指輪に導かれて

12

 まだ、ガイの鞍に乗るためのハシゴを登っているマークは唖然と叫んでしまった。優はアレク様の様に、ぴょんと鞍に飛び乗ってしまったのだ。しかも、小さな女の子がだ。

「優、どうやったらそんな風に乗れたの？」

 マークは目を丸くしながら優に聞く。

「アレク様をイメージして、ぴょんと飛んでみたら鞍に座ってた」

 いやいや、私自身びっくりですよ。と思っていると、紅が羽をふわりと動かす。すると

「うわっ！？紅、飛ぶの？飛んじゃうの？まだダメだよっ！？」

 と言ってるにもかかわらず、上昇しはじめる。

「今日は、乗るのと降りる練習だけだって、マークが言ってたでしょ！？」

 紅に話しかけるが、優を乗せてご機嫌で羽ばたく。慌ててマークも付いて来るが、紅には追いついて来れないようで、差は開くばかりだ。

「ちょっと紅っ！何処行くの？まだお仕事中だよ。帰るよっ！」

 厳し目の口調で言っても紅は聞いてくれない。あ～、コレがマークの言ってた洗礼？いつ帰れるのかなぁ～。

 1時間程、紅は自由に飛び回り、やっと厩舎のある地上に降りるとき、アレク様が銀に乗る所だった。

「優っ！無事だったか？マークが血相を変えて『紅が暴走した』って言うから、探しに行く所だったんだ」

 周りを見ると、他のグリフィン騎士達も集合している。

「すみません。鞍に座ったらいきなり飛び回りはじめて。びっくりしましたけど、銀みたいにちゃんと飛んでくれましたよ？」

「ああ、下から見てたけど、安定してた。紅は楽しそうに飛んでるみたいだったな。ま、これなら今日から紅に乗って帰って大丈夫だろう」

 とアレク様は言ってくれるけど。一緒に銀に乗るのも好きなんだけどな・・・、と内心思ってしまう。だって、アレク様に後ろから抱きしめられるような感じなんだよ？もうそれをしてもらえないかと思うと残念っ。

 そんな優の内心を知らない紅はアレク様の言葉を聞いてご機嫌な顔をして、手乗りグリフィンになるのだった。