一人の子供が聖女になり、聖女を引退するまでの物語。

冬吹せいら

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呼び出し

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「っ……」

また、いつもの悪夢を見た。

村で兵に捕まえられた私は、そのまま国に連れていかれ……。
奴隷として、働かされている。

「起きろ~! ゴミ共! 労働の時間だ!」

私たちに寝床なんてものは存在しない。
この鉱山から、出ることはできないのだ。

起きている間はずっと労働。
睡眠時間は、たったの三時間。

この固い岩の感触にも、もう慣れてしまった。

「よ~し。十八番のB。起きてるな」
「はい!」
「良い返事だ」

兵がやってきて、一人一人、起きているかを確認していく。
十八番のB……。それが今の、私の名前だ。

「十五番のF……。反応無し。おいお前、そいつを殴れ」
「は、はい!」

指示された奴隷が、目を覚まそうとしない、十五番のFの顔面を、思いっきり殴った。

――しかし、反応が無い。

「……運べ」
「はい!」

死体の処理すら、奴隷の仕事だ。
毎日、少なくとも十人程度は死ぬ。
私はここにきて、三か月程度経つけど……。まだなんとか、生きていた。

いつまで生きられるかなんて、わからないけど。

こうして、全員の状態を確認した後、労働が始まる。
斧で岩を砕き、台車に乗せ、運ぶ。
この作業を、一日続けるのだ。

気が狂いそうになる。だけど、体の動きを止めれば――。

「六番のC! こっちへ来い!」

呼び出され……。暴行を受ける。

男であれば、血を吐くまで殴られ、女であれば……。

「おい……。十八番のB。お前はよく働くなぁ」
「ありがとうございます!」

返事はいつも大声。そして丁寧な発音。
これを破れば、拷問を受ける。

ブクブクに太った、髭面の兵が、私の顔を覗き込んだ。
これで兵が務まるのか。そう疑いたくなるほどの、醜い体系。

内地で働く兵は、兵としての能力よりも……。
いかに、人の心を支配し、踏みにじるか。
それに長けているかどうかが、重要になる。

この太った兵は、女にだけ話しかけ、希望を持たせるようなことを言うのだ。
その反応を見て、楽しむ。最低の男。

「それだけ働ければ、きっと他にも仕事があるぜ~……?」
「ありがとうございます!」
「信じてれば、きっと道は開けるんだ」
「ありがとうございます!」
「……もっとも。俺は早く、お前みたいな可愛い女に脱落してもらいたいがな」
「……ありがとうございます!」

汚い息を私に吹きかけた後、太った兵は、次の女にターゲットを定めた。
……本当に気持ち悪い。憎悪で脳が破壊されてしまいそうだ。

――母は、無事なのだろうか。

私たちは子供だから、こうして労働する役割を担っている。
が、大人で、しかも女性。なおかつ、ここで働いていないということは……。

……考えても、仕方のないことだ。
私は今、自分が生きることで精一杯で、他のことに頭が回らない。

溢れる憎悪、怒りをエネルギーに変え、体を動かしているだけの、ただの人形だ。

「おい十八番のB! 呼び出しだ!」
「はい!」

……なぜ?
体の動きは止めていない。ミスもしていないはずなのに。

私は監視官の元に、駆け足で向かった。

「十八番のBです! お呼び出しいただき、ありがとうございます!」
「あぁ。お前に、王宮から呼び出しがかかっている」

……王宮から?
そんなパターンは、これまで聞いたことがない。

「命までは取られんだろうが……。まぁ、無事で帰って来いよ。お前は優秀だからな。他の奴隷の見本になる」
「はい!」
「よし。では、馬車に乗れ。民に奴隷の姿なんて、見せるわけにはいかんからな。絶対に顔を出すなよ……。いいな?」
「はい!」

私は手足を縛られ、馬車に乗せられた。

……まるで、ここに連れてこられた時のようだ。
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