悪役令嬢に難癖をつけられ、飼い犬と共に国外追放されましたが、私は聖女、飼い犬は聖獣になりました。

冬吹せいら

文字の大きさ
11 / 14

消えない愛

しおりを挟む
「……おや」

孤児院を訪れたボスティ。
メリカ―が、驚いたような表情を見せた。

「お変わりありませんか。メリカ―様」
「様はやめなさい……。もう客ではないのに」
「申し訳ございません。つい、癖で」
「……ここへ来ることは、禁止されているはず。どうして?」
「シーナを追い出した後、孤児院に不審な動きが無いか……。確認してくると申して、やって参りました」
「……大胆だねぇ」

メリカ―が笑うと、ボスティも釣られて笑った。

「子供たちは、ちょうど山に出かけているよ。隣国の知人が良い人でね。子供が好きなんだとさ。ありがたい話だ。コーヒーでいいかい?」
「お気遣いなく」
「いいや。あれだけコーヒーを入れてもらったんだ。たまには私にもやらせておくれ」
「……では、お言葉に甘えて」

ボスティは、ソファーに腰かけた。子供たちの絵が、壁に飾ってある。その中に、シーナの描いたものも混ざっていた。

「それで、何の用事だい?もうすぐ死ぬとか?」

コーヒーを手渡しながら、メリカ―が尋ねた。

「演技でもない……。ですが、近いかもしれません」
「……どういう意味だい?」

メリカ―が、少し怖い顔で、ボスティを睨みつけた。しかし、ボスティは怯むことなく、落ち着いた口調で説明を始める。

「一週間後、王に会いに行き、カーペンハイト家の国外追放を要求します」
「……」

メリカ―は、言葉が出なかった。
そんなことをすれば……。間違いなくボスティは、殺されるだろう。

「やめておきな。大勢の人が悲しむよ」
「ですが、このまま奴らの犬であり続けるのは、耐えられません」
「ボスティ。落ち着きなさい」
「シーナのことが、心配ではないですか?」
「……心配さ。すごくね」
「だったら」
「だけど、生きてりゃ仕方のないことだってあるさ。そういう時代なんだよ」
「……あなたは四十年前も、同じことを言いました」

仕方ない。そういうこともある。

それで終わっていいのか?

ボスティは、持参したノートを、メリカ―に見せた。

「それは……」
「死ぬ気で集めました。数は足りております。これに……。あとは、王の承諾さえあれば」
「無理さ。王族はカーペンハイト家から、大金をもらってる」
「ですが、街で暴動が起きる可能性を考慮すれば、カーペンハイト家を追い出すという選択肢もあるわけで」
「ボスティ。冷静に考えるんだ。暴動なんて起きやしないよ。この街の人はみんな、あの家に支配を」
「……私の死が、少しでも彼らを動かす理由になってくれれば、良いと思います」

ボスティは、涙を流していた。

メリカ―もまた、ボスティの勇気に感動しつつ……。それでも、暴動が起きるとは、やはり考えることができないでいる。

しかし――もっといい方法を思いついた。

「だったら、私も行くよ」
「……え?」
「カーペンハイト家の執事と、こないだ国外追放された孤児のいる孤児院の院長が、揃って殺されたら……。さすがに何かは起きるんじゃないかい?」
「そんな。巻き込めません。私一人で」
「だったらこんなところへ来るんじゃなかったね。運が悪かったよあんたは」
「……」
「もし一人で行ったってわかったら、あんたが死ぬ前に、私が一人で死んでやる。いいね?」
「……はい」

ボスティは、渋々頷いた。

こんなに老いぼれても、やはりメリカ―はメリカ―だ。

――かつて、自分の愛した女性、そのものだ。

「……では、一週間後。迎えに参ります」
「楽しみにしてるよ。あぁそうだ。歩けないから、おんぶしていってくれると嬉しいねぇ?」
「……はは」

ボスティは苦笑いをした後、孤児院を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

国王ごときが聖女に逆らうとは何様だ?

naturalsoft
恋愛
バーン王国は代々聖女の張る結界に守られて繁栄していた。しかし、当代の国王は聖女に支払う多額の報酬を減らせないかと、画策したことで国を滅亡へと招いてしまうのだった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ゆるふわ設定です。 連載の息抜きに書いたので、余り深く考えずにお読み下さい。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。

ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。 辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。 ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。 その後、王都から助けを求める使者が現れる。 追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。 エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。 全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。 ◇ 命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。 ◇ ※他サイトにも投稿しております。

悪『役』令嬢ってなんですの?私は悪『の』令嬢ですわ。悪役の役者と一緒にしないで………ね?

naturalsoft
恋愛
「悪役令嬢である貴様との婚約を破棄させてもらう!」 目の前には私の婚約者だった者が叫んでいる。私は深いため息を付いて、手に持った扇を上げた。 すると、周囲にいた近衛兵達が婚約者殿を組み従えた。 「貴様ら!何をする!?」 地面に押さえ付けられている婚約者殿に言ってやりました。 「貴方に本物の悪の令嬢というものを見せてあげますわ♪」 それはとても素晴らしい笑顔で言ってやりましたとも。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

新しい聖女が優秀なら、いらない聖女の私は消えて竜人と暮らします

天宮有
恋愛
ラクード国の聖女シンシアは、新しい聖女が優秀だからという理由でリアス王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 ラクード国はシンシアに利用価値があると言い、今後は地下室で暮らすよう命令する。 提案を拒むと捕らえようとしてきて、シンシアの前に竜人ヨハンが現れる。 王家の行動に激怒したヨハンは、シンシアと一緒に他国で暮らすと宣言した。 優秀な聖女はシンシアの方で、リアス王子が愛している人を新しい聖女にした。 シンシアは地下で働かせるつもりだった王家は、真実を知る竜人を止めることができない。 聖女と竜が消えてから数日が経ち、リアス王子は後悔していた。

最優秀な双子の妹に婚約者を奪われました。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 第2章、後日談と悪女の陰謀反撃を書くことにしました。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

処理中です...