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長女 フレイア
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部屋に戻り、すぐに片づけを始めたが、やはり急だったこともあってか、なかなか進んでいかない。
一旦休憩が必要だと思い、私は庭を訪れた。
花の香りが、荒んだ心を癒してくれる……。
ここへ来たばかりの時、この庭は、完全に放置されていた。
長年勤めていた侍女が辞めた後は、誰も庭の手入れをすることなく、やがて花は枯れ、土だけが残ってしまったのだとか。
そこに私が、コツコツと花を植え、育てていた。
……私がここを出た後には、全て枯れてしまうのだろうな。
「あらぁ? 哀れな女の姿が見えるわねぇ」
……最悪な声が、後ろから聞こえた。
私は振り返らずに、答える。
「こんにちはフレイア。随分機嫌が良さそうね」
「……フレイア様、でしょう?もう私は、あなたとはどんな関係でもないのだから」
「失礼しました。フレイア様」
私が十六歳、フレイアが十四歳。
婚約者の妹であれば、フランクな物言いが許される関係性ではあった。
しかし、今の私は、ただの男爵令嬢に逆戻りしている。フレイアの言い分は正しいが、あまりに話が早すぎるだろうとも思う。
「あぁ臭い。やっとこの花を抜くことができるのね」
「……抜く?」
「そうよ。毎日毎日嫌だったの。ここを通るたびに、フワッと青臭い匂いがするのよね……。ここは王宮なのに、全く品が無いわ」
その匂いこそが、花の良い部分なのに……。どうしてわからないんだ。
これで聖女を名乗っているのだから、聞いて呆れる。
その聖女の肩書も、私のスキルのおかげで付与されただけ。もちろんフレイアは、そんなこと知らない。
……こんな性格じゃ、剥奪されるのも、時間の問題だと思う。
「そうだわ。明日、レオノンが帰ってくるから、魔法の造花に替えてもらえばいいのよ! 我ながら名案だと思うわ!」
「……」
「その不満そうな顔はなに?」
「……別に」
「生意気な態度ね!」
フレイアが、いきなり頬をひっぱたいてきた。
「……今までは、この花だって、悪趣味な置物だって、口うるさい性格だって、全部お兄様の婚約者だから、我慢してきたのよ。ただのちっぽけな家の娘に、生意気されちゃあ、私だって、プライドが許さないわ」
「……申し訳ございません」
トラブルになるのは面倒だ。ここは大人しく謝っておこう。
……それにしても、人を叩く聖女なんて、私は聞いたことがない。
「では、私は戻りますので」
「えぇえぇ戻りなさい。あなたの顔なんて、二度と見たくないわ。この王宮にいることすら汚らわしいもの。早く明日にならないかしらね!」
私も同感だ。初めて彼女と意見があったかもしれない。
一旦休憩が必要だと思い、私は庭を訪れた。
花の香りが、荒んだ心を癒してくれる……。
ここへ来たばかりの時、この庭は、完全に放置されていた。
長年勤めていた侍女が辞めた後は、誰も庭の手入れをすることなく、やがて花は枯れ、土だけが残ってしまったのだとか。
そこに私が、コツコツと花を植え、育てていた。
……私がここを出た後には、全て枯れてしまうのだろうな。
「あらぁ? 哀れな女の姿が見えるわねぇ」
……最悪な声が、後ろから聞こえた。
私は振り返らずに、答える。
「こんにちはフレイア。随分機嫌が良さそうね」
「……フレイア様、でしょう?もう私は、あなたとはどんな関係でもないのだから」
「失礼しました。フレイア様」
私が十六歳、フレイアが十四歳。
婚約者の妹であれば、フランクな物言いが許される関係性ではあった。
しかし、今の私は、ただの男爵令嬢に逆戻りしている。フレイアの言い分は正しいが、あまりに話が早すぎるだろうとも思う。
「あぁ臭い。やっとこの花を抜くことができるのね」
「……抜く?」
「そうよ。毎日毎日嫌だったの。ここを通るたびに、フワッと青臭い匂いがするのよね……。ここは王宮なのに、全く品が無いわ」
その匂いこそが、花の良い部分なのに……。どうしてわからないんだ。
これで聖女を名乗っているのだから、聞いて呆れる。
その聖女の肩書も、私のスキルのおかげで付与されただけ。もちろんフレイアは、そんなこと知らない。
……こんな性格じゃ、剥奪されるのも、時間の問題だと思う。
「そうだわ。明日、レオノンが帰ってくるから、魔法の造花に替えてもらえばいいのよ! 我ながら名案だと思うわ!」
「……」
「その不満そうな顔はなに?」
「……別に」
「生意気な態度ね!」
フレイアが、いきなり頬をひっぱたいてきた。
「……今までは、この花だって、悪趣味な置物だって、口うるさい性格だって、全部お兄様の婚約者だから、我慢してきたのよ。ただのちっぽけな家の娘に、生意気されちゃあ、私だって、プライドが許さないわ」
「……申し訳ございません」
トラブルになるのは面倒だ。ここは大人しく謝っておこう。
……それにしても、人を叩く聖女なんて、私は聞いたことがない。
「では、私は戻りますので」
「えぇえぇ戻りなさい。あなたの顔なんて、二度と見たくないわ。この王宮にいることすら汚らわしいもの。早く明日にならないかしらね!」
私も同感だ。初めて彼女と意見があったかもしれない。
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