王子が浮気したので、公爵家の出番ですね。

冬吹せいら

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裏切られた国王

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「は……?」

 カイサルは口をあんぐりと開けて驚いている。
 しかし、リンダはそれが当たり前であるかのように、柔らかな笑みを浮かべていた。

「……大魔導様は、俺の生まれ故郷を守ってくれたんだ」
「き、貴様、何を――」
「大魔導様がいなかったら、今の我々はいない!」

 騎士団長の声に、先ほどまで震えあがっていた兵も応えた。

「何が起こっているのだ……」
「歴史というのは、見る側面を変えてしまえば、違うものが見えてくるものです」
「黙れ! おい貴様! 私に逆らうことが何を意味するか、分かっておらんわけではなかろうな!」
「しかし……。大魔導様はもちろん、公爵令嬢様にも、我々は命を救われてきました」
「なにぃ……?」

 カイサルは、ただこの王宮で惰眠を貪り、女を抱くだけの日々を送っていた。
 リンダの国への貢献度など、知る由も無い。

「リンダ様がいなければ、おそらく我が騎士団はとっくに壊滅しております。それほど我々に……。……いや、人類にとって、必要な存在なのです!」
「黙れ黙れ黙れぇ!」

 バンバンと玉座を叩きながら、カイサルが顔を真っ赤にして激怒した。

「もうよい! 出て行け騎士団! 貴様らタダでは済まんからな! 全員必ず殺してやる! そして大魔導士! それからリンダ! 貴様らも皆殺しじゃあ!」
「あら。まだ話は終わってません。私の要求は、あくまで伯爵家への――」
「うるさい!」

 カイサルが短剣を拾い上げ、リンダに向かって投げたが、あっさりと魔法ではじき返されてしまった。

「ち、父上が出て行けと申している! さっさと出て行きなさい!」
「つまり、争いを始めるということで、よろしいですね?」

 ギルダスには、その言葉に対してまともに返答する勇気などなかった。
 
 全員が部屋を出て行った後で、大きくため息をつく。
 そして、涙目になりながら、カイサルに問いかけた。

「父上……。これからどうなるのでしょうか」
「ふんっ。所詮は老人と女じゃ。勝てぬ相手ではないわい」

 カイサルは立ち合がり、使用人を呼び寄せた。
 そして耳打ちをすると、使用人は驚いたような表情を浮かべる。

「構わん」

 カイサルの言葉を聞き、執事は頭を下げ、部屋を出て行った。

「泣くな我が息子よ。まだまだ余裕がある」
「本当ですか……?」
「あぁ。……今にみておけ。アイバーン家に喧嘩を売ったことを、後悔させてやる!」
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