指輪に導かれて

ゆきりん(安室 雪)

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 翌朝目を覚ました優は、切なくなった。

 アレク様がいない・・・。

 ここ数日毎朝、アレク様の腕の中で起きていたのに。アレク様がベッドで寝た痕跡は無い。何故?

 騎士服に着替えダイニングに向かう。

 エマにアレク様は昨晩帰らなかった様だと聞く。年に何度かはあるらしい。その時、式が飛んでくる。

『優、連絡が遅くなって済まない。暫くは城から戻る事が出来ない。優はいつも通りの生活をしてくれ。夜も自分の部屋で寝てくれて構わない』

 淋しそうにアレク様は微笑み消える。ペラリと紙が落ちる音が大きく聞こえる。




 優は1人で登城する。1人で行くのは初めてだ。いつもアレク様と一緒だった。

 アレク様・・・。

 1日会えないだけで、心にポッカリと穴が空いたみたいだ。でも、お城に行けば会える。優は騎士塔の前に紅を降ろす。中に入ろうとするがいつもはいない兵士に止められる。むむっ、聞いてないし。アレク様に式を飛ばす。

『アレク様、騎士等に入れません』

 すぐに返事が来る。

『1日魔導師塔で過ごしてくれ』

 ペラリと落ちた紙は優がアレク様に送ったものだ。という事は式に口頭で返事をしたという事だ。余程大変なのだろう。会えないのは残念だが魔導師塔に向かう。

 魔導師塔のライ様の部屋に着くが、明らかに寝ていない様子のライ様が書物を漁っている。

「ライ様、おはようございます」

「あ?ああ、優。もう朝か?」

「あの~、何があったんですか?アレク様も昨日戻られなかったんですけど」

「ああ。最近、隣国の動きが怪しくてね。原因は極端な日照りで作物がここ1年作れてないらしい。そのせいで豊かな国に攻め入って掠奪行為や戦争を起こしている様なんだ。我が国の国境も何度か攻められてはいるが、何とか保っているが。ソレも危なくなってきている」

 はぁ。とライ様はため息と欠伸をする。

「まずは作物さえ育てば落ち着く可能性はあると思うんだ。だから日照りでも育つ穀物とか食べ物を探しているんだが」

 むむ~んと、ライ様は唸る。

「じゃあ、私を派遣して下さい」

「はぁ!?」

「私が一斉に種を蒔き、雨を降らせます」

「いやいや、優?日照りの場所は広いよ?山一つとかじゃないんだよ?国がとりあえず2つ丸々だよ?」

 いくら優でも無理だよ~。とライ様は聞いてくれないが・・・。

「ライ様、実はお話ししてない事があります」

「ん?」

「魔力があり得ない位、高まりました」

「は?」

「馬の葉事件も、いつもの力のつもりだったんです。ライ様、とりあえず畑を見て下さい」

 優が指差す先には、いつも世話をする畑がある。優はそこに向け、右手をかざす。ふわりと右手が光り、畑には七色に光る雨が降る。すると、今日は何も植わっていなかった畑から芽が出る。するとあっと言う間に育ちながら株分けし、どんどん面積を広げていく。

 植物は以前育てたもののタネが落ちてきたのか、見たことのある植物だらけだ。

「これは・・・?」

「七色の雨を降らせると、どうやら勝手に植物が繁殖していってしまうみたいなんです。これなら隣国に七色の雨を降らせれば、作物も何とかなると思うんです。最初頑張れば後は少量の雨でも大丈夫かなと。それに、もし種を蒔いておいてくれれば、作りたい作物を育てる事も可能です。隣国に七色の雨を降らせるから種を蒔いてと伝える手段はないですか?」

「外交問題が絡むからなぁ、信用してもらえるかも問題だし」

 ライ様は難しい顔をする。





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