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決意
キシリア様が外出している時間を狙って、私はジェンス様の部屋を訪れた。
「おや、モカーナじゃないか。どうしたんだい?」
「……相談があります」
「……入ってくれ」
部屋に入ると、ソファーに座るよう促された。
テーブルを挟んで、私たちは、向かい合っている。
「どうしたんだい? 怖い顔をして」
「怖い顔……。ですか?」
「君とは、長い付き合いだからね。わかってしまうんだ」
ジェンス様が、少し笑った。
……まるで、心の内側まで覗かれているみたいで、恥ずかしくなる。
だけど、今はそんな場合じゃない。
「ジェンス様。クビを覚悟で、お話させていただきます。……キシリア様と、お別れになってください」
「……どうしてだい?」
「メイドたちへの嫌がらせに、耐え切れません。昨日も、リゼッタが、顔面を何度も殴打され……。酷くかわいそうな状態になっています」
「そんな……」
さすがに、驚いた様子だ。
昨日、自分がリゼッタに対してした発言が、無関係ではないことを、悟ったのだろう。
「メイドが次々と辞めていくのは……。キシリアのせいだと言うのかい?」
「その通りです。みんな、あの人に虐められ、精神を病んで、辞めていっているのです」
「だけど……。うん……。僕からは、なんとも」
「どうしてですか!?」
「落ち着きなさい……」
「……すいません」
つい、取り乱してしまった。
「ジェンス様。私は、ジェンス様が幼きころから、ずっと、メイドとして、仕えて参りました……。そんなジェンス様が、選んだ人なのだからと、キシリア様を受け入れようと、努力して参りましたが、もう限界です。このまま、あの人が、ジェンス様の妻として、居座り続けるのであれば……。私は、国を出ようと思います」
「待ってくれ……。いきなりすぎるよ」
「いきなりではありません。ずっと、この一年間、耐えてきたのです。このことを話せば、クビにしてやると、キシリア様は、言っておられました。ですので、後は、ジェンス様次第ということになります」
「……時間をくれないか。ここで何かを判断することは、とても難しい」
「つまり、近いうちに、判断していただけると?」
「……」
ジェンス様が、頭を抱えてしまった。
心優しいが故に、優柔不断。
キシリア様との結婚も、半ば押し切られる形での、強引なものだった。
「キシリア様と離婚するか、メイドたちを全員クビにするか……。という、選択です」
「極端すぎるよ。キシリアだって、説得すれば、きっと――」
「そのようには、思いません」
私は席を立った。
このままだと、ジェンス様は、何も判断できず、このことをひた隠しにして、ただ日々が過ぎるだけだろう。
その間に、またメイドたちが被害に遭うことは、避けられない。
……こうなったら、私が動くしかなさそうだ。
「おや、モカーナじゃないか。どうしたんだい?」
「……相談があります」
「……入ってくれ」
部屋に入ると、ソファーに座るよう促された。
テーブルを挟んで、私たちは、向かい合っている。
「どうしたんだい? 怖い顔をして」
「怖い顔……。ですか?」
「君とは、長い付き合いだからね。わかってしまうんだ」
ジェンス様が、少し笑った。
……まるで、心の内側まで覗かれているみたいで、恥ずかしくなる。
だけど、今はそんな場合じゃない。
「ジェンス様。クビを覚悟で、お話させていただきます。……キシリア様と、お別れになってください」
「……どうしてだい?」
「メイドたちへの嫌がらせに、耐え切れません。昨日も、リゼッタが、顔面を何度も殴打され……。酷くかわいそうな状態になっています」
「そんな……」
さすがに、驚いた様子だ。
昨日、自分がリゼッタに対してした発言が、無関係ではないことを、悟ったのだろう。
「メイドが次々と辞めていくのは……。キシリアのせいだと言うのかい?」
「その通りです。みんな、あの人に虐められ、精神を病んで、辞めていっているのです」
「だけど……。うん……。僕からは、なんとも」
「どうしてですか!?」
「落ち着きなさい……」
「……すいません」
つい、取り乱してしまった。
「ジェンス様。私は、ジェンス様が幼きころから、ずっと、メイドとして、仕えて参りました……。そんなジェンス様が、選んだ人なのだからと、キシリア様を受け入れようと、努力して参りましたが、もう限界です。このまま、あの人が、ジェンス様の妻として、居座り続けるのであれば……。私は、国を出ようと思います」
「待ってくれ……。いきなりすぎるよ」
「いきなりではありません。ずっと、この一年間、耐えてきたのです。このことを話せば、クビにしてやると、キシリア様は、言っておられました。ですので、後は、ジェンス様次第ということになります」
「……時間をくれないか。ここで何かを判断することは、とても難しい」
「つまり、近いうちに、判断していただけると?」
「……」
ジェンス様が、頭を抱えてしまった。
心優しいが故に、優柔不断。
キシリア様との結婚も、半ば押し切られる形での、強引なものだった。
「キシリア様と離婚するか、メイドたちを全員クビにするか……。という、選択です」
「極端すぎるよ。キシリアだって、説得すれば、きっと――」
「そのようには、思いません」
私は席を立った。
このままだと、ジェンス様は、何も判断できず、このことをひた隠しにして、ただ日々が過ぎるだけだろう。
その間に、またメイドたちが被害に遭うことは、避けられない。
……こうなったら、私が動くしかなさそうだ。
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