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最強の魔法使い
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「はぁ? なんで私が謝らないといけないのよ」
「あのヒョロヒョロ男が悪いんじゃない」
「隣国の伯爵令息様はね? とっても男らしくて最高なの」
「だいたい子爵家如きが調子に乗るんじゃないわよ」
「さっさと出て行って。話は終わりよ」
「言っておくけど復讐だなんて考えないでね。騒ぎになるんだから」
「問題が起きたら家ごと潰すわよ」
翌日、クレセンド家を訪れ、マーシャと顔を合わせたハナンは……。
これらの言葉を投げつけられ、復讐を決意した。
「あぁそうだ。あなたの家は、奴隷足りてる?」
「……奴隷?」
「そう奴隷! ちょ~っと遠くの国なんだけどね? 武器で脅せばなんでも言うことを聞く、弱っちぃ村人の住む集落を見つけたのよ。ほら私の家って、武器の製造を主に受け持っているじゃない? 工場を動かすためには奴隷が必要で――」
そこまで聞いて、ハナンは部屋を出た。
……ごめんねレイダー。
きっと、こいつへの復讐は、社会のためになるから。
ハナンは、レイダーとの約束を破る決意をした。
◇
ハナンは優秀な魔法使いだ。
いずれ歴史に名を残すだろう。親族にはそう言われていた。
しかし、できれば自分は目立ちたくない。
弟を有名にしたいという意思があった。
だから、自分の実力を、親族以外の人間には、あまり見せないように心がけてきたのだ。
つまり……。
世界最強ともなりうるであろう、大魔導士を、クレセンド家は敵に回したことになる。
ハナンはクレセンド家を出た後、さっそく件の村へと向かった。
するとそこには、既にクレセンド家の人間に雇われたと思わしき、ガラの悪い男たちが、大勢集まっていた。
「あぁん? 誰だてめぇ」
長い帽子は、魔法使いの証。
そんなことも知らないほど、知識の無い男たちらしい。
「誰だって聞いてんだよ!!!」
殴りかかってきた男を杖で軽く吹き飛ばす。
どうやら、魔法を使うまでもなさそうだ。
一人では敵わないと気が付いたのか、今度は三人まとめて殴りかかってきた。
あっさりと、杖を振り回し撃退する。
「な、なんだこいつ……。つえぇぞ……」
地面に這いつくばる男たち。
「……情けねぇぞぉ。てめぇらぁ」
「ボ、ボス……」
ボスと呼ばれた男は、身長が二メートルほどある。
筋肉が異常に発達しており……。威圧感たっぷりにハナンを見降ろした。
さすがに、こいつを杖だけで倒すのは不可能だ。
ハナンは、得意の土魔法を使うことにした。
「どっからでもかかってきなさい」
「なんだとぉ……?」
知能の低い男は、挑発に乗りやすい。
ハナンに向かって、突進してきた。
土魔法で、男の足元の地面を緩ませる。
「な、ぐっ……」
沼のようになった地面に、男が引きずり込まれて行く。
「やめっ、しっ……」
首元まで埋まり、生首のような状態になったところで、地面を元の状態に戻した。
「こんにちは。気分はどう?」
「た、助けてくれぇ! 俺たちゃ雇われ人だぁ!」
「雇われ人だったら、村を襲ってもいいの? 私みたいな女の子に、寄ってたかって殴りかかっていいの?」
「悪かったよぉ! 命だけはぁ!」
「……しばらくそこで反省してなさい。二日もすれば魔法が解けて、抜け出せると思うわ」
ハナンは、村人たちに付けられていた手枷を外した。
「ありがとうございます。本当になんとお礼を言ってよいか……」
「周りの村にも警告して。クレセンド家は奴隷を欲しがってるから」
「わかりました。気を付けます」
村人に手を振り、ハナンは街へと戻った。
「あのヒョロヒョロ男が悪いんじゃない」
「隣国の伯爵令息様はね? とっても男らしくて最高なの」
「だいたい子爵家如きが調子に乗るんじゃないわよ」
「さっさと出て行って。話は終わりよ」
「言っておくけど復讐だなんて考えないでね。騒ぎになるんだから」
「問題が起きたら家ごと潰すわよ」
翌日、クレセンド家を訪れ、マーシャと顔を合わせたハナンは……。
これらの言葉を投げつけられ、復讐を決意した。
「あぁそうだ。あなたの家は、奴隷足りてる?」
「……奴隷?」
「そう奴隷! ちょ~っと遠くの国なんだけどね? 武器で脅せばなんでも言うことを聞く、弱っちぃ村人の住む集落を見つけたのよ。ほら私の家って、武器の製造を主に受け持っているじゃない? 工場を動かすためには奴隷が必要で――」
そこまで聞いて、ハナンは部屋を出た。
……ごめんねレイダー。
きっと、こいつへの復讐は、社会のためになるから。
ハナンは、レイダーとの約束を破る決意をした。
◇
ハナンは優秀な魔法使いだ。
いずれ歴史に名を残すだろう。親族にはそう言われていた。
しかし、できれば自分は目立ちたくない。
弟を有名にしたいという意思があった。
だから、自分の実力を、親族以外の人間には、あまり見せないように心がけてきたのだ。
つまり……。
世界最強ともなりうるであろう、大魔導士を、クレセンド家は敵に回したことになる。
ハナンはクレセンド家を出た後、さっそく件の村へと向かった。
するとそこには、既にクレセンド家の人間に雇われたと思わしき、ガラの悪い男たちが、大勢集まっていた。
「あぁん? 誰だてめぇ」
長い帽子は、魔法使いの証。
そんなことも知らないほど、知識の無い男たちらしい。
「誰だって聞いてんだよ!!!」
殴りかかってきた男を杖で軽く吹き飛ばす。
どうやら、魔法を使うまでもなさそうだ。
一人では敵わないと気が付いたのか、今度は三人まとめて殴りかかってきた。
あっさりと、杖を振り回し撃退する。
「な、なんだこいつ……。つえぇぞ……」
地面に這いつくばる男たち。
「……情けねぇぞぉ。てめぇらぁ」
「ボ、ボス……」
ボスと呼ばれた男は、身長が二メートルほどある。
筋肉が異常に発達しており……。威圧感たっぷりにハナンを見降ろした。
さすがに、こいつを杖だけで倒すのは不可能だ。
ハナンは、得意の土魔法を使うことにした。
「どっからでもかかってきなさい」
「なんだとぉ……?」
知能の低い男は、挑発に乗りやすい。
ハナンに向かって、突進してきた。
土魔法で、男の足元の地面を緩ませる。
「な、ぐっ……」
沼のようになった地面に、男が引きずり込まれて行く。
「やめっ、しっ……」
首元まで埋まり、生首のような状態になったところで、地面を元の状態に戻した。
「こんにちは。気分はどう?」
「た、助けてくれぇ! 俺たちゃ雇われ人だぁ!」
「雇われ人だったら、村を襲ってもいいの? 私みたいな女の子に、寄ってたかって殴りかかっていいの?」
「悪かったよぉ! 命だけはぁ!」
「……しばらくそこで反省してなさい。二日もすれば魔法が解けて、抜け出せると思うわ」
ハナンは、村人たちに付けられていた手枷を外した。
「ありがとうございます。本当になんとお礼を言ってよいか……」
「周りの村にも警告して。クレセンド家は奴隷を欲しがってるから」
「わかりました。気を付けます」
村人に手を振り、ハナンは街へと戻った。
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