とある貴族の家に仕えるメイドですが、奥様の虐めが酷すぎるので、弱みを握って復讐しようと思います。

冬吹せいら

文字の大きさ
3 / 11

決意

キシリア様が外出している時間を狙って、私はジェンス様の部屋を訪れた。

「おや、モカーナじゃないか。どうしたんだい?」
「……相談があります」
「……入ってくれ」

部屋に入ると、ソファーに座るよう促された。

テーブルを挟んで、私たちは、向かい合っている。

「どうしたんだい? 怖い顔をして」
「怖い顔……。ですか?」
「君とは、長い付き合いだからね。わかってしまうんだ」

ジェンス様が、少し笑った。

……まるで、心の内側まで覗かれているみたいで、恥ずかしくなる。

だけど、今はそんな場合じゃない。

「ジェンス様。クビを覚悟で、お話させていただきます。……キシリア様と、お別れになってください」
「……どうしてだい?」
「メイドたちへの嫌がらせに、耐え切れません。昨日も、リゼッタが、顔面を何度も殴打され……。酷くかわいそうな状態になっています」
「そんな……」

さすがに、驚いた様子だ。

昨日、自分がリゼッタに対してした発言が、無関係ではないことを、悟ったのだろう。

「メイドが次々と辞めていくのは……。キシリアのせいだと言うのかい?」
「その通りです。みんな、あの人に虐められ、精神を病んで、辞めていっているのです」
「だけど……。うん……。僕からは、なんとも」
「どうしてですか!?」
「落ち着きなさい……」
「……すいません」

つい、取り乱してしまった。

「ジェンス様。私は、ジェンス様が幼きころから、ずっと、メイドとして、仕えて参りました……。そんなジェンス様が、選んだ人なのだからと、キシリア様を受け入れようと、努力して参りましたが、もう限界です。このまま、あの人が、ジェンス様の妻として、居座り続けるのであれば……。私は、国を出ようと思います」
「待ってくれ……。いきなりすぎるよ」
「いきなりではありません。ずっと、この一年間、耐えてきたのです。このことを話せば、クビにしてやると、キシリア様は、言っておられました。ですので、後は、ジェンス様次第ということになります」
「……時間をくれないか。ここで何かを判断することは、とても難しい」
「つまり、近いうちに、判断していただけると?」
「……」

ジェンス様が、頭を抱えてしまった。

心優しいが故に、優柔不断。

キシリア様との結婚も、半ば押し切られる形での、強引なものだった。

「キシリア様と離婚するか、メイドたちを全員クビにするか……。という、選択です」
「極端すぎるよ。キシリアだって、説得すれば、きっと――」
「そのようには、思いません」

私は席を立った。

このままだと、ジェンス様は、何も判断できず、このことをひた隠しにして、ただ日々が過ぎるだけだろう。

その間に、またメイドたちが被害に遭うことは、避けられない。

……こうなったら、私が動くしかなさそうだ。
感想 3

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

“いつまでも一緒”の鎖、貴方にお返しいたします

ファンタジー
男爵令嬢エリナ・ブランシュは、幼馴染であるマルグリット・シャンテリィの引き立て役だった。 マルグリットに婚約が決まり開放されると思ったのも束の間、彼女は婚約者であるティオ・ソルベに、家へ迎え入れてくれないかというお願いをする。 それをティオに承諾されたエリナは、冷酷な手段をとることを決意し……。 ※複数のサイトに投稿しております。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

悪役令嬢の妹は復讐を誓う

影茸
恋愛
王子との婚約を冤罪によって破棄され、何もかも失った少女メイア・ストラード。 そしてその妹、アリアは絶望に嘆き悲しむ姉の姿を見て婚約を破棄した王子に復讐を誓う。

問い・その極悪令嬢は本当に有罪だったのか。

風和ふわ
ファンタジー
三日前、とある女子生徒が通称「極悪令嬢」のアース・クリスタに毒殺されようとした。 噂によると、極悪令嬢アースはその女生徒の美貌と才能を妬んで毒殺を企んだらしい。 そこで、極悪令嬢を退学させるか否か、生徒会で決定することになった。 生徒会のほぼ全員が極悪令嬢の有罪を疑わなかった。しかし── 「ちょっといいかな。これらの証拠にはどれも矛盾があるように見えるんだけど」 一人だけ。生徒会長のウラヌスだけが、そう主張した。 そこで生徒会は改めて証拠を見直し、今回の毒殺事件についてウラヌスを中心として話し合っていく──。

第一王子に裏切られた私は意外と身近に転生しました。さぁ復讐を始めましょう……

水城ゆき
恋愛
公爵令嬢のメリアンナは知ってしまった。婚約者である第一王子アストレアが自分の屋敷のメイドであるミレーナにラブレターを送った事を。 憤怒したメリアンナは二人の恋を実らせまいと行動するが、その作戦が上手くいきかけた時。 突然現れたミレーナを見て、思わずアストレアは抱きしめていたメリアンナを突き飛ばした。 メリアンナは階段を転落する事になり、そのまま命を落としてしまう。 しかし次に目覚めた時、メリアンナは第二王子の長女として以前の記憶を保ったまま生まれ変わっていたのだ。 ここからメリアンナの復讐が始まる。

婚約者に毒を盛られて追放された第一王子ですが、王妃になった元婚約者の王国を滅ぼしました

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
第一王子だった俺は婚約者の公爵令嬢に毒を盛られ追放された。彼女は第二王子と結ばれ王妃になろうとしたのだ。だが王家の秘密が暴かれ王国は混乱。そして十数年後――王妃となった元婚約者の前に俺は軍を率いて現れる。これは、毒を盛られた王子が王国を滅ぼすまでの物語。 本作は「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です」シリーズの外伝的な短編作品です。 なろうでも公開している作品です。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。