悪役令嬢に難癖をつけられ、飼い犬と共に国外追放されましたが、私は聖女、飼い犬は聖獣になりました。

冬吹せいら

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消えない愛

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「……おや」

孤児院を訪れたボスティ。
メリカ―が、驚いたような表情を見せた。

「お変わりありませんか。メリカ―様」
「様はやめなさい……。もう客ではないのに」
「申し訳ございません。つい、癖で」
「……ここへ来ることは、禁止されているはず。どうして?」
「シーナを追い出した後、孤児院に不審な動きが無いか……。確認してくると申して、やって参りました」
「……大胆だねぇ」

メリカ―が笑うと、ボスティも釣られて笑った。

「子供たちは、ちょうど山に出かけているよ。隣国の知人が良い人でね。子供が好きなんだとさ。ありがたい話だ。コーヒーでいいかい?」
「お気遣いなく」
「いいや。あれだけコーヒーを入れてもらったんだ。たまには私にもやらせておくれ」
「……では、お言葉に甘えて」

ボスティは、ソファーに腰かけた。子供たちの絵が、壁に飾ってある。その中に、シーナの描いたものも混ざっていた。

「それで、何の用事だい?もうすぐ死ぬとか?」

コーヒーを手渡しながら、メリカ―が尋ねた。

「演技でもない……。ですが、近いかもしれません」
「……どういう意味だい?」

メリカ―が、少し怖い顔で、ボスティを睨みつけた。しかし、ボスティは怯むことなく、落ち着いた口調で説明を始める。

「一週間後、王に会いに行き、カーペンハイト家の国外追放を要求します」
「……」

メリカ―は、言葉が出なかった。
そんなことをすれば……。間違いなくボスティは、殺されるだろう。

「やめておきな。大勢の人が悲しむよ」
「ですが、このまま奴らの犬であり続けるのは、耐えられません」
「ボスティ。落ち着きなさい」
「シーナのことが、心配ではないですか?」
「……心配さ。すごくね」
「だったら」
「だけど、生きてりゃ仕方のないことだってあるさ。そういう時代なんだよ」
「……あなたは四十年前も、同じことを言いました」

仕方ない。そういうこともある。

それで終わっていいのか?

ボスティは、持参したノートを、メリカ―に見せた。

「それは……」
「死ぬ気で集めました。数は足りております。これに……。あとは、王の承諾さえあれば」
「無理さ。王族はカーペンハイト家から、大金をもらってる」
「ですが、街で暴動が起きる可能性を考慮すれば、カーペンハイト家を追い出すという選択肢もあるわけで」
「ボスティ。冷静に考えるんだ。暴動なんて起きやしないよ。この街の人はみんな、あの家に支配を」
「……私の死が、少しでも彼らを動かす理由になってくれれば、良いと思います」

ボスティは、涙を流していた。

メリカ―もまた、ボスティの勇気に感動しつつ……。それでも、暴動が起きるとは、やはり考えることができないでいる。

しかし――もっといい方法を思いついた。

「だったら、私も行くよ」
「……え?」
「カーペンハイト家の執事と、こないだ国外追放された孤児のいる孤児院の院長が、揃って殺されたら……。さすがに何かは起きるんじゃないかい?」
「そんな。巻き込めません。私一人で」
「だったらこんなところへ来るんじゃなかったね。運が悪かったよあんたは」
「……」
「もし一人で行ったってわかったら、あんたが死ぬ前に、私が一人で死んでやる。いいね?」
「……はい」

ボスティは、渋々頷いた。

こんなに老いぼれても、やはりメリカ―はメリカ―だ。

――かつて、自分の愛した女性、そのものだ。

「……では、一週間後。迎えに参ります」
「楽しみにしてるよ。あぁそうだ。歩けないから、おんぶしていってくれると嬉しいねぇ?」
「……はは」

ボスティは苦笑いをした後、孤児院を後にした。
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