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空は晴れ渡り、空気は澄んでいるまだ早朝の時間から、家中の窓を開け放ち黙々と掃除をする2人がいる。
「全体的にはザッと箒で埃をはいてくれていたみたいね」
前に見に来た時よりも埃っぽくはない
「そうだな。でも、再度掃き掃除をしてから水拭きしよう」
セイラがはき、デュークがその後から拭き掃除をする。お昼前には2階の掃除が終わり、一旦はお昼をとりに宿に戻る。
「セイラ、温泉で汗を流して来たら?」
「そうね、埃っぽい状態では食事をしたくないわね」
セイラが部屋の温泉に入っている間に、デュークは宿の共同温泉に入りに行った。
ウサギとタヌキも温泉に入りたいと言ったので2体の精霊を木の桶に入れ湯船に浸かる。すると、目を覚ましたミケも寝ぼけ眼でフワフワと宙をふらつきながら木の桶に入ってきた。
「あら、ミケ。おはよう、お腹は空いてない?」
「空いてる・・・」
また、うとうととミケは微睡はじめた。
「ふふっ、お風呂から出たらミケにもミルクあげなきゃね」
ミケは溺れない様に、左右から腕組みをされて温泉に浸かりながら寝てしまった。
「ねえ、ミケの縁ってどんな力の?ウサギやタヌキの力は何となく理解出来てると思うんだけど」
「縁は縁じゃ。それ以上でも以下でも無い」
「う~ん、具体的には?」
「だから縁じゃ」
「・・・」
全く分からない。
昼食をとり、2人と3体は午後からも掃除に向かう。すると道端で車輪が溝にはまってしまった荷馬車が立ち往生していた。セイラとデュークは馬から降り、御者に声をかける。
「お手伝いしましょうか?」
セイラが声をかける。実際に手伝うのはデュークになってしまう気はするが・・・。
「ありがたいですが、どうやら馬が石を踏んだ挙句骨折したようで、もう使い物にはならないようで。急ぎの荷物もかなりダメになってしまって」
セイラが馬の状況を確認すると、確かに折れた骨が外に出ていた。そして荷台からはピヨピヨとヒナの声がした。
「コレは酷い・・・。馬は脚が命だからな」
騎士として、馬に接する機会が多いデュークですら諦め顔だ。
「いいえ、生きているなら大丈夫だわ」
セイラは蹲っている馬の横にしゃがみ、両手を馬の患部に翳す。
すると、ふわりと優しい色の光が患部を包み込んだ。
その光景をデュークと御者は息を呑んで見つめていた。2人が我に返った時には馬は立ち上がり、まるでセイラに感謝する様に頬ずりしていた。
「な・何とっ!貴方は聖女様ですかっ!?」
御者は裏返った声で馬とセイラを何度も見た。
「え、いえ。聖女見習いを途中で辞めて今は一般人の無職です」
言いながらセイラは荷台のヒヨコにも手を翳し、ストレスで弱ってしまったモノ達を回復させた。
「すごい数のヒヨコね。羨ましいわ」
思わずボソッとセイラは呟いてしまった。
「え?」
セイラの声が耳に入った御者は聞き返した。
「いや、彼女はこれから卵を扱った飲食店を開く予定なんですよ。近々養鶏場に行く予定で」
「ああっ!!もしかして貴方はデュークさんっすか!?私はデルモンテ養鶏場のオーナー・デルモンテです。先日お話をいただいた際には出荷に出てまして。妻から話しは聞いてます。いやいや、偶然なご縁ですな。今日は時間がおしてますので、後日お礼に伺います!!」
深々と頭を下げたデルモンテさんは元気になった馬と共に去って行った。
顔を見合わせるセイラとデュークに、
『コレがミケの縁の力じゃ』
ウサギの言葉が頭に響いて来た。
「全体的にはザッと箒で埃をはいてくれていたみたいね」
前に見に来た時よりも埃っぽくはない
「そうだな。でも、再度掃き掃除をしてから水拭きしよう」
セイラがはき、デュークがその後から拭き掃除をする。お昼前には2階の掃除が終わり、一旦はお昼をとりに宿に戻る。
「セイラ、温泉で汗を流して来たら?」
「そうね、埃っぽい状態では食事をしたくないわね」
セイラが部屋の温泉に入っている間に、デュークは宿の共同温泉に入りに行った。
ウサギとタヌキも温泉に入りたいと言ったので2体の精霊を木の桶に入れ湯船に浸かる。すると、目を覚ましたミケも寝ぼけ眼でフワフワと宙をふらつきながら木の桶に入ってきた。
「あら、ミケ。おはよう、お腹は空いてない?」
「空いてる・・・」
また、うとうととミケは微睡はじめた。
「ふふっ、お風呂から出たらミケにもミルクあげなきゃね」
ミケは溺れない様に、左右から腕組みをされて温泉に浸かりながら寝てしまった。
「ねえ、ミケの縁ってどんな力の?ウサギやタヌキの力は何となく理解出来てると思うんだけど」
「縁は縁じゃ。それ以上でも以下でも無い」
「う~ん、具体的には?」
「だから縁じゃ」
「・・・」
全く分からない。
昼食をとり、2人と3体は午後からも掃除に向かう。すると道端で車輪が溝にはまってしまった荷馬車が立ち往生していた。セイラとデュークは馬から降り、御者に声をかける。
「お手伝いしましょうか?」
セイラが声をかける。実際に手伝うのはデュークになってしまう気はするが・・・。
「ありがたいですが、どうやら馬が石を踏んだ挙句骨折したようで、もう使い物にはならないようで。急ぎの荷物もかなりダメになってしまって」
セイラが馬の状況を確認すると、確かに折れた骨が外に出ていた。そして荷台からはピヨピヨとヒナの声がした。
「コレは酷い・・・。馬は脚が命だからな」
騎士として、馬に接する機会が多いデュークですら諦め顔だ。
「いいえ、生きているなら大丈夫だわ」
セイラは蹲っている馬の横にしゃがみ、両手を馬の患部に翳す。
すると、ふわりと優しい色の光が患部を包み込んだ。
その光景をデュークと御者は息を呑んで見つめていた。2人が我に返った時には馬は立ち上がり、まるでセイラに感謝する様に頬ずりしていた。
「な・何とっ!貴方は聖女様ですかっ!?」
御者は裏返った声で馬とセイラを何度も見た。
「え、いえ。聖女見習いを途中で辞めて今は一般人の無職です」
言いながらセイラは荷台のヒヨコにも手を翳し、ストレスで弱ってしまったモノ達を回復させた。
「すごい数のヒヨコね。羨ましいわ」
思わずボソッとセイラは呟いてしまった。
「え?」
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「いや、彼女はこれから卵を扱った飲食店を開く予定なんですよ。近々養鶏場に行く予定で」
「ああっ!!もしかして貴方はデュークさんっすか!?私はデルモンテ養鶏場のオーナー・デルモンテです。先日お話をいただいた際には出荷に出てまして。妻から話しは聞いてます。いやいや、偶然なご縁ですな。今日は時間がおしてますので、後日お礼に伺います!!」
深々と頭を下げたデルモンテさんは元気になった馬と共に去って行った。
顔を見合わせるセイラとデュークに、
『コレがミケの縁の力じゃ』
ウサギの言葉が頭に響いて来た。
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