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再会
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翌日、キャロは、王宮を訪れていた。
見張りの兵は、一緒に来たカムシアを見て、すぐに一礼。
どうやらカムシアの夫は、なかなか位が高いらしい。
そんなカムシアの紹介もあって、すぐに国王と謁見できることになった。
「なるほど……。それはあまりに酷い事件ですな」
国王のリカメロ・ゴルジアスは、長く伸びた顎髭をなでながら、しみじみと頷いた。
「子爵令嬢ともあろうお方が、そのような理由で家を追い出されるなど……。聞いたことがありませぬ」
「……はい。正直に申しますと、困惑しております」
「しばらくこの国で、ゆっくりしていってくだされ。必要な支援は、全て行わせていただきますぞ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げたキャロ。
……そんなキャロを、じーっと見つめている人物がいる。
リカメロの息子である、ハビアル・ゴルジアスだ。
「父上。少しだけ、キャロ様とお話してもよろしいでしょうか」
「うむ。街を案内してさしあげなさい」
「かしこまりました。キャロ様、行きましょう」
「は、はい……」
王子が街の案内を……?
違和感を抱いたが、断るわけにもいかない。
かなり緊張しながら、キャロはハビアルと共に、街へと向かった。
「あの、兵が申していた、ウシャーラを介抱したという話、なのですが」
「介抱、というほどでもないですけれど……」
「その話を聞いて、思い出したことがあるのです」
ハビアルが、足を止め、噴水広場のベンチに座ることを提案した。
周りのベンチには、カップルばかりが並んで座っている。
ハビアルはそれに気が付いていないが……。キャロは落ち着かなかった。
「思い出したこと、というのは?」
「幼いころの話です。……それこそ、ウシャーラと同じくらいの年の時。僕も、とある森で転んでしまって。足を擦りむいてしまいました」
「森ですか……」
「はい。ちょうど、国境にある森です。困ったことに、僕は無謀にも、たった一人で遊びに出かけていたため、誰も助けになど来てはくれず……。それはそれは、辛い思いをしました」
ウシャーラの場合は、街の中なので、キャロが助けなくても、誰か他の人が助けてくれた可能性はある。
しかし、森となれば話は別だ。
「ですが、たまたま通りがかった貴族の方に、私は介抱され、無事家に帰ることができました」
そこまで聞いて――。
キャロの記憶にも、何かの映像が、蘇ってきた。
涙を流しながら、擦りむいた膝を指差す少年。
覚えたての治療方法を、初めて試した……。七歳のころの思い出。
「僕の記憶が間違いでなければ……。その時治療をしてくれたのは、赤い髪の美しい少女で……」
間違いない。
キャロは、それが自分であると確信した。
見張りの兵は、一緒に来たカムシアを見て、すぐに一礼。
どうやらカムシアの夫は、なかなか位が高いらしい。
そんなカムシアの紹介もあって、すぐに国王と謁見できることになった。
「なるほど……。それはあまりに酷い事件ですな」
国王のリカメロ・ゴルジアスは、長く伸びた顎髭をなでながら、しみじみと頷いた。
「子爵令嬢ともあろうお方が、そのような理由で家を追い出されるなど……。聞いたことがありませぬ」
「……はい。正直に申しますと、困惑しております」
「しばらくこの国で、ゆっくりしていってくだされ。必要な支援は、全て行わせていただきますぞ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げたキャロ。
……そんなキャロを、じーっと見つめている人物がいる。
リカメロの息子である、ハビアル・ゴルジアスだ。
「父上。少しだけ、キャロ様とお話してもよろしいでしょうか」
「うむ。街を案内してさしあげなさい」
「かしこまりました。キャロ様、行きましょう」
「は、はい……」
王子が街の案内を……?
違和感を抱いたが、断るわけにもいかない。
かなり緊張しながら、キャロはハビアルと共に、街へと向かった。
「あの、兵が申していた、ウシャーラを介抱したという話、なのですが」
「介抱、というほどでもないですけれど……」
「その話を聞いて、思い出したことがあるのです」
ハビアルが、足を止め、噴水広場のベンチに座ることを提案した。
周りのベンチには、カップルばかりが並んで座っている。
ハビアルはそれに気が付いていないが……。キャロは落ち着かなかった。
「思い出したこと、というのは?」
「幼いころの話です。……それこそ、ウシャーラと同じくらいの年の時。僕も、とある森で転んでしまって。足を擦りむいてしまいました」
「森ですか……」
「はい。ちょうど、国境にある森です。困ったことに、僕は無謀にも、たった一人で遊びに出かけていたため、誰も助けになど来てはくれず……。それはそれは、辛い思いをしました」
ウシャーラの場合は、街の中なので、キャロが助けなくても、誰か他の人が助けてくれた可能性はある。
しかし、森となれば話は別だ。
「ですが、たまたま通りがかった貴族の方に、私は介抱され、無事家に帰ることができました」
そこまで聞いて――。
キャロの記憶にも、何かの映像が、蘇ってきた。
涙を流しながら、擦りむいた膝を指差す少年。
覚えたての治療方法を、初めて試した……。七歳のころの思い出。
「僕の記憶が間違いでなければ……。その時治療をしてくれたのは、赤い髪の美しい少女で……」
間違いない。
キャロは、それが自分であると確信した。
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