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「かんぱーい!」と五人の声が揃い、宴が始まった。
目の前に注がれたピンク色のチューハイなる飲み物に私は緊張した。結衣はパパさんと時々お酒を飲むと言っていたし、弘斗もなんどか友達とビールを飲んだことがあるといっていた。けれど、私と梨花と香奈子はちょっと舐めたことがある程度で、ちゃんと飲むのは初めてだった。なるべく甘そうでアルコール低めのものを選んだけれど、最初の一口で私は咳き込んで笑われた。香奈子は「あ、美味しーい!」と言って気に入ったみたいだったけれど、梨花は私と同じで少し苦手そうな顔をした。
「これ全部お前らが作ったのか!?」と弘斗はいつになく目を輝かせながら言った。
「うん、そうだよ!」
「どう? 私たちのこと、お嫁に欲しくなった?」と梨花は本気だか冗談だかわからない口調で言った。
「こんな料理食わされて、嫁にしない男なんていねーよ」と弘斗は唐揚げを頬張りながら言った。
「やっぱ男は胃袋よねー」と香奈子が言った。
「ねえねえ、弘斗は好きな子とかいないの?」梨花が聞いた。
「お前その質問何度目だ?」
「だってさあ!」
「それが女子ってもんよ」結衣が援護射撃した。
「俺はそう言うのいねえ。テニスしてるのが一番おもしれえから」
「それって私たち全否定されてるよね」
「ほんとほんと、ろくでもない男はいくらでも寄ってくるのに、いい男は全然見向きもしてくれない」
「ありがと」弘斗がお皿に盛ったちらし寿司を三口で食べ終え、言った。
「なにお礼言ってんのよ!」
「え、だっていま俺のこと褒めたんだろ?」
「なんか腹立つ! いま食べたちらし寿司返せ! 私が作ったんだぞ!」
結衣は酔うと絡んでくるのね。覚えとかなきゃ。
「めちゃめちゃうまかったよ」
「腹立つけど嬉しい! もっと食べる?」
「ありがと」そう言われて差し出されたお皿に、結衣がちらし寿司を山盛りにして弘斗に返すのを見てみんな爆笑した。
「じゃあさ、じゃあさ、弘斗はこの四人の中で、もし付き合うとしたら誰がいい?」梨花が聞いた。
「おっときたーーー!」結衣のテンションは最高潮だ。
「んーーー、そうだな、愛衣奈かな」弘斗があまりにもあっさりそう答えたので、私たちは一瞬沈黙した。
「え、今の告白?」
「弘斗って、やっぱり愛衣奈なの?」
「ちげーよ。お前らがもし四人の中ならって言うから選んだだけじゃん。それに愛衣奈は他に好きな奴いるよ」
「え、え、えーーー!!!」と三人が声をそろえた。
「だれだれだれ!?」
「愛衣奈、ほんと!?」
「誰よそれ!?」
「ちょ、ちょ、ちょっと弘斗、適当なこと言わないでよ!」私は動揺した。頭の中がパニクった。パパのこと言ってる? でも弘斗、そんなにパパのこと知らないよね? じゃあ適当? でも何よその見透かしたような目! でも私だってついこの間気づいたとこなのに。え、え、もしかして、弘斗は私より先に気付いてた? うーーーん、なんなのよ、もうっ!
そして目ざとい女子三人が、私のそんな動揺を見逃すわけもなく……、「あー、愛衣奈動揺してる!」
「私たちになんか隠してるでしょ!?」
「でも私、なんかそんな気してた!」
「うんうん、ぜったい愛衣奈、好きな人いるなって!」
「そうそう、愛衣奈時々輝いて見えるもん!」
「なによその理屈!」あーーー、このテーブルに一人も私の味方いない!
私は見事に弘斗にやられた気分だった。まんまと注意を私に逸らせ、自分はせっせと唐揚げを頬張っている。なによその普段はぜんっぜん見せないような嬉しそうな顔! もーうバラしてやる! 私のスカートめくってたこと! でもこのタイミングでそんな話題振っても違和感ハンパないじゃない!
あ、そうだ。いっそのこと、私も弘斗のこと好きとかなんと言ったらどうなるのかな? なんてなに馬鹿なこと考えてるんだ私!!!
「教えなさいよ、愛衣奈」香奈子が座った目で睨んでくる。
「そんなこと言われてもー! ほんとに誰もいないんだよう……」
「あっはは、まあいいんじゃねえの!」と弘斗は陽気に笑って言った。
「もうっ、敵か味方かどっちなのよ!」私は思わず弘斗に言った。
「俺は美味いメシ作ってくれる子の味方」
「なんなのよそれ!」私は涙目で言った。
「それってじゃあ、弘斗はこの四人全員好きってことよね」香奈子はまるで悪い魔女みたいな口調で言った。
「あとで四人で食べちゃうか?」結衣も同じ口調で言った。
「最高のデザートですな」香奈子は「いっひっひ」と笑って見せた。
「おいおい、何の相談だよ!」今度は弘斗が困る番だった。
ざまあみろ!
私はこっそり舌を出して笑ってやった。
目の前に注がれたピンク色のチューハイなる飲み物に私は緊張した。結衣はパパさんと時々お酒を飲むと言っていたし、弘斗もなんどか友達とビールを飲んだことがあるといっていた。けれど、私と梨花と香奈子はちょっと舐めたことがある程度で、ちゃんと飲むのは初めてだった。なるべく甘そうでアルコール低めのものを選んだけれど、最初の一口で私は咳き込んで笑われた。香奈子は「あ、美味しーい!」と言って気に入ったみたいだったけれど、梨花は私と同じで少し苦手そうな顔をした。
「これ全部お前らが作ったのか!?」と弘斗はいつになく目を輝かせながら言った。
「うん、そうだよ!」
「どう? 私たちのこと、お嫁に欲しくなった?」と梨花は本気だか冗談だかわからない口調で言った。
「こんな料理食わされて、嫁にしない男なんていねーよ」と弘斗は唐揚げを頬張りながら言った。
「やっぱ男は胃袋よねー」と香奈子が言った。
「ねえねえ、弘斗は好きな子とかいないの?」梨花が聞いた。
「お前その質問何度目だ?」
「だってさあ!」
「それが女子ってもんよ」結衣が援護射撃した。
「俺はそう言うのいねえ。テニスしてるのが一番おもしれえから」
「それって私たち全否定されてるよね」
「ほんとほんと、ろくでもない男はいくらでも寄ってくるのに、いい男は全然見向きもしてくれない」
「ありがと」弘斗がお皿に盛ったちらし寿司を三口で食べ終え、言った。
「なにお礼言ってんのよ!」
「え、だっていま俺のこと褒めたんだろ?」
「なんか腹立つ! いま食べたちらし寿司返せ! 私が作ったんだぞ!」
結衣は酔うと絡んでくるのね。覚えとかなきゃ。
「めちゃめちゃうまかったよ」
「腹立つけど嬉しい! もっと食べる?」
「ありがと」そう言われて差し出されたお皿に、結衣がちらし寿司を山盛りにして弘斗に返すのを見てみんな爆笑した。
「じゃあさ、じゃあさ、弘斗はこの四人の中で、もし付き合うとしたら誰がいい?」梨花が聞いた。
「おっときたーーー!」結衣のテンションは最高潮だ。
「んーーー、そうだな、愛衣奈かな」弘斗があまりにもあっさりそう答えたので、私たちは一瞬沈黙した。
「え、今の告白?」
「弘斗って、やっぱり愛衣奈なの?」
「ちげーよ。お前らがもし四人の中ならって言うから選んだだけじゃん。それに愛衣奈は他に好きな奴いるよ」
「え、え、えーーー!!!」と三人が声をそろえた。
「だれだれだれ!?」
「愛衣奈、ほんと!?」
「誰よそれ!?」
「ちょ、ちょ、ちょっと弘斗、適当なこと言わないでよ!」私は動揺した。頭の中がパニクった。パパのこと言ってる? でも弘斗、そんなにパパのこと知らないよね? じゃあ適当? でも何よその見透かしたような目! でも私だってついこの間気づいたとこなのに。え、え、もしかして、弘斗は私より先に気付いてた? うーーーん、なんなのよ、もうっ!
そして目ざとい女子三人が、私のそんな動揺を見逃すわけもなく……、「あー、愛衣奈動揺してる!」
「私たちになんか隠してるでしょ!?」
「でも私、なんかそんな気してた!」
「うんうん、ぜったい愛衣奈、好きな人いるなって!」
「そうそう、愛衣奈時々輝いて見えるもん!」
「なによその理屈!」あーーー、このテーブルに一人も私の味方いない!
私は見事に弘斗にやられた気分だった。まんまと注意を私に逸らせ、自分はせっせと唐揚げを頬張っている。なによその普段はぜんっぜん見せないような嬉しそうな顔! もーうバラしてやる! 私のスカートめくってたこと! でもこのタイミングでそんな話題振っても違和感ハンパないじゃない!
あ、そうだ。いっそのこと、私も弘斗のこと好きとかなんと言ったらどうなるのかな? なんてなに馬鹿なこと考えてるんだ私!!!
「教えなさいよ、愛衣奈」香奈子が座った目で睨んでくる。
「そんなこと言われてもー! ほんとに誰もいないんだよう……」
「あっはは、まあいいんじゃねえの!」と弘斗は陽気に笑って言った。
「もうっ、敵か味方かどっちなのよ!」私は思わず弘斗に言った。
「俺は美味いメシ作ってくれる子の味方」
「なんなのよそれ!」私は涙目で言った。
「それってじゃあ、弘斗はこの四人全員好きってことよね」香奈子はまるで悪い魔女みたいな口調で言った。
「あとで四人で食べちゃうか?」結衣も同じ口調で言った。
「最高のデザートですな」香奈子は「いっひっひ」と笑って見せた。
「おいおい、何の相談だよ!」今度は弘斗が困る番だった。
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