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公爵令嬢の事情
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こうして、新たにベネロップ家が王家として君臨したのだが……。
「姉上。また勝手に働いて……」
ため息をついたのは、リンダの弟であり、現在は王太子である、キリュー・ベネロップである。
「勝手? 違うわ。使用人の役過半数の票を集めたの。私は働くべきよね? って」
「すぐに許可を出した使用人を教えてください。説教をします」
「やめて。私が悪かったわ」
リンダは公爵家の令嬢として、様々な方面に関係のパイプを築き上げるなど、その仕事量は尋常ではないほどになっていた。
見かねたキリューや、両親が、しばらくリンダに働くなと命令したのだが……。
全く持って、受け入れるつもりがないらしい。
「父上に報告します」
「やめて。また王子に出会わされるのはごめんだわ」
「どうしてですか。南の国の王子は、性格も容姿も完璧。姉上にこそふさわしい存在かと思われますが」
「……嫌よ。王子の妻なんて」
「なぜです? 毎日優雅に本を読み、紅茶を飲んで、フルーツを食べる……。最高の毎日じゃないですか――って、いない……」
すでにリンダは、キリューの前から消え去っている。
王宮で仕事をしているとバレるので、移動することにしたのだ。
しかし――。
「リンダ。どこに行くんだ?」
「お父様……」
ジェイド・ベネロップ――新たな国王。
リンダに笑みを向けつつも、目は笑っていなかった。
「また逃げるつもりか……。これ以上は、相手方にも申し訳ない。君だって常識人なのだから、わかるだろう?」
「わかっています。けれど、まだ結婚は早いと思うのです」
そう言い切るリンダの頭に、大魔導士の言葉が響く。
一人でいることが、まるでイケないことのように感じるのだ。
しかし、リンダはその想いに負けたくなかった。
まだ十六歳。やりたいことはたくさんある。
「何度も言うが、結婚したと言っても、何か煩わしい出来事が増えるわけじゃない。……君がなぜかやりたがっている雑務が出来なくなる代わりに、自由な時間が増えるんだ。これの何が不満なんだい?」
「……お父様には、きっとわかりません」
リンダは駆け足で階段を下った。
「あっ――」
そのせいで、足を踏み外してしまったのだ。
床に、体が叩きつけられる――。
その瞬間。
「おっと」
一人の青年が、リンダの体を支えた。
「ふぅ。危なかった」
彼こそ、南の国の王子――テオ・ルベルカムである。
「姉上。また勝手に働いて……」
ため息をついたのは、リンダの弟であり、現在は王太子である、キリュー・ベネロップである。
「勝手? 違うわ。使用人の役過半数の票を集めたの。私は働くべきよね? って」
「すぐに許可を出した使用人を教えてください。説教をします」
「やめて。私が悪かったわ」
リンダは公爵家の令嬢として、様々な方面に関係のパイプを築き上げるなど、その仕事量は尋常ではないほどになっていた。
見かねたキリューや、両親が、しばらくリンダに働くなと命令したのだが……。
全く持って、受け入れるつもりがないらしい。
「父上に報告します」
「やめて。また王子に出会わされるのはごめんだわ」
「どうしてですか。南の国の王子は、性格も容姿も完璧。姉上にこそふさわしい存在かと思われますが」
「……嫌よ。王子の妻なんて」
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すでにリンダは、キリューの前から消え去っている。
王宮で仕事をしているとバレるので、移動することにしたのだ。
しかし――。
「リンダ。どこに行くんだ?」
「お父様……」
ジェイド・ベネロップ――新たな国王。
リンダに笑みを向けつつも、目は笑っていなかった。
「また逃げるつもりか……。これ以上は、相手方にも申し訳ない。君だって常識人なのだから、わかるだろう?」
「わかっています。けれど、まだ結婚は早いと思うのです」
そう言い切るリンダの頭に、大魔導士の言葉が響く。
一人でいることが、まるでイケないことのように感じるのだ。
しかし、リンダはその想いに負けたくなかった。
まだ十六歳。やりたいことはたくさんある。
「何度も言うが、結婚したと言っても、何か煩わしい出来事が増えるわけじゃない。……君がなぜかやりたがっている雑務が出来なくなる代わりに、自由な時間が増えるんだ。これの何が不満なんだい?」
「……お父様には、きっとわかりません」
リンダは駆け足で階段を下った。
「あっ――」
そのせいで、足を踏み外してしまったのだ。
床に、体が叩きつけられる――。
その瞬間。
「おっと」
一人の青年が、リンダの体を支えた。
「ふぅ。危なかった」
彼こそ、南の国の王子――テオ・ルベルカムである。
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