一人の子供が聖女になり、聖女を引退するまでの物語。

冬吹せいら

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国王と令嬢

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「よく来たな。ロベリア・ハニーゴ」
「はい!」
「おおっと。すまんすまん。ここでは、あの鉱山のような返事はいらんよ。王宮だからな……。もう少し、おしとやかにいこう」
「……はい」
「それでよい」

国王の、アーデン・グルジオンが、ニタリと笑った。
この国に来て、国王の顔を見るのは、初めてだった。

名前だけは――知っていたけれど。
仕事が終わり、眠る前の点呼。

そこで「アーデン・グルジオン様! 労働の喜びを与えてくださり、ありがとうございます!」と必ず言わされてから、ようやく一日が終わるのだ。

「ロベリア。君はなぜ、呼び出されのか、わかるかな?」
「わかりません」
「……そうだろうな。今から説明しよう」

アーデンがそう言うと、

「ふんっ。これをつけたのに、全然聖女になんてなれないじゃない! 期待して損したわ!」

横にいた女が、急に騒ぎ始めた。
金色の髪をたなびかせ、こちらを睨みつけている。

「この子は私の娘、ミシェーラ・グルジオンだ」
「お父様。このような汚らわしい動物に、私の名前を教える必要なんて、ありませんのに」
「そう言ってやるなミシェーラ。少しは優しくしてあげなさい。君も今日で、十二歳になるんだよ?」
「……そうね。成長しないと」

十二歳……。同い年だ。
……待って。もしかして、ピアスを付けたの?

「ほら、見なさいよこれ。聖女のピアスなのよね?」

まるで、私の疑問に答えるかのように、ミシェーラが耳を見せてきた。

月を模った、可愛いピアス――。
ミシェーラの両耳に、それが付けられていた。

あまりの出来事に、言葉を失ってしまう。
一族の宝物が、汚されてしまった……。

「このために、耳たぶに穴まで空けたのよ? とっても痛かったわ?」
「すいません」
「しかし、やはりあの情報屋はインチキであったな。十二歳の誕生日に、このピアスを付けた者は……。聖女に目覚めると」

当たり前だ。
もしそうなら、私の母がとっくに聖女になっているはずじゃないか。

あのピアスは、かつて私の一族に聖女となった人がいた……。
という、伝説を元にして、五世代前ほどから、受け継がれているだけのものだ。

実際はどうかなんて、わからない。
まして、そんなもののためだけに、村を焼き尽くし……。子供たちを奴隷として国に連れ去った。
……許せない。
言い表せないほどの激しい感情に、心が支配された。

「さて、ロベリア。君が呼び出された理由は、他にもあるのだよ。わかるかな?」
「わかりません」
「そうかいそうかい。しっかりと説明してあげるから、よ~く聞くんだよ」
「はい」
「一つ目の理由は、今話した通り、ミシェーラが聖女になれなかった責任を取ってもらうこと」

……私が、責任?
意味がわからない。そっちが勝手にやったことじゃないか。

「二つ目は……。別れの挨拶だ」

アーデンがそう言うと……。ドアが開き、棺桶が運ばれてきた。
あぁ。あそこに私が入るのだろう。

短い人生だった……。せめて最後に、母に感謝の想いだけでも伝えたかったが、どうやらそれも叶わないらしい。

「おい。ロベリアを棺桶の中が見える位置に」

アーデンの指示で、私は兵に体を持ち上げられた。

棺桶の中には……。

「……っ!?」

傷だらけになった、全裸の母が、横たわっていた。
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