全てを奪われてしまいそうなので、ざまぁします!!

ゆきりん(安室 雪)

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 「はあ、いいんじゃないですか?ガイ様、少し年上ですけど包容力のあるイケオジだし。何だかんだでジュディーを構いに帰って来るよになったし?前まで全然帰って来なかったのに」

 「うっ。でも、う~ん」

 「まだお見合いの返送してる最中だし、どっちの答えを出すにしても最後でいいんじゃない?今のペースだと後2週間はかかりそうだし。ゆっくり考えてみたら?」

 ミヤはなだめるように言う。

 「そうだね、ゆっくり考える。でも、また相談に乗ってね?」

 「乗るけど、答えを出すのはジュディーだからね?」




 元義母問題が解決してもガイは週に1日はやってきた。休みだと言う今日は朝からやって来た。

 「手紙ばっかり書いていて疲れるだろ?遠乗りに行かないか?」

 「遠乗りって、馬?私は馬に乗れないわ」
 
 「大丈夫、乗せてやるぞ?今の時期は山も色付いて来て、食べ物も美味いぞ?」

 「行きたいっ」



 ガイの馬に乗せてもらい颯爽と山道を走る。

 「うわぁ、緑・黄・赤、木ってこんなに色付くのね?知らなかった。ガイ、連れてきてくれてありがと」

 「たまにはな。街で買い物も考えたが、たまには自然を楽しむのもいいだろ?」

 「ええ」

 ガイは街に行くと好奇な目で見られるのを心配して、人の目が無い遠乗りを選んでくれたのだろう。ミヤがメイド仲間に聞いた話しによると、貴族達からその家のメイド、メイドから街の者へとマクラーレン家の殺害事件が噂話しが広められているらしい。

 「いつも優しくしてくれて、ありがとう」

 ガイの前に横坐りで馬に乗っているので、少し見上げればガイと目が合う。

 「何だ?突然」

 「何でもないっ」

 騎士団にいるガイは馬の扱いに慣れており、馬は暴れる事無くジュディーを乗せてくれる。ガイのそばはジュディーにとって、安心する場所だ。

 もし、ガイと結婚したらずっとこの安心感が続くのだろうか?

 「ホラ、ジュディー。ここで休憩だ」

 山小屋みたいなのがいくつか建っている。視線を周りに向けると少し先に街みたいなのもあるようだ。

 「ここは?きのこ料理と美味いスィーツを出す店だ」

 「えっ、お店?」

 「まあ、店は趣味みたいなモノで完全予約制だけどな。入るぞ?」

 建物を繁々と見ていたジュディーはガイに促されて中に入る。

 「ガイ様、お久しぶりです。えっ、ミレーヌ様っ!?」

 店主は驚いた声を上げた。

 「いや、ミレーヌの娘のジュディーだ」

 「そっくりでびっくりしました。さっ、ガイ様、ジュディー様、用意は出来ております」

 2人は案内された席に座る。すぐに暖かいスープが出され食事が始まる。野菜スープやきのこの肉ソテー、きのこサラダ等が出た後、この店のメインがやって来た。

 何も説明が無く、目の前に大きな丸いパイが載ったお皿が置かれる。

 「パイ?」

 「ああ、ナイフでざっくり真ん中から切ってみて」

 ガイに言われ、パイを真っ二つに切る。

 「うわぁ!!りんごっ!!アップルパイ!!変わった形だわ。んんっ、美味しいっ!!」

 りんごの芯は取ってあるが、丸ごとりんごは一旦煮てあり、甘酸っぱい。周りの薄いパイはサクサクだ。

 「ミレーヌもこのアップルパイは好きだったんだ。ここの店主は元々うちの領内でケーキ屋をしていてね。実家のきのことりんご農家を継いで引退したんだよ。でも、アップルパイが忘れられない領民が多くてね。秋から雪が降る前までは予約すれば食べさせてもらえるんだ」

 「まあ、お母様も。でもこのアップルパイならみんな好きになるわ」

 「ああ。帰りに10個土産を頼んであるからな。パイにりんごの味が染みても美味いんだ。明日食べるのも楽しみだ」

 「うふふっ、私も今から楽しみです」

 

 

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