたクマのような顔をしている。
 不気味といえば不気味だし、かわいいといえばかわいいという微妙な風貌だ。大昔にはその複雑な見た目がウケて、多くの関連グッズやテレビアニメが作られたらしいが、とうの昔に飽きられてブームは去ってしまっていた。
 
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