婚約者の罠で親殺しにされてしまった悪役令嬢。国外追放は受け入れますが、あなたは殺します。

冬吹せいら

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皆殺し

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「あ~。君に恋して~。ずっとキスしていたいから~。ミツバチみたいに甘くて~あ~うるさい心が~」
「く、くるなぁ……!うわああ!!!!」

どうやら騒ぎを聞きつけたらしい。兵士がたくさん襲いかかってきたけど、顔を見るまでも無く、適当に手で払うだけで即死。

けど、血が出ると面倒だから、きちんと心臓を破裂させられるように、コントロールしていく。だんだん慣れてきたなぁ……。はい、九人目。

「き、貴様。どうしっぅううう」
「……よっわ」

こんな奴らにこき使われてる奴隷のみんながかわいそう……。早く解放しないと。

地図を見ながら、さっきの工場へ向かう。

「ら~ら~ら~。歩幅の差だけ~夢が遠く~」

目につく兵士を次々殺しながら、さっき私が働かされていた壁へ。

「な、何で……」

私の歌を、うるさいと言った兵士。もうとっくに、私が騒ぎを起こしていることには気が付いたみたい。

どうやって殺してやろうかと思っていると、急に土下座をし始めた。

「許してくれぇ!家に家族がいるんだ!まだ生まれたばかりの赤ん坊も!」
「それは素晴らしいことだわ。顔を上げて?」
「う、うう……。許してくれるのか?」
「まとめて殺してあげる!」
「うがああ!!!!!」

両目に、削り取られた石をぶち込んであげた。でも人は、痛みが許容範囲を超えると、すぐに死んでしまう。つまらない……。家族の居場所を尋ねてから殺すべきだったなぁ。

……まぁでもいっか!どうせ今の私は全知全能。その気になれば特定できると思う!

「あ、あの……。君はさっきの」
「うん。あなたたちを救いに来たよ。もう少し待っててね?全部殺すから!」

奴隷のみんなは、怯えた目で私を見つめていた。仕方ないよね……。目の前でこんなに人が死んじゃったら。でも、弱い兵士が悪いと思う。

次に向かったのは、兵士の宿舎。奴隷には寝具の一つもないのに。結構な身分だと思う。早く殺さなきゃ。

「おい。奴隷がこんなところに何のっ」

心臓を潰す。もう慣れた。叫ばせることすら許さない。まるで寿命を迎えたかのように、一瞬で息の根を止める。

「ふんふふふ~ん」

鼻歌を口ずさみながら、宿舎の中へ。攻め込まれると思っていなかったみたいで、みんな軽装だ。殺しやすくていい。

あっという間に、最上階へ。ここだけ作りが違って、割と位の高い兵士がいるんだとか。

ドアを爆発させた。手始めのご挨拶。

小さな机を取り囲むようにして、四人の男が座っていた。賭け事でもしてたみたい。

「な、何奴だ!」
「元令嬢……。違うな。なんだろう。悪役令嬢って名乗った方がわかりやすいのかな。ん~ごめんなさい。まだその辺のキャラづくりが全然で」
「ここは俺に任せてください」
「おっ。やる気だ~」

見るからに力自慢の、大きな兵士。自分よりも大きな斧を構えて、私に突進してきたので……。空間移動を使ってみることにした。

私に斧を振り下ろす瞬間。他の兵士の前に移動させる――。

「え?」
「なっ」

グシャッと、嫌な音がして……。頭の割れた兵士がその場に倒れた。

「お、お前、何を……」
「違う、俺は、俺は、あの女を」
「……どうして水が美味しいの~」
「……歌ってる?」
「そうだよ。歌ってる。ふふふ~ん」
「……逃げるぞ」
「逃げる!?それは兵士の恥だ!」
「勝てるわけなかろう!」

何やら三人で喧嘩し始めたので、私は手を叩いた。仲間外れにしないでよ。

「力自慢のあなたは、死体を運ぶ仕事をしてもらいたいから……。特別に生かしてあげようかな。この宿舎に集めるの!できるよね?」
「貴様……。なめおって!うおおお!!!」
「お、おい待て!無茶だやめろ!」

どうやら残り二人の兵士は、そこそこ位が高いのか、冷静だ。それなのに、この筋肉バカときたら……。

「いいよもう。そんなに死にたいなら……。はいっ」

斧を取り上げて、彼の体の中に転移させた。当然、収まりきるような大きさじゃない。彼の体は……。無常にも、破裂してしまった。

「あ~あ。壊れちゃった」
「……君は一体」
「あなた、他の兵士と違って、臭い匂いがしない……。もしかして、ただの王族?」
「そうだが……」
「じゃあ、私の言うことをおおぉおおおえええええ」

あぁ。私はバカか。また吐いてしまった。

「ふ、ふふふ、ひ~」

ふらつきながら立ち上がり、王族と、もう一人の兵士に命じた。

「大地が腐るのは嫌だわ?すぐに街中の兵士の死体を回収して、ここに集めなさい。いいわね?」
「……わかった。君、行くぞ」
「は、ははひ」

ぶるぶる震える兵士と、王族が部屋を出て行った。

私は……。奴隷のみんなを、助けないとね。
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