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親友 ネイトル
街を出て、しばらく歩いたところに、ポツンとある、不思議な館。
ここは、仮面の館と言って、仮面を付けた状態でなければ、中に入ることはできない。
自分の身分や、職業を隠して、人と交流することができる……。そんな場所だ。
「スバレスです」
「スバレス様……。はい、お伺いしております。2のCのお部屋へどうぞ」
大きな広間で、見知らぬ人と会話するのもいいけれど……。
私は多くの場合、決まった親友と会話するために、ここを訪れる。
毎週、同じ時間に待ち合わせることで、お互いのことを何も知らなくても、会うことができるのだ。
私は2のCへと向かった。
ゆっくりと、ドアを開ける。
「お待たせ、ネイトル」
「あら、遅かったじゃないですか。スバレス」
スバレスは、私の本名、スズカ・モルバレスを略したものだ。
ここでは当然、偽名を名乗るルールになっている。
「ごめんなさい。色々、トラブルがあって……」
「トラブル……。じゃあ、今日は、あなたの相談に乗る番ですね」
私とネイトルは、ここで知り合って以来、お互いの日々の不満や、人間関係のトラブルを、相談し合う仲になっている。
だいたい、三か月ほど続いているので、波長が合うのかもしれない。
「実は……。私の弟が、酷い目に遭わされてしまって」
「……珍しい話題ですね。いつもは、庭の花がすぐに枯れてしまうだとか、雨が多くて頭痛がするとか、和やかな話題が多いのに」
ネイトルの言う通りだ。
普段はどちらかというと、ネイトルの相談事が重たくて、私の方から出す話題は、だいたい軽いものが多い。
口元だけが見える仮面。
他の部分が隠れている分、ネイトルの綺麗で小さな唇には、どうしても視線がいってしまう。
「ごめんなさい。かなり重たくなってしまうのだけれど、聞いてもらえるかしら」
「もちろんです。毎週たくさん、話を聞いてくれていますから。今日くらいは、恩返しさせてください」
「恩返しだなんて……。とんでもない」
ネイトルの抱える悩みは、重たいものが多いけれど、その分、親身になって答えることで、人に尽くしているような気持ちになることができるから、私にとっても、この関係は、間違いなくありがたい。
……もし、現実でも、ネイトルと友達になれたら。
なんて思うけれど、それをしないからこそ、この関係が維持できているのだと思う。
「じゃあ早速、聞かせてちょうだい? 一体何があったの?」
「あのね……」
私は、キリアの身に起こったことを、全て話した。
ここは、仮面の館と言って、仮面を付けた状態でなければ、中に入ることはできない。
自分の身分や、職業を隠して、人と交流することができる……。そんな場所だ。
「スバレスです」
「スバレス様……。はい、お伺いしております。2のCのお部屋へどうぞ」
大きな広間で、見知らぬ人と会話するのもいいけれど……。
私は多くの場合、決まった親友と会話するために、ここを訪れる。
毎週、同じ時間に待ち合わせることで、お互いのことを何も知らなくても、会うことができるのだ。
私は2のCへと向かった。
ゆっくりと、ドアを開ける。
「お待たせ、ネイトル」
「あら、遅かったじゃないですか。スバレス」
スバレスは、私の本名、スズカ・モルバレスを略したものだ。
ここでは当然、偽名を名乗るルールになっている。
「ごめんなさい。色々、トラブルがあって……」
「トラブル……。じゃあ、今日は、あなたの相談に乗る番ですね」
私とネイトルは、ここで知り合って以来、お互いの日々の不満や、人間関係のトラブルを、相談し合う仲になっている。
だいたい、三か月ほど続いているので、波長が合うのかもしれない。
「実は……。私の弟が、酷い目に遭わされてしまって」
「……珍しい話題ですね。いつもは、庭の花がすぐに枯れてしまうだとか、雨が多くて頭痛がするとか、和やかな話題が多いのに」
ネイトルの言う通りだ。
普段はどちらかというと、ネイトルの相談事が重たくて、私の方から出す話題は、だいたい軽いものが多い。
口元だけが見える仮面。
他の部分が隠れている分、ネイトルの綺麗で小さな唇には、どうしても視線がいってしまう。
「ごめんなさい。かなり重たくなってしまうのだけれど、聞いてもらえるかしら」
「もちろんです。毎週たくさん、話を聞いてくれていますから。今日くらいは、恩返しさせてください」
「恩返しだなんて……。とんでもない」
ネイトルの抱える悩みは、重たいものが多いけれど、その分、親身になって答えることで、人に尽くしているような気持ちになることができるから、私にとっても、この関係は、間違いなくありがたい。
……もし、現実でも、ネイトルと友達になれたら。
なんて思うけれど、それをしないからこそ、この関係が維持できているのだと思う。
「じゃあ早速、聞かせてちょうだい? 一体何があったの?」
「あのね……」
私は、キリアの身に起こったことを、全て話した。
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