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3話

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 侵略者に対して抵抗を始めた人類のリーダークルーとして、もしくは自分を犠牲にして地球を守り抜いた英雄として。
 私が生まれるはるか以前のネット民たちは、口々にその名を褒め称えている。
 方や悪名高い戦争犯罪者、かたや人類を救うために戦ったヒーロー。完全に正反対の見方があることに、初めてこの掲示板を見つけた頃の僕は、ひどく驚かされたものだった。
 坂之上和彦の武勇伝を長々と書き連ねる文章に僕はざっと目を通すとマウスを操作してコピーアンドペーストする。
 この書き込みは読み応えもあって、なかなか喜ばれそうだ。ソースのほとんどが現在リンク切れになっているのは残念だが当然と言える。
 そのとき、あるものが目に入って思わず僕は吹き出してしまった。
 それは、地球外生命体と坂谷和彦かと思われる姿を描いたアスキーアート(AA)というやつだ。
 文字と記号を駆使して描かれているクマ型宇宙人には「ワレワレハ、宇宙生命体だクマー」と吹き出しがついている。
そのすぐ脇にはロールプレイングゲームの勇者のドット絵のようなものが並んでいて、矢印でスネヒコという簡潔な説明。
 婚約破棄されたあたしは無我夢中のまま手にした銃を振りかざし、漫然とクマ型宇宙生命体と向かいあっていたのだ……。

戦いが始まるのである!!
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