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バレットの想い
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「お姉ちゃん」
「……」
「お姉ちゃんって」
「……あ、うん」
「どこ見てるの」
「どこかな……」
牢獄に捉えられてからというもの、まともな思考ができていない。
食事は与えてもらえる。マリッカとの会話も許されている。
それでも、頭の中に鉛が入ってしまったかのように、何もできなくなっていた。
「ごめんね。気が付いていたんだから、もっと早く言うべきだった」
「ううん……。マリッカは何も悪くないの」
私が、調子に乗っていたのだ。
聖女の力を手に入れ……。何でもできるような気がしていた。
国と戦うつもりなんて無かった。圧倒的な力の差を見せつけて……。ただ、謝ってほしかっただけだ。
アーデンも、ミシェーラも死んでしまった。
一度も謝罪することなく……。
「失礼」
ドアが開き、バレット様が姿を現した。
見張りの兵に合図をして、退出させる。
「……どこか、悪いところは?」
「悪いところだらけに決まってる。早く私たちを解放して」
「君は六歳らしいな……。それだけ利口に会話ができるのは、スキルのおかげか?」
「だったら何?」
「……だったら、今、私が考えていることが、わかるかもしれない」
「……」
マリッカの表情が、少し緩んだ。
「……正気?」
「やっぱりわかるのか」
「わかるけど、ありえない」
「そうだろう?」
私を置いてけぼりにして、会話が進んでいる。
それを察してか、バレット様が、こちらに顔を向けてくれた。
相変わらず、端正な顔立ちをしている。
「私は……。国家への反逆を企てている」
「えっ……」
信じられない。
そんなことをするような人には、全く見えないのだ。
「そもそも子供たちを、スパイとはいえ、奴隷として他国に送り込むこと自体、私は反対したんだ。それに、元はミシェーラ様と結婚し、平和的に資源を分けていただく予定だったのに……」
「それが、ロベリアの存在で、一気に方向転換したと」
「……そうだ」
バレット様が、拳を握りしめた。
「私は、誰一人血を流さない国を作りたかった。なのに、力不足で……」
「……本当に泣いてる」
「バレット様……」
「……都合の良いことだとはわかっている。だが、もし君たちが力を貸してくれるなら。私は国家に立ち向かいたい」
「そんなっ……」
「良いんじゃない?」
「マリッカ……?」
立ち向かうだなんて……。
私たちにできることなんて、あるのだろうか。
もはや、戦う異議すら無いのに。
「多分だけど、このままここにいたら、あの子供たちが、私たちを殺しに来るよ。それでそのまま……。国家を乗っ取るだろうね」
つまり……。今、この国は、三つに分かれてしまっているということか。
国王。バレット様。そして、子供たち……。
「あの子たちのスキルは、祈りで認定したものだから、ロベリアなら取り消せるでしょ?」
「……できる」
「これで子供たちを無力化。あとは、国にどうやって勝つかだけど」
「……私に、作戦がある」
「わかるよ。子供たちに国を乗っ取らせてから、力を奪えって言うんでしょ?」
「……すごいな」
バレット様が、自嘲気味に笑った。
「君のスキルが、一番協力なのかもしれない」
「そんなことない。一番すごいのは、ロベリアだから」
「私はただ……」
「ロベリア」
バレット様に、腕を握られた。
突然だったので、驚いてしまい、体を震わせてしまった。
「すまない。だが……。私の目を見てくれ」
「……はい」
「私は、君たちと一緒に、平和な国を作りたい。誰も嘆かず、誰も死なない、理想的な国家を……」
「……理想論だけど、気持ちは本物」
マリッカが呆れている。
バレット様の言っていることは、私でも、難しいとわかったけれど……。
……信じてみよう。そう思えるくらいの熱は感じられた。
「……わかりました。協力します」
「……ありがとう」
バレット様の手に、より力が籠った。
「……」
「お姉ちゃんって」
「……あ、うん」
「どこ見てるの」
「どこかな……」
牢獄に捉えられてからというもの、まともな思考ができていない。
食事は与えてもらえる。マリッカとの会話も許されている。
それでも、頭の中に鉛が入ってしまったかのように、何もできなくなっていた。
「ごめんね。気が付いていたんだから、もっと早く言うべきだった」
「ううん……。マリッカは何も悪くないの」
私が、調子に乗っていたのだ。
聖女の力を手に入れ……。何でもできるような気がしていた。
国と戦うつもりなんて無かった。圧倒的な力の差を見せつけて……。ただ、謝ってほしかっただけだ。
アーデンも、ミシェーラも死んでしまった。
一度も謝罪することなく……。
「失礼」
ドアが開き、バレット様が姿を現した。
見張りの兵に合図をして、退出させる。
「……どこか、悪いところは?」
「悪いところだらけに決まってる。早く私たちを解放して」
「君は六歳らしいな……。それだけ利口に会話ができるのは、スキルのおかげか?」
「だったら何?」
「……だったら、今、私が考えていることが、わかるかもしれない」
「……」
マリッカの表情が、少し緩んだ。
「……正気?」
「やっぱりわかるのか」
「わかるけど、ありえない」
「そうだろう?」
私を置いてけぼりにして、会話が進んでいる。
それを察してか、バレット様が、こちらに顔を向けてくれた。
相変わらず、端正な顔立ちをしている。
「私は……。国家への反逆を企てている」
「えっ……」
信じられない。
そんなことをするような人には、全く見えないのだ。
「そもそも子供たちを、スパイとはいえ、奴隷として他国に送り込むこと自体、私は反対したんだ。それに、元はミシェーラ様と結婚し、平和的に資源を分けていただく予定だったのに……」
「それが、ロベリアの存在で、一気に方向転換したと」
「……そうだ」
バレット様が、拳を握りしめた。
「私は、誰一人血を流さない国を作りたかった。なのに、力不足で……」
「……本当に泣いてる」
「バレット様……」
「……都合の良いことだとはわかっている。だが、もし君たちが力を貸してくれるなら。私は国家に立ち向かいたい」
「そんなっ……」
「良いんじゃない?」
「マリッカ……?」
立ち向かうだなんて……。
私たちにできることなんて、あるのだろうか。
もはや、戦う異議すら無いのに。
「多分だけど、このままここにいたら、あの子供たちが、私たちを殺しに来るよ。それでそのまま……。国家を乗っ取るだろうね」
つまり……。今、この国は、三つに分かれてしまっているということか。
国王。バレット様。そして、子供たち……。
「あの子たちのスキルは、祈りで認定したものだから、ロベリアなら取り消せるでしょ?」
「……できる」
「これで子供たちを無力化。あとは、国にどうやって勝つかだけど」
「……私に、作戦がある」
「わかるよ。子供たちに国を乗っ取らせてから、力を奪えって言うんでしょ?」
「……すごいな」
バレット様が、自嘲気味に笑った。
「君のスキルが、一番協力なのかもしれない」
「そんなことない。一番すごいのは、ロベリアだから」
「私はただ……」
「ロベリア」
バレット様に、腕を握られた。
突然だったので、驚いてしまい、体を震わせてしまった。
「すまない。だが……。私の目を見てくれ」
「……はい」
「私は、君たちと一緒に、平和な国を作りたい。誰も嘆かず、誰も死なない、理想的な国家を……」
「……理想論だけど、気持ちは本物」
マリッカが呆れている。
バレット様の言っていることは、私でも、難しいとわかったけれど……。
……信じてみよう。そう思えるくらいの熱は感じられた。
「……わかりました。協力します」
「……ありがとう」
バレット様の手に、より力が籠った。
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