一人の子供が聖女になり、聖女を引退するまでの物語。

冬吹せいら

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王子 バレット・オービリア

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「ほほ~。これはすごい。噂に聞いてはおったが、これまでとは」
「……」

私の祈りによる加護で、兵器が新品同様、ピカピカになった。
さらに、元々作りが甘い部分も、どうやらしっかり修正されたらしく、威力が上がったそうだ。
技術兵が、元気にそう報告してきた時は、呆れたものだ。



「ロベリア。生活は順調かぁ~?」

王室に入ってすぐ、アーデンが、そんな風に、呑気に喋りかけてきた。

「えぇ、おかげさまで」
「ふふふ。どうしても食料が足りなくなったら、言うがよい。残飯くらいは恵んでやろう」
「ありがとうございます」

私は素直に、感謝しておいた。
心に余裕ができたのかもしれない。
つまらなそうな顔をして、アーデンは玉座に座った。

「あぁ~。気に食わないわね。どうしてあなたが聖女なの?」

ミシェーラが、少し離れた位置から、文句を言ってくる。
昨日の件があるから、怖くて私に近づけないのだ。情けない。
だから私の方から、近づいてやる。

ミシェーラは、一瞬怯んだ様子を見せたが、なんとか威張るようにして、私を睨みつけた。

「なによ」
「いいえ? ミシェーラ様が、何か言いたい様子でしたので」
「そうよ。どうしてあなたが聖女なのって。だって、私の方が、ずっと気品があって美しいもの。そうでしょう? お父様」
「もちろんそうだとも。こんな田舎娘が聖女というのは、国の恥だが……。役目を終えれば、それでさようならだ。短い付き合いだが、仲良くしてやりなさい」
「無理ね。絶対嫌。こ~んな泥臭い女と仲良くするくらいなら、磔にされて、焼かれた方がマシよ」

二人が笑い合っている。
何がそんなに面白いんだろう。馬鹿らしい。

そんな風に思っていると、兵がやって来た。

「アーデン様。ボボリバエルの王子がお見えです」
「おお。通せ通せ」
「かしこまりました」

さっきまでアホのように、口を大きく開けていたミシェーラが、いきなり背筋を正した。
顔が少し、赤みを帯びているような気がする。

ボボリバエルは確か、少し離れた地にある大国だ。

「失礼します」

しばらくして、ボボリバエルの王子が現れた。
……なるほど、あのミシェーラが、背筋を伸ばす理由がわかる。

青色の瞳がとても綺麗な、金髪の、美しい王子だ。

「おや、そちらの方は……」
「バレット様ぁ!」
「おっと」

ミシェーラが、いきなり王子に抱き着いた。
この人は……。バレットという名前なのか。

「会いたかったですわ。バレット様」
「僕もです。相変わらずお元気ですね」
「お元気だなんて、そんな……。あっ、こちら、私の友人であり、聖女のロベリアですわ」

ミシェーラが腕を組んできた。
吐き気がしたが、大国の王子の前で、醜態を触すわけにはいかない。
私は話を合わせることにした。

「ロベリア・ハニーゴです。こんにちは」
「えぇ。僕はバレット・オービリアです。ミシェーラ様とは、幼いころからの知り合いでして……」
「そうなの!」

今度は私の腕をすり抜け、バレットの腕に抱き着く。
節操のない女だ……。

「私たちは、婚約しているのよ?」

……死体にキスをするような女と、婚約か。
せっかくのイケメン王子が、気の毒だ。

「……えぇ。そうなんです」

バレットの表情が、一瞬曇った気がした。

「では、私はお邪魔してもいけませんので、これにて失礼いたします」
「えぇ! またね!」

ミシェーラが、上品に手を振ってきた。
その違和感に、またしても吐きそうになりつつ、私は王宮を後にした。
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