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勝利
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「酷い……」
バレット様に連れられ、数日ぶりに地上に出た私たち。
ボボリバエルと言えば、水の都と呼ばれるほど、美しい国であったはずなのに。
そこら中に、酷い損傷を負った、兵や民の死体が倒れている。
水は濁っているし、ほとんどの建物が崩壊していた。
特に王宮は――。跡形も無くなっている。
「あれ~? なんでバレット様が生きてんの?」
この声は……。ベレン?
振り返ると、随分人相の変わったベレンが、銃をこちらに向けて構えていた。
「おかしいわね。殺したはずなのに」
その横にいるのは、アリッサだ。
彼女もまた……。まるで、ミシェーラのような、悪どい表情を浮かべている。
「って、ロベリアもいるじゃない。久しぶりね」
「ロベリア! 見てよこれ! 綺麗になったでしょ?」
「ベレン……。あなたは、こんな残酷なことをする子じゃなかったのに」
「……ロベリアに、僕の何がわかるのさ」
……その通りだ。
私は彼らのことを、何も理解してなかった。
「あ~あ。シラけちゃうなぁ。せっかく国を綺麗にして、これから僕たちだけの王国を作っていこうと思ったのに。邪魔者がまだ残ってた」
「ベレン。焼き払っちゃいましょうよ。アレを使って」
「……そうだね。僕たちが直接殺すのは、さすがに嫌だし。これでも一応、少しの間だけど、一緒に過ごした仲だからさ」
ベレンが合図をすると……。巨大な人型の兵器が、こちらに向かってきた。
……こんなものまで、作れるようになったんだ。
「どうする? 奴隷で良いなら、生き残らせてあげるよ」
「あっ、もちろん、あの時みたいに、寝る間も無く働いてもらうわよ?」
「さぁ。選ぶんだロベリア。ここでハチの巣になるか、またあの時みたいに、楽しく労働するか!」
……変わってしまった。
私が、能力を与えたせいで。
「……お姉ちゃん。早く」
マリッカに、腕を強く握られた。
私は、祈りを――解いた。
すると、人型の兵器が、急に力を失い、その場に倒れる。
風で吹き飛ばされそうになったところを、バレット様が守ってくれた。
「な、なんで……」
「嘘。私の建築スキルが……。なくなってる!?」
二人が困惑している。
作ったはずの武器も、兵器も、まるで泡のように消えてしまった。
そして、彼らの着ていた服も、ボロボロになる。
「嫌、嫌よ……。なんで?」
異変を感じた子供たちが、続々と集まってくる。
みんな、恐怖に満ちた表情を浮かべていた。
当たり前のようにできていたことが、急に全くできなくなる。
それがどれだけ恐ろしいことか……。
「……聞きなさい。子供たちよ」
バレット様が、子供たちの元へ向かう。
「ひいっ。ご、ごめんなさい」
「安心しなさい。君たちは……。悪いが、他の国に行ってもらう」
「他の国……?」
「……あぁ」
バレット様と一緒に避難して、生き残っていた兵たちが、子供たちを馬車に詰め込んでいく。
彼らはきっと――。次こそは、奴隷として、生涯を終えるのだろう。
泣き声が、徐々に遠くなっていく。
「バレット。ここからどうやって、平和な国を作るつもりなの」
「……まずは、生きている人を探す」
「それで?」
「片づけをして……」
「……私は、未来の話をしてるんだけど」
「……」
バレット様が、俯いてしまった。
それを見て、マリッカがため息をついた。
「正義感だけしかないのに。よくここまで生きてこられたね」
「運が良いんだろうな」
「ロベリア。どうする?」
「えっ……?」
初めて、お姉ちゃんではなく、ロベリアと呼ばれた。
「あなたの意思を訊きたい。このイケメン王子と一緒に、ここで一旦落ち着くか。それとも、私と一緒に、あての無い旅をするか――」
もう、マリッカは、六歳の子供ではないのだ。
私よりも、ずっと周りが見えている。
私の意思は――。
バレット様に連れられ、数日ぶりに地上に出た私たち。
ボボリバエルと言えば、水の都と呼ばれるほど、美しい国であったはずなのに。
そこら中に、酷い損傷を負った、兵や民の死体が倒れている。
水は濁っているし、ほとんどの建物が崩壊していた。
特に王宮は――。跡形も無くなっている。
「あれ~? なんでバレット様が生きてんの?」
この声は……。ベレン?
振り返ると、随分人相の変わったベレンが、銃をこちらに向けて構えていた。
「おかしいわね。殺したはずなのに」
その横にいるのは、アリッサだ。
彼女もまた……。まるで、ミシェーラのような、悪どい表情を浮かべている。
「って、ロベリアもいるじゃない。久しぶりね」
「ロベリア! 見てよこれ! 綺麗になったでしょ?」
「ベレン……。あなたは、こんな残酷なことをする子じゃなかったのに」
「……ロベリアに、僕の何がわかるのさ」
……その通りだ。
私は彼らのことを、何も理解してなかった。
「あ~あ。シラけちゃうなぁ。せっかく国を綺麗にして、これから僕たちだけの王国を作っていこうと思ったのに。邪魔者がまだ残ってた」
「ベレン。焼き払っちゃいましょうよ。アレを使って」
「……そうだね。僕たちが直接殺すのは、さすがに嫌だし。これでも一応、少しの間だけど、一緒に過ごした仲だからさ」
ベレンが合図をすると……。巨大な人型の兵器が、こちらに向かってきた。
……こんなものまで、作れるようになったんだ。
「どうする? 奴隷で良いなら、生き残らせてあげるよ」
「あっ、もちろん、あの時みたいに、寝る間も無く働いてもらうわよ?」
「さぁ。選ぶんだロベリア。ここでハチの巣になるか、またあの時みたいに、楽しく労働するか!」
……変わってしまった。
私が、能力を与えたせいで。
「……お姉ちゃん。早く」
マリッカに、腕を強く握られた。
私は、祈りを――解いた。
すると、人型の兵器が、急に力を失い、その場に倒れる。
風で吹き飛ばされそうになったところを、バレット様が守ってくれた。
「な、なんで……」
「嘘。私の建築スキルが……。なくなってる!?」
二人が困惑している。
作ったはずの武器も、兵器も、まるで泡のように消えてしまった。
そして、彼らの着ていた服も、ボロボロになる。
「嫌、嫌よ……。なんで?」
異変を感じた子供たちが、続々と集まってくる。
みんな、恐怖に満ちた表情を浮かべていた。
当たり前のようにできていたことが、急に全くできなくなる。
それがどれだけ恐ろしいことか……。
「……聞きなさい。子供たちよ」
バレット様が、子供たちの元へ向かう。
「ひいっ。ご、ごめんなさい」
「安心しなさい。君たちは……。悪いが、他の国に行ってもらう」
「他の国……?」
「……あぁ」
バレット様と一緒に避難して、生き残っていた兵たちが、子供たちを馬車に詰め込んでいく。
彼らはきっと――。次こそは、奴隷として、生涯を終えるのだろう。
泣き声が、徐々に遠くなっていく。
「バレット。ここからどうやって、平和な国を作るつもりなの」
「……まずは、生きている人を探す」
「それで?」
「片づけをして……」
「……私は、未来の話をしてるんだけど」
「……」
バレット様が、俯いてしまった。
それを見て、マリッカがため息をついた。
「正義感だけしかないのに。よくここまで生きてこられたね」
「運が良いんだろうな」
「ロベリア。どうする?」
「えっ……?」
初めて、お姉ちゃんではなく、ロベリアと呼ばれた。
「あなたの意思を訊きたい。このイケメン王子と一緒に、ここで一旦落ち着くか。それとも、私と一緒に、あての無い旅をするか――」
もう、マリッカは、六歳の子供ではないのだ。
私よりも、ずっと周りが見えている。
私の意思は――。
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