弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら

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集結

「はぁ……」

街に戻ってきた私は、どっと疲れてしまっていた。

だけど、休んでいてはいけない。

キリアの件を、街のみんなに話して、協力を得るんだ。

私は、商店の並ぶエリアを訪れた。

すると、何やら人が集まっていた。

「あっ、スズカ!」

その集団のうちの一人、酒屋の娘のベオリーナが、元気にこちらに手を振ってきた。

「みんな集まって……。どうしたの?」
「それがさぁ。またブレッザ家の女が出てきて、金を回収して回ったんだよ」

さっき、キリアに酷いことをしたばかりなのに……。

あの人には、人の心が無いのだろうか。

「でも、レオーラの誕生日プレゼントを買う金だけは、なんとか取り返してやったぜ!」
「いや……。本当に情けない話だ。ありがとうベオリーナ」
「良いって良いって! レオーラに、良いもん買ってやってくれよな!」

ベオリーナは、強い人だなぁ……。

……ベオリーナに頼んだら、街の人を、一つにしてくれるだろうか。

「ん? どうした? あたしの顔に、なんかついてるか?」
「う、ううん。なんでもないの」
「……」

ベオリーナが、無言でこちらに近づいてきた。

私は思わず、後ずさりをする。

「べ、ベオリーナ。何?」
「なんか怪しいなぁ……。スズカ、あたしに隠し事してないか?」
「隠し事……っていうか」
「なんでも話してくれよ! あたしとあんたは、小さい時から仲良しだろ? な?」

ベオリーナが、私の肩をバンバンと叩いてくる。

頼れる存在なのは確かだけど、正直言って、苦手なタイプだった。

……でも、そうも言ってられない。

「……じゃあ、向こうで話そう」
「おう!」

ベオリーナを連れて、人のいない場所に向かった。

そして、キリアに起こったことと、ネイトルの件を話した。

「……とんでもないことになってるな」
「……現実じゃないみたい」
「ほっぺ、抓ってやろうか?」
「い、いいから。大丈夫」
「じゃあ、現実ってわかってんじゃん」

ベオリーナが、にっこりと笑った。

……悪い人じゃないのは、確かなんだけど。

「そんで、やることも決まったな」
「え?」
「お姫様の力を借りられるんなら……。怖いもの無しじゃねぇか」
「だけど……」
「だけどじゃない。スズカ。お前は、弟に甘えすぎなんだよ」
「えっ、ど、どうして急に、キリアの話?」
「キリアが優しいから、お前はいつまで経っても優柔不断なんじゃないかって話」

……そうなのかな。

私は、キリアの優しさに、甘えすぎていたのだろうか。

「お姉ちゃんなんだろ? 弟を救うって決めたんだろ? だったら迷うことはねぇって。運まで味方につけたんだから、後は実行するのみ……な?」
「……そうだよね」

ベオリーナの明るさに、引っ張られるようにして、私も段々と前向きになってきた。

「で、そのお姫様は、いつ来るんだよ」
「それは、よくわかってなくて……。だけど、話を聞いてる感じだと、割とすぐかも」
「すぐって、今日中か?」
「さすがにそれは――」

「お~い!! 姉さん!!!」

キリアが、いきなりこちらに走ってきた。

「よかった……。ここにいたんだね」
「キ、キリア!? 体はもう大丈夫なの?」
「あぁうん。元々そんなに、強く殴られてはないし……。って、そんなことより! 王都から、ものすごい数の人が、押し寄せて来てるけど!? しかも、姉さんに用事があるって……。一体何をしたんだよ!」

動揺するキリア。

私も、同じように、狼狽えている。

……ベオリーナだけが、ニコニコしていた。
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