悪役令嬢に難癖をつけられ、飼い犬と共に国外追放されましたが、私は聖女、飼い犬は聖獣になりました。

冬吹せいら

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気持ち

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集会場でのパーティが終わった後、私はランバーと二人で、村の外に出ていた。
……ちょっと、二人きりで話したかったのだ。

「ランバー」
「どうした?」
「……すごい。本当に喋れるんだね」
「私も驚いている。今までは、どう気持ちを伝えようとしても、ばうばうとしか、音が出なかったのだ……」
「じゃあ、ずっと、私たちが話している内容は、理解できていたんだね」
「そうだ。私たち動物は、人の言葉を理解できるが、話すことができない。歯がゆい思いをしているよ」

私はランバーに、そっと抱きついた。とっても暖かくて、心地良い感触に包まれる……。

「ずっと、ランバーと話してみたいと思っていたの」
「私も……。シーナに、感謝の気持ちを伝えたいと思っていた」
「感謝?」
「あぁ。かつて、ゴミ捨て場で倒れていた私を助け、ここまで立派に育ててくれた。本当にありがとう」
「そんな……。私だって、ランバーに感謝したいこと、たくさんあるよ?」

私が風邪を引いて、寝込んでしまって、子供たちと遊んであげられない時、代わりに遊んでくれていた。
私が両親のことで泣いてしまった時、そばにいて、体を寄せてくれた。

……言い出したら、キリがない。ランバーの暖かさがあったから、私はみんなに、あれだけ優しくすることができたのだ。

「……そうか」

ランバーが、大きな鼻で、私の頭を撫でてくれた。愛しい気持ちが溢れそうになる。嬉しいはずなのに、涙が出てしまった。

「シ、シーナっ。すまない。泣かせるつもりは」
「……違うのっ。ランバーが……。優しくて」
「……」

ランバーは、それ以上何も言わず、ただ私に、優しく寄り添ってくれた。


しばらくして、私はランバーに尋ねてみた。

「ランバー。聖女の役割は、少しわかった気がするけど……。聖獣って、一体何をするんだろうね」
「聖獣の役割はたった一つだ。聖女を守る。それだけ」
「……そうなんだ」
「私が、命に代えても、シーナを守る」
「ランバー……。また泣きそうになっちゃうよ」
「これ以上は勘弁してくれ。君の涙を見ていると、胸が苦しくなる。……今はそれを、表現できてしまうから、余計に悲しいんだ」
「そっか……。うん。わかった!ランバーの前では、笑顔でいる!」
「そうしてくれ。私は君の笑顔が好きだ」
「すっ……。うん」

ランバーの大きな鋭い瞳に見つめられながら言われると、心が掴まれたように、息苦しくなる。

……好き、なのかな。

でも、私は人間で、ランバーは獣で……。

「どうした?シーナ」
「あ、ううん。なんでもないよ」
「そうか」
「そろそろ家に帰ろっか」
「うむ」

私はランバーと並んで、村に戻った。

この気持ちをはっきりさせるのは、もう少し後でも良いと思う。
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