弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

文字の大きさ
2 / 16

罰金……?

「山に向かう途中で、ブレッザ家とすれ違ったんだ」

ブレッザ家は、この街を支配している貴族だ。

一年前、突如引っ越してきてから、勝手に様々な街のルールを作り始めた、勝手な奴らで、町民全員から嫌われている。

「そこで、令嬢のセレノー様に、挨拶をしたんだけど……。どうやら、僕の態度が気に食わなかったみたいでね。この有様だ」
「……意味がわからないわ。挨拶をしただけでしょう?」
「多分、ムカついていたんだと思うよ。最近、色々上手くいってないみたいだし」
「それで……。ここまで酷い目に、遭わされないといけないの?」
「ははっ……。運が悪かったね」
「そんな話で済ませてはダメよ!」

キリアは優しすぎる!

こんなの……。許されるわけがない。

私の怒りを、まるで宥めるかのように、キリアは穏やかな表情を浮かべていた。

「でも、この傷が、姉さんの回復魔法の練習の材料に、なってくれればいいかなぁって……」
「キリア。よく考えなさい。あなた、顔面に傷を負わされているのよ? もしかしたら、完全には治らないかもしれない。跡が残ってしまうかもしれない。それに……。当たりどころが悪ければ、あなたは死んでいたかもしれないの。仕方ないで済ませていいはずがないでしょう?」
「……もちろん、それだけだったら、僕もさすがに、何かしら行動を起こしたかもしれない」
「え……?」
「もう一つ、複雑な事情が、絡んでしまって……」

キリアが、服のポケットから、ボロボロの紙を、一枚取り出した。

「……なによ、これ」

その内容に、私は愕然とする。

『キリア・モルバレスは、セレノー・ブラッザに怪我を負わせたので、ここに罰金を命ずる』

「どうして……? 怪我をさせられたのは、キリアの方じゃない」
「彼女を守っていた、大柄の男数人に、まず僕は殴られた。そこへ……。セレノー様がやってきて、僕の顔を切りつけたんだ」
「なんでよ。全然意味がわからないわ」
「……これも同じ理由さ。ムシャクシャしてて、たまたまそこに、ナイフがあった。それだけの話だよ」

どうしてそんなに、穏やかに語ることができるの……?

「その時、バランスを崩したらしくてね。セレノー様は、足をくじいてしまったらしい」
「そんなの、自分の責任じゃ……」
「……この街では、ブレッザ家の言うことは絶対だから」
「……ありえないわ。こんなこと。私が今すぐ抗議に――」
「それだけはやめてくれ」

キリアに、腕を強く掴まれた。

一度だって、喧嘩したことない私たち。

いきなり、キリアの男としての強い部分を見せつけられて、私は怯んだ。

「は、離して」
「じゃあ、座ってくれ」
「わかったから……。痛いのよ」
「ごめん……」

私は自分の腕を撫でながら、キリアに問う。

「本当に、このまま泣き寝入りするつもりなの?」
「その方が、全部丸く収まるからね」
「払えないわよ。罰金なんて」
「だから、病院は辞めようって言ったんだ」
「おかしい……。こんなこと……。あっていいの?」

キリアは、何も答えてくれなかった。

その代わりに、ゆっくりと席を立ちあがった。

「キリア……。ねぇ、キリアってば」
「ブレッザ家は、大ごとにするつもりは無いと思うよ。だから……。借金の取り立ても、しないだろうさ。ゆっくり返していけばいい」

それだけ言って、部屋に戻ってしまった。

……そんな簡単に、引き下がってたまるか。

なんとかして、やり返してやりたいけど……。

全く、打つ手が無い。


今日は、親友に会いに行く日だ。
ちょっと、相談してみようかな……。
感想 8

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に

ゆっこ
恋愛
 王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。  私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。 「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」  唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。  婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。 「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」  ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

知らぬはヒロインだけ

ネコフク
恋愛
「クエス様好きです!」婚約者が隣にいるのに告白する令嬢に唖然とするシスティアとクエスフィール。 告白してきた令嬢アリサは見目の良い高位貴族の子息ばかり粉をかけて回っていると有名な人物だった。 しかも「イベント」「システム」など訳が分からない事を言っているらしい。 そう、アリサは転生者。ここが乙女ゲームの世界で自分はヒロインだと思っている。 しかし彼女は知らない。他にも転生者がいることを。 ※不定期連載です。毎日投稿する時もあれば日が開く事もあります。