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魔女の契約。
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「おやぁ?お前さんは……」
「……レーンよ。レーン・セラピーニャ」
「おお。そうじゃったな。しっかし随分肥えたねぇ。せっかく美しい体を手に入れたというのに」
「黙りなさい!」
私が怒鳴ると、魔女は大きな声で笑い始めた。
「何がおかしいのよ……!」
「お前さんは言っておったよ。ナンナが羨ましい。自分がナンナの体になることができれば、どれほど良いか。結果どうじゃ?また同じように肥え、ここへ来た。人は変わらんよ。魂を磨かない限りわね」
「私はそんな話をしに来たわけじゃないの。ほら、これで足りる?」
私は必死で背負ってここまで持ってきた、大量の金を、汚い机の上に置いた。
「こないだの倍よ。どんな仕事だって、やってくれるでしょう?」
「……ひひっ。これだけ必死になって、今度はなんだい。前も言ったが、痩せる呪いは無いよ」
「わかってるわよ。……ナンナを、呪い殺してほしいの」
「……恐ろしいことを言うもんだね」
魔女がため息をついた。
「あなたなら簡単でしょう?」
「魂を入れ替えるよりも、よっぽど簡単じゃ。しかしその前に聞かせておくれ。どうしてお前さん、レーンだってバレたんだい」
私が事の経緯を説明すると、また魔女は笑い出した。とても不愉快だ。
「あ~面白い。お前さん、ついに味方もいなくなって、今度は人の命まで潰そうってのかい」
「そうよ……。だって、それしかないでしょう?先にやらなきゃ、私がやられるかもしれないもの」
「ほう?それはどういう意味だい?」
「離縁することは、規則に反するの。でも、ただ一つだけ、どちらかが命を落とした場合は、もう一度他の人と結婚する権利が生まれる……。つまり、ナンナが暗殺部隊を雇って、私を殺し、リオロ様と結婚する可能性が、あるってことなのよ!」
「……自分の姉だろう?信用していないのかい」
「できるわけない……」
昔から、何でもできてしまう姉。
いつだって、完璧を求めた姉。
……彼女の人生における、唯一の汚点は、この私が妹であるという事実なのだから。
「決意は固いようじゃが……。残念ながら、この依頼は受けられないね」
「どうしてよ!?お金が足りないの!?それなら」
「金をいくら積まれたって、無理なものは無理さ」
「なんでよ……」
「私の呪いを解くくらいの聖女が、バックにいるときちゃ、戦いたくもないねぇ。目を付けられたら面倒だから」
「そんな……。あなたしかいないのよ!お願い!私を助けてよ!」
「助ける……?ふっはっはっは!!!面白い!」
くそっ……。こっちが下手に出たからって、生意気な……。
「……言うことを聞いてくれないのなら、この場所を聖女に話すわ」
「おお?私を脅すのかい。どっちが魔女かわからないねぇ」
「うるさい!どうするの!?私の言うことを聞くか、聖女にころっ……!?」
な、なに、突然息が……。
「あ、うっ、……?」
「……その指輪は、嵌めたものの魂の所有権を奪う」
「……ぅ」
「あの時、ナンナの魂の所有権を奪った私は、お前さんと魂を入れ替えた。だが、少しおかしいと思わないかい?私は、お前さんの方の魂の所有権は、手に入れていないはずじゃないか」
「……」
「……契約だよ。魔女に依頼した者は、それと引き換えに、魂の所有権を奪われれる」
意識が、遠く……。
……助けて、ナンナ、リオロ様。
「もっとも、魂を入れ替えるだなんて大技を使われた時点で、自分の魂が魔女の支配下にあることくらい、自覚してほしかったがねぇ。まぁ仕方ないか……。不勉強とは、怖い物だよ。知識がないことは、敗北を意味する。あっはっは!いい勉強になったねぇ!来世に活かしなぁ!!!!」
魔女が、大きく杖を振った。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
「……レーンよ。レーン・セラピーニャ」
「おお。そうじゃったな。しっかし随分肥えたねぇ。せっかく美しい体を手に入れたというのに」
「黙りなさい!」
私が怒鳴ると、魔女は大きな声で笑い始めた。
「何がおかしいのよ……!」
「お前さんは言っておったよ。ナンナが羨ましい。自分がナンナの体になることができれば、どれほど良いか。結果どうじゃ?また同じように肥え、ここへ来た。人は変わらんよ。魂を磨かない限りわね」
「私はそんな話をしに来たわけじゃないの。ほら、これで足りる?」
私は必死で背負ってここまで持ってきた、大量の金を、汚い机の上に置いた。
「こないだの倍よ。どんな仕事だって、やってくれるでしょう?」
「……ひひっ。これだけ必死になって、今度はなんだい。前も言ったが、痩せる呪いは無いよ」
「わかってるわよ。……ナンナを、呪い殺してほしいの」
「……恐ろしいことを言うもんだね」
魔女がため息をついた。
「あなたなら簡単でしょう?」
「魂を入れ替えるよりも、よっぽど簡単じゃ。しかしその前に聞かせておくれ。どうしてお前さん、レーンだってバレたんだい」
私が事の経緯を説明すると、また魔女は笑い出した。とても不愉快だ。
「あ~面白い。お前さん、ついに味方もいなくなって、今度は人の命まで潰そうってのかい」
「そうよ……。だって、それしかないでしょう?先にやらなきゃ、私がやられるかもしれないもの」
「ほう?それはどういう意味だい?」
「離縁することは、規則に反するの。でも、ただ一つだけ、どちらかが命を落とした場合は、もう一度他の人と結婚する権利が生まれる……。つまり、ナンナが暗殺部隊を雇って、私を殺し、リオロ様と結婚する可能性が、あるってことなのよ!」
「……自分の姉だろう?信用していないのかい」
「できるわけない……」
昔から、何でもできてしまう姉。
いつだって、完璧を求めた姉。
……彼女の人生における、唯一の汚点は、この私が妹であるという事実なのだから。
「決意は固いようじゃが……。残念ながら、この依頼は受けられないね」
「どうしてよ!?お金が足りないの!?それなら」
「金をいくら積まれたって、無理なものは無理さ」
「なんでよ……」
「私の呪いを解くくらいの聖女が、バックにいるときちゃ、戦いたくもないねぇ。目を付けられたら面倒だから」
「そんな……。あなたしかいないのよ!お願い!私を助けてよ!」
「助ける……?ふっはっはっは!!!面白い!」
くそっ……。こっちが下手に出たからって、生意気な……。
「……言うことを聞いてくれないのなら、この場所を聖女に話すわ」
「おお?私を脅すのかい。どっちが魔女かわからないねぇ」
「うるさい!どうするの!?私の言うことを聞くか、聖女にころっ……!?」
な、なに、突然息が……。
「あ、うっ、……?」
「……その指輪は、嵌めたものの魂の所有権を奪う」
「……ぅ」
「あの時、ナンナの魂の所有権を奪った私は、お前さんと魂を入れ替えた。だが、少しおかしいと思わないかい?私は、お前さんの方の魂の所有権は、手に入れていないはずじゃないか」
「……」
「……契約だよ。魔女に依頼した者は、それと引き換えに、魂の所有権を奪われれる」
意識が、遠く……。
……助けて、ナンナ、リオロ様。
「もっとも、魂を入れ替えるだなんて大技を使われた時点で、自分の魂が魔女の支配下にあることくらい、自覚してほしかったがねぇ。まぁ仕方ないか……。不勉強とは、怖い物だよ。知識がないことは、敗北を意味する。あっはっは!いい勉強になったねぇ!来世に活かしなぁ!!!!」
魔女が、大きく杖を振った。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
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