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第一章[モモと創介]モモSide
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ーカタカタカタ…パチ。カチャカチャ…バチ。カタカタ…。ー
窓の外の雨粒を見つめながら、思い出に浸っていると、新たに加わってきた音によって意識を引き戻された。
四角い小さなチョコレートがたくさん並べられた上を、創介の、しなやかで長い指先が器用に踊り、独特なメロディーを奏でている。
この音…。私は“好きな時”と“嫌いな時”がある。
短い時間で済む時は、その奏でや指先を眺めているのが楽しいけれど…あまり長い時間だと、早く創介を解放してほしいと想ってしまうから。
小さな鏡に向かって真剣な表情を向けている創介。その鏡には、たくさんの小さな文字が整列したり、絵が映し出されたりすることもある。不思議な鏡。
今日は…どのくらいの時間、創介の視線を釘付けにしちゃうのかな…。
私は不安に思いながらも、静かに見守ることにした。
シトシト雨はザーザーに変わり、少し肌寒く感じる。
窓辺からソファーに移り、お気に入りのブランケットに身を包む。
ーカタカタカタ…。ザーザーザー。タンッ。カチャ。カチッ。ー
雨のメロディーと、創介が奏でるメロディーの共演。騒音とは程遠く、穏やかで心地よい、柔らかく澄んだ軽やかなハーモニー。
どれくらいの時間が経ったんだろう…。
(そろそろ構って欲しい。)
せっかく今日は、どこにも行かず、このまま一緒に過ごせるのかなと想ってたのに。
昨日は、朝から前に暮らしていたお家へお散歩しながら向かって、夜まで皆で過ごした。
家族全員で過ごす時間も楽しいけれど、私は創介と二人きりで過ごせる今のこの生活が愛おしいと感じている。
一人きりでお留守番をしなきゃいけない日のが多いけど…それに引き換え、創介を独り占めできる特権がある。
普段我慢しているからこそ、お家で過ごせる日くらい、思いっきり甘えさせてほしい…。
そっと近づいて様子を窺う。
「んっ…モモ…どうしたの?」
鏡から目を離すことなく創介が不思議そうに問う。
(“どうしたの?”って……。こんなに放っておいて…その態度…。)
少しむくれた気持ちになってしまう。
「いい子にして待っててね…。」
私の事を見もせずに言い放たれた一言。
(なっ…。“いい子にして待っててね”って?私…今まで…いい子にして待ってたのに。)
ふてくされそうになりつつ、おとなしく構ってもらえるようになるまで待つ。
創介が「もうちょっと待っててね」と、今度は片手を止め、頭を優しくひと撫でしてくれたから、私はなんとか“もうちょっと”の我慢を選ぶことができた。
集中してる表情も。真剣なまなざしも。
普段、私に向けてくれる優しく甘い瞳の色と違って、それはそれで“かっこいい”。
(しばらくそばで見つめて居よう。この時間も、一緒に居られない時と比べれば、幸せなことに変わりはないんだから。)
私は半ば自分の“今すぐ甘えて抱きついてしまいたい”という衝動に、あれこれ理由をつけて言い聞かせた。
我慢できたらできた分、あとの喜びも倍になる。
(あとでその分、たっぷり可愛がってもらえばいい。いい子にしていたら、その分ご褒美がもらえるはず。)
まるで、聞き分けのない子をあやしつけるかのように心の中で唱えてみた。
窓の外の雨粒を見つめながら、思い出に浸っていると、新たに加わってきた音によって意識を引き戻された。
四角い小さなチョコレートがたくさん並べられた上を、創介の、しなやかで長い指先が器用に踊り、独特なメロディーを奏でている。
この音…。私は“好きな時”と“嫌いな時”がある。
短い時間で済む時は、その奏でや指先を眺めているのが楽しいけれど…あまり長い時間だと、早く創介を解放してほしいと想ってしまうから。
小さな鏡に向かって真剣な表情を向けている創介。その鏡には、たくさんの小さな文字が整列したり、絵が映し出されたりすることもある。不思議な鏡。
今日は…どのくらいの時間、創介の視線を釘付けにしちゃうのかな…。
私は不安に思いながらも、静かに見守ることにした。
シトシト雨はザーザーに変わり、少し肌寒く感じる。
窓辺からソファーに移り、お気に入りのブランケットに身を包む。
ーカタカタカタ…。ザーザーザー。タンッ。カチャ。カチッ。ー
雨のメロディーと、創介が奏でるメロディーの共演。騒音とは程遠く、穏やかで心地よい、柔らかく澄んだ軽やかなハーモニー。
どれくらいの時間が経ったんだろう…。
(そろそろ構って欲しい。)
せっかく今日は、どこにも行かず、このまま一緒に過ごせるのかなと想ってたのに。
昨日は、朝から前に暮らしていたお家へお散歩しながら向かって、夜まで皆で過ごした。
家族全員で過ごす時間も楽しいけれど、私は創介と二人きりで過ごせる今のこの生活が愛おしいと感じている。
一人きりでお留守番をしなきゃいけない日のが多いけど…それに引き換え、創介を独り占めできる特権がある。
普段我慢しているからこそ、お家で過ごせる日くらい、思いっきり甘えさせてほしい…。
そっと近づいて様子を窺う。
「んっ…モモ…どうしたの?」
鏡から目を離すことなく創介が不思議そうに問う。
(“どうしたの?”って……。こんなに放っておいて…その態度…。)
少しむくれた気持ちになってしまう。
「いい子にして待っててね…。」
私の事を見もせずに言い放たれた一言。
(なっ…。“いい子にして待っててね”って?私…今まで…いい子にして待ってたのに。)
ふてくされそうになりつつ、おとなしく構ってもらえるようになるまで待つ。
創介が「もうちょっと待っててね」と、今度は片手を止め、頭を優しくひと撫でしてくれたから、私はなんとか“もうちょっと”の我慢を選ぶことができた。
集中してる表情も。真剣なまなざしも。
普段、私に向けてくれる優しく甘い瞳の色と違って、それはそれで“かっこいい”。
(しばらくそばで見つめて居よう。この時間も、一緒に居られない時と比べれば、幸せなことに変わりはないんだから。)
私は半ば自分の“今すぐ甘えて抱きついてしまいたい”という衝動に、あれこれ理由をつけて言い聞かせた。
我慢できたらできた分、あとの喜びも倍になる。
(あとでその分、たっぷり可愛がってもらえばいい。いい子にしていたら、その分ご褒美がもらえるはず。)
まるで、聞き分けのない子をあやしつけるかのように心の中で唱えてみた。
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