悪役令嬢に難癖をつけられ、飼い犬と共に国外追放されましたが、私は聖女、飼い犬は聖獣になりました。

冬吹せいら

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勝利

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「ガ、ガレード様……!」

ジリオルが頭を下げた。どうして王がここへ……?そう思っていたら、さらにその後ろから、

「……ボスティさん、メリカ―さん」

予想もしていなかった二人が現れた。

「感動の再開……。とはいかなさそうだね。随分賑やかだ」

メリカ―さんが、優しく微笑んだ。涙が出そうになったが、

「ぼ、ボスティ!?貴様、今朝から顔を見かけぬと思ったのじゃ!何をしておったぁ!」

ジリオルの叫び声で、感情が押し戻された。

「申し訳ございません。王に……。カーペンハイト家の、国外追放を、求めに行っておったのです」
「……自分が何を申しておるのか、わかっておるのか?」
「うるさいねぇ……。だから貴族は嫌いなんだ」
「何ぃ!?そこの老いぼれ!口を慎め!」
「口を慎むのは君だ。ジリオル。落ち着きなさい」

王に注意され、ジリオルが再び頭を下げた。

「先ほど、この二人が、これを持ってきたのだ」

王が掲げたのは……。一冊のノート。
びっちりと、人の名前が記入されている。

「カーペンハイト家の国外追放を求める者たちの署名だ」
「……ガレード様。まさか、そんなものを真に受け、本当に我々を国外追放しようと?」
「……」

王は、何も言わず、俯いた。
そんな王の前に、イエンさんが立つ。

「初めまして。ご挨拶が遅れました。私はアレンベートの騎士団長、イエンでございます」
「……アレンベート」
「カーペンハイト家のやっていることは、完全に異常です。抗議に参りました」
「わかっておる。だが……。切れぬ縁もあるのだ」
「でしたら、どうしてここへ参ったのですか」
「これだけの署名が集まったのだから、動くことくらいは、せねばならぬと思ったまでだよ」
「それで、何も言わず、帰るつもりだったと」
「……なぜ故このように、人が集まっておるのかと思えば、そういうことか」

王が、アレンベートの兵たちを眺めるようにして、ゆっくりと首を回す。それから、私や、ランバーに目を向けた。そして……。

「そなたは、聖女か?」

私の方を見て、そう尋ねてきた。

「えっ……。あっ、はい」
「貴様、彼女が聖女だとわかるのか」

ランバーが尋ねると、王が頷いた。

「王族に伝わる伝説だ。国に……。街に、受け入れ難き悪が取り憑いた時、必ずやそれをかき消す光を持って、聖女が訪れると……。我が王宮に飾られた絵画に、そなたとそっくりの聖女が、描かれておる」
「……悪?ガレード様。我らがその、悪だと申すのですか?」
「そういう判断を、せざるを得ないということだ」
「そんな……。そんな、都合のいい話があるか!あれだけの大金を受け取りながら、急に聖女が現れたからと言って、無理矢理に我々を悪に例え、追い出すなど、ありえない!それこそ国のルールに反するのではないか!?」

またしても、王は黙ってしまった。

これほどまでに、威厳の無い王だからこそ、カーペンハイト家の言いなりになっていたのだと思う。
情けないし、悔しい。だけど……。

「……私には、闇を裁く力が、あるかもしれません」

……私は、聖女だ。
王に成り代わってでも、国を守る責任が、あるのだと思う。

「今からここで、祈りを捧げます。王の言うことが正しいならば……。きっと、あなたたちの魂は、消えてしまうのだと思います」
「……やればよかろう。所詮は言い伝え。作り話にすぎんわ!」
「待ってください。さすがに愚かです。ジリオル殿。この聖獣の力を、今まさに目にしたでしょう。まやかしでも何でもない。確かな力が、この者たちにはある。私も、シーナ様に、傷を癒してもらいました。魔法では説明できないような早さだったのです」
「黙れ黙れ黙れぇ!そのような嘘を並べ、我を欺こうなど、百万年早いわぁ!」

ボスティさんが、ため息をついた。

「……ジリオル様。あなたの後ろで泣いている、マレンヌ様のお顔が、目に入らぬのですか」
「……泣いてない!」

マレンヌが虚勢を張った。その目には、大粒の涙が溜まっている、

「我らは屈しない!カーペンハイト家の誇りを持って、相対する!」
「こんな時でも、誇りかい……。間抜けだね」

メリカ―さんが、疲れたようにそう呟いた。

「……聖女になったものよ。我はもう疲れた。言い伝えが確かであるならば……。彼らに依存し、その金で平穏な暮らしを得ていた我も、闇と判断され、消えてしまうだろう。だがもうよいのだ。許されぬことをした。毎日毎日、いつ死のうか考えておった。そこへ……。二人がやってきたのだ。そういうことなのだろう」

王は静かに目を閉じ……。その場にしゃがみこんだ。

「どうしたぁ!?祈らないのか!祈らないならこちらからまた攻撃を」
「あおおおん!!!」
「……っ」

銃を構えようとした兵が、ランバーの遠吠えで、戦意を完全に喪失し、その手を下げた。

「……シーナ。もはやこれまでだ」

ランバーの鋭い瞳が、私を真っすぐ見つめている。

「……うん」

頷いた後、目を閉じた。

……闇よ。聞こえますか。

我が光に導かれ、その姿を隠しなさい。

次の魂は、きっと清らかに……。

「……消えた」

イエンさんが呟いた。私は目を開ける。

カーペンハイト家の兵、ジリオル、マレンヌ……。王。

まるで最初から、そこに何もなかったかのように、跡形もなく消え去っていた。
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