あなたが剣神になれたのは私のおかげなのに、全く気付いてないんですね。

冬吹せいら

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次女 レオノン

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翌日、朝食だけは用意してやると言われていたので、ずうずうしく食べにきてやった。
悔しいが、もう二度と食べられないかもしれない食材が、たくさん使用されている。食べないと損だし、これまでのこの国への貢献度を考えれば、決して高い褒美ではない。

まだ朝早いので、食堂には誰もいなかった。
食事を運んでくれた、仲の良い侍女と挨拶して、別れを惜しんだ。

さっさと食べて、早く国に帰ろう……。そう思っていたのに――。

「おはよーベネット!」

……レオノンに捕まってしまった。
どたばたと、やかましい足音を立てながら、私の隣に腰かけた。

「さっきね? 帰ってきたの!」
「……そうですか」
「あれ~? ベネット元気無い! なんで?」

レオノンは、まだ九歳だ。
説明したって、理解できないだろう。
が、適当にはぐらかしたところで、ベネットが虐めた~! なんて叫ばれたら面倒だ。一応説明しておくことにする。

「私は、体調が悪いので、国に帰ることになったのです」
「ほんと!? やった~! ベネットうるさいから、いなくなってくれて良かった!」

……悪気は無いと信じたい。
多分、私が三日四日で、すぐに帰ってくると思っているのだろう。

「ねぇねぇベネット! 私、賢者になったんだよ?」
「知ってます」
「なんで~!? 私まだ、ベネットに教えてないのに!」

馬鹿だな……。会話してるだけで疲れてしまう。
あれやこれや、構えとうるさいくせに、ちょっと注意すると泣いて、ミゲル様に陰口を叩く……。きっと将来は、わがままな姫になるだろうなと思うと、うんざりだった。

……もっとも、この国に、将来があるのかどうか、私にはわからないけれど。

「何食べてるの? 私も食べたい! っていうかそれ全部ちょうだい?」
「きっとレオノン様の分も、用意してありますよ」
「えぇ~めんどくさい! これがいいの! ダメって言うなら、ここで火炎魔法を唱えて、びっくりさせちゃうよ!?」
「わかりました。どうぞお食べください」
「やった~!」

レオノンもまた……。私の固有スキル『精霊の加護』によって、特別職を手に入れた一人だ。

ミゲルは剣神。フレイアは聖女。レオノンは賢者……。

私がこのスキルに目覚めたのは、ちょうどこの王宮での暮らしが始まってすぐのことだ。

……もし、国にいる時に目覚めていれば。
そう何度も思ったが、もう帰ることができるので、問題無い。晴れやかな気分だ。

「それではレオノン様。お元気で」
「うん! またね!」

またね……か。
やっぱり理解してないんだ。このお馬鹿さんは。
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