魔王の息子に恋したので、私は悪役令嬢になって、この国を追放してもらおうと思います!

冬吹せいら

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結婚のために

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後日、私はヴィルディ様とベリーヌを連れて……。自分の国を訪れました。

ヴィルディに傷を一つでも負わせたら、婚約は認めない。そう魔王と約束して、今回特別に、連れ出すことに成功したのです。

「……レンフィア様。本当に、その作戦は、うまくいくのですか?」
「当たり前です。ね?ヴィルディ様」
「ぼ、僕ですか?」
「はい。でも、ヴィルディ様は何もしなくていいです。ただ私と手を繋ぎ、心を通わせてくれればそれで……」

二人は何とも言えない表情をしています。

「こんにちは。私はレンフィア・コーコランです」
「……あなたは、国外追放されたはずでは?」
「そうですよ?」
「でしたら、この門を通すわけにはいきません」
「えいっ」

私は門番さんのおでこに、軽く触れました。相手をすぐに眠らせる魔法です。

二人と一緒に、城へ向かいます。当然城の前にも門番がいますが、それも同じ要領で眠らせ、城の中へ……。向かう先は、ジナルド王子の部屋です。

「ジナルド様。こちらにいらっしゃいますか?」
「はいはい……。どちらさっ……」

ドアを開けたジラルド様が、信じられないと言ったような表情をしています。

「こちらは私の将来の夫、ヴィルディ様です。そしてこちらは、メイドのべリーヌ」
「……何をしに来たのだ。他の兵は?」
「みんな眠らせました。街では少々パニックが起こっております。王に挨拶をしている暇はありません。第一王子であり、なおかつ兵を率いる存在でもあるあなたに、お願いがあって、参りました」
「お願い?」
「はい。簡単な話です。他国との争いは、今後一切やめてください」
「……なぜ?」
「ヴィルディ様と婚約するための条件に、いずれ人間が魔王の城に攻め入った時、その人間を殺すことができるか……。というものが含まれておりました。ですが、私は人殺しなどできません」

これでも一応、妹のクレシアが聖女となることが決まるまでは、同じように、かなり道徳的な授業をきちんと受けていたのです。今更考えを変えるのは、とても難しいことでした。

「なので、私は考えました。人間どうしが争わなければ、当然その手が魔族に及ぶこともない。世界は平和になるでしょう」
「しかし、争いをやめれば、領土が手に入らない。物も不足する。民に貧乏生活を強いれと?」
「いいえ。戦のために使っていた費用を、もっと他の部分に回せば、生活はきっと豊かになります。作物を育てる魔法の研究に、国の優秀な魔法部隊を充てることもできますから、すぐに国は潤うようになるでしょう」
「その間に攻められたらどうするのだ」
「そこで、私たちの出番というわけです」

私はヴィルディ様の頭を撫でました。
ちょっと顔が赤くなっていて、可愛いです。

「彼と、私の魔力を共鳴させ……。最上位の黒魔法、デリザードを使います」
「デリザード……?」
「はい。これを唱えれば、一つの国から、武器は全て消失し、なおかつ攻撃に該当する魔法を一切使えなくなります」
「……そのようなことが?」
「できます。きっと。これをあらゆる国で唱えて、争いを止めるのです」
「信用できない。君はやはり魔族に」
「ジナルド様。……信じてください。私はヴィルディ様を、心から愛しています」
「婚約者の前で、別の男を好いているなど……」

ジナルド様が、ため息をつきました。
そして、ヴィルディ様に目を向けました。

「……魔王の息子とやら。あなたは本当に、彼女を幸せにできるのか?」
「……してみせます」

ヴィルディ様……!
心が、通じ合ったのでしょうか。

「ここ何日か、レンフィア様と過ごして、このお方の愛を、存分に受けさせていただきました……。思いは本物です。そして僕の気持ちも……。はい」
「ははっ。そうかそうか……」
「ジナルド様。了承していただけますか」
「……勝手にやればよかったのに。どうしてわざわざ、僕に報告を?」
「……国を出る時、何も残さなかったことが、ずっと心残りだったのです。あなたのことは、一度足りとも好きになることはありませんでしたが……。あまりに不義理だと」
「レンフィア。あまりはっきり、一度足りとも好きになることはなかったとか、言わないでくれ」
「事実ですから」
「……」

少しの沈黙の後、

「……いいさ。僕はどうなっても知らないよ。そのまま世界を支配してくれ」

そう言い残して、ドアを閉めました。

「……では、行きましょうか」

二人が無言で頷きました。

――世界を平和にする旅が、今始まったのです。
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