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届かない言葉。
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なにやら王宮の外が騒がしい。私はフェンシアを呼んだ。
「フェンシア?一体何があったの?」
「……」
「……どうしたの?」
フェンシアは、酷く怖い顔をしている。まさか、どこかの国が攻めてきたとか?あるいは大きな獣が付近に出没しただとか……。
「……騙していたんですね」
「……?」
「とぼけないでください!あなたは、レーン・セラピーニャです!」
「は、はぁ!?」
どうしてバレた!?まさか、ナンナが……。
いや、その可能性は無いはずだ。だってナンナは、魔女の呪いで、体が入れ替わっていることを伝えられないから。
きっと、私が肥えて、あの子が痩せたから、誰か適当な噂を流したのだろう。こういときは、冷静に振る舞えばいい。
「落ち着きなさいフェンシア。何かの間違いよ」
「……聖女様の指輪を付けたことで、魔女の呪いが解けたのです」
……嘘だ。
私がはめれなかった、あの指輪?
嘘、嘘でしょ?そんなこと……。
「フェ、フェンシア。あの子はどこにいるの?すぐに呼び出して!」
「呼び出さずとも、すぐに参ります。ですが、その前に、謝って下さい」
「謝る?誰が」
「あなたがです!このフェンシアを騙し、お嬢様の皮を被り……。毎日酷く苦痛でした!謝って下さい!」
「間抜けなことを言うんじゃないわよ!令嬢がメイドに謝るわけがないじゃない!やっぱりあなたはクビよ!クビ!今すぐ出ていきなさい!」
「……っ。ただ一言、すいませんと言うだけなのに。それすらもできないのですか」
「出ていけ!!!!」
フェンシアが、大粒の涙を流しながら、ようやく部屋を出て行った。
……呪いが解けたとはいえ、この体は私のものだ。そして、一度決まった結婚は、絶対に解消することができない。
バレてしまったけど、リオロ様は、私を愛する他ないのだ。もしこの規則を破れば処刑になる。
こうなる可能性も、考慮していなかったわけではない。だから私は。結婚のタイミングで、呪いをかけたのだ。
「……レーン。入るよ」
しばらくして、ナンナが部屋にやってきた。
「……ご苦労様。無事、呪いが解けたみたいね」
「うん……。あのね、レーン」
「何よ」
「私たち……。やり直せないかな」
「……は?」
まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。
私は咳ばらいをして、気持ちを整える。
「無理よ。そんなの。私……。ナンナのこと、大嫌いだから」
ありったけの憎悪を込めて言った。それなのに、ナンナは余裕たっぷりに、笑みを浮かべている。
「大嫌いでもいい。これからだって、変われるから。見て?私の体。レーンの体だよ?努力すれば、必ず結果は出るの。だから」
「うるさい!!!!」
「……レーン」
「努力すればすればって……。なによ!そんなに自分が成功した姿を見せつけたいの!?はいはいすごいですね!よくがんばりました!これで満足!?」
「そんな。私は」
「聞きたくない。あなたの言葉なんて。大っ嫌い。もう出て行ってよ。心がぐちゃぐちゃなの……」
「……私、待ってるから。後でちゃんと話そう?ね?」
「……嫌だ」
「……」
ナンナが閉めたドアを、私は見つめていた。
……絶対に、許せない。
私の体で、何でもできちゃうところを見せつけて……。こんなの、人殺しと変わらない!ナンナによって、レーンは二回も殺されたのよ!
私は久しぶりに、外出することにした。重たい体を引きずって……。魔女の館へ行くために。
「フェンシア?一体何があったの?」
「……」
「……どうしたの?」
フェンシアは、酷く怖い顔をしている。まさか、どこかの国が攻めてきたとか?あるいは大きな獣が付近に出没しただとか……。
「……騙していたんですね」
「……?」
「とぼけないでください!あなたは、レーン・セラピーニャです!」
「は、はぁ!?」
どうしてバレた!?まさか、ナンナが……。
いや、その可能性は無いはずだ。だってナンナは、魔女の呪いで、体が入れ替わっていることを伝えられないから。
きっと、私が肥えて、あの子が痩せたから、誰か適当な噂を流したのだろう。こういときは、冷静に振る舞えばいい。
「落ち着きなさいフェンシア。何かの間違いよ」
「……聖女様の指輪を付けたことで、魔女の呪いが解けたのです」
……嘘だ。
私がはめれなかった、あの指輪?
嘘、嘘でしょ?そんなこと……。
「フェ、フェンシア。あの子はどこにいるの?すぐに呼び出して!」
「呼び出さずとも、すぐに参ります。ですが、その前に、謝って下さい」
「謝る?誰が」
「あなたがです!このフェンシアを騙し、お嬢様の皮を被り……。毎日酷く苦痛でした!謝って下さい!」
「間抜けなことを言うんじゃないわよ!令嬢がメイドに謝るわけがないじゃない!やっぱりあなたはクビよ!クビ!今すぐ出ていきなさい!」
「……っ。ただ一言、すいませんと言うだけなのに。それすらもできないのですか」
「出ていけ!!!!」
フェンシアが、大粒の涙を流しながら、ようやく部屋を出て行った。
……呪いが解けたとはいえ、この体は私のものだ。そして、一度決まった結婚は、絶対に解消することができない。
バレてしまったけど、リオロ様は、私を愛する他ないのだ。もしこの規則を破れば処刑になる。
こうなる可能性も、考慮していなかったわけではない。だから私は。結婚のタイミングで、呪いをかけたのだ。
「……レーン。入るよ」
しばらくして、ナンナが部屋にやってきた。
「……ご苦労様。無事、呪いが解けたみたいね」
「うん……。あのね、レーン」
「何よ」
「私たち……。やり直せないかな」
「……は?」
まさか、そんなことを言われるとは思っていなかった。
私は咳ばらいをして、気持ちを整える。
「無理よ。そんなの。私……。ナンナのこと、大嫌いだから」
ありったけの憎悪を込めて言った。それなのに、ナンナは余裕たっぷりに、笑みを浮かべている。
「大嫌いでもいい。これからだって、変われるから。見て?私の体。レーンの体だよ?努力すれば、必ず結果は出るの。だから」
「うるさい!!!!」
「……レーン」
「努力すればすればって……。なによ!そんなに自分が成功した姿を見せつけたいの!?はいはいすごいですね!よくがんばりました!これで満足!?」
「そんな。私は」
「聞きたくない。あなたの言葉なんて。大っ嫌い。もう出て行ってよ。心がぐちゃぐちゃなの……」
「……私、待ってるから。後でちゃんと話そう?ね?」
「……嫌だ」
「……」
ナンナが閉めたドアを、私は見つめていた。
……絶対に、許せない。
私の体で、何でもできちゃうところを見せつけて……。こんなの、人殺しと変わらない!ナンナによって、レーンは二回も殺されたのよ!
私は久しぶりに、外出することにした。重たい体を引きずって……。魔女の館へ行くために。
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