婚約者の罠で親殺しにされてしまった悪役令嬢。国外追放は受け入れますが、あなたは殺します。

冬吹せいら

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兵士爆弾

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セントブルグは、とても小さな国だった。

けど、どことなく嫌な空気を感じる。民の顔が死んでいるし、きっと貧しいんだと思う。

……目的を達成したら、さっさと帰ろう。

「ミストレスちゃん。全然兵士が見当たらないよ?」
「奴らは、変な兵器を使ってた。だから少人数でも、森は焼かれたんだと思う」

ミストレスちゃんの表情からは、強い憎しみが感じられた。まだ小さいこの子に、こんな顔をさせる兵士たちは……。さっさと殺さないとね。

「段を上ると水の空~」

歌いながら歩いていると、何やら怪しげな雰囲気の建物があった。どうやら兵器が格納してありそうだ。

見張りの兵士に声をかけた。

「ここ、入ってもいいかなぁ~」
「……何者だ?貴様ら」
「ららら~。私は歌うたいです。こっちはただの可愛い女の子」
「そのように血まみれの服を着て……。歌うたいとは聞き入れ難いな」
「血まみれ?あぁほんとだ」

私は魔法で、服を綺麗にした。ここに入る前にやっておかないといけなかったなぁ。

「白魔法か……。よかろう。入りたまえ」

あれ。意外と友好的……。多分、白魔法使いって、聖女やシスターが多いから、紛争地帯を救って歩く歌うたいだと勘違いしてもらえたのかも。ラッキー!

建物の中には、兵器がたくさんあった。ドラゴンほどの大きさのモノや、人型をしたモノまで……。小さい国にしては、結構整っている。

「すごいねぇ……」
「そうだろう。我が国は、着々と力をつけている。こないだも、モンスターが蔓延る森を、そのディザステンで焼き払ったのだ」
「ディザステン……」

大きな兵器だ。これがいきなり、平和な森に攻め入ってきたら、どんなに怖いだろう。

「ミストレスちゃん」
「……」

人を殺すような目で、ミストレスちゃんは兵器を見上げている。

……可愛い子に、こんな目をさせちゃあダメだよね。

私はディザステンの内部構造をじーっと見つめた。なんだ、意外と脆い。内部で何かを爆発させれば、すぐだ。

「兵士さん。一つ訊いてもいい?」
「あぁ」
「国のために命を落とすことについて、どう思う?」
「もちろん厭わない。そのために生きている」
「じゃあ、もし自分が死ぬことで、誰かの命を救うことができるとしたら、どうする?」
「受け入れるだろう」
「……ららら。午前三時の木の上で~」
「……どうした?っ、あっ?」

いきなり体が宙に浮いた兵士が、ばたばたと暴れ始めた。

まぁ、どう答えたところで、殺していたけどね。

私は彼を、ディザステンの内部に転移させた。そして。

「ミストレスちゃん。耳を塞いで?」

ミストレスちゃんが、耳を塞いだことを確認してから……。兵士を思いっきり破裂させた。

すると、ディザステンに、ミシミシとヒビが入り始め……。

大きな爆発音とともに、粉々に砕け散った。

建物の壁は全て吹き飛び、私たちを守るバリアにも、少しだけヒビが入っている。かなりの爆風だったみたいだ。やりすぎちゃった……。

「るーるる~。もう大丈夫だよ。ミストレスちゃん」
「……ありがとう」
「うん」

騒ぎを聞きつけた兵士たちが、何人かやってきたので、問答無用で心臓を止めた。彼らと話すことなんて何もない。

「じゃあ……。次は、あの人の家族だね」

ミストレスちゃんが、さっきよりも穏やかな表情で頷いてくれた。
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