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滅亡の始まり
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「そのようなことがあるか!!!」
エルモバルアの国王、ベリオル・クラマーは、その巨体を揺らしながら、怒り狂っていた。
「し、しかし!真でございます!」
「……くそっ。どうして我が娘ではなく、あの農民娘なのだ!」
サンダルシアが聖女に目覚めた知らせを聞いたベリオルは、酷く嘆いた。本当に、何の取り柄も無い、ただの小娘であったはずなのに……。
「どういたしましょうか」
エルモバルアの騎士団をまとめる、団長のレンクセイが、その悪人面をベリオルに向けた。
「ど、どういたすとは、なんだ」
「聖女の力は、殺すことで奪うことができます。サンダルシアをシーシア様が、自らの手によって、殺すことができれば……」
「なるほど……。それは名案だ!すぐに実行を!」
「はっ。かしこまりました。詞はどうされますか」
詞とは、兵士が動くための理由である。国王から発せられ、兵士はこれに従い、命尽きるまで戦いに身を投じる――。
「……偽物の聖女を、滅する」
「……かしこまりました」
レンクセイが、ニヤリと笑った。
☆ ☆ ☆
同じころ、サンティーカは、エルモバルアの指示により、偽物の聖女、サンダルシアを弾圧するように求める祭りを開いていた。
祭りの盛り上がりが、そのまま民意となる。これはつまり、サンダルシアの心を乱すための儀式だった。
「……はぁ」
リーマスは、王宮のバルコニーから、祭りの様子を眺めている。
(サンティーカには、不勉強なバカしかいない。このような祭りを催したところで、サンダルシア様が気にするわけもなかろうに)
エルモバルアも、サンティーカも、野蛮で、考えが短絡的である。そのように、リーマスは考えていた。
「リーマス。ここにいたのですね」
「母上……」
リーマスの母、エメルが来て、同じように祭りの様子を確認し、ため息をついた。
「どうしてこのようなことになってしまうのでしょうか。我が国には、聖女様がおられる。もしサンダルシア様が偽物であるのならば、処罰は聖女様が下すべきであるのに」
「母上の申す通りです。我らが口を出すことではありません。エルモバルアも、サンティーカも……。シーシア様も、信用に値しない」
「……シーシア様も?」
「もう母上もお気づきになられたでしょう。この一連の動き。そして、シーシア様……。いや、シーシアの嘘には」
エメルは何も言わなかった。が、この場合の沈黙は、賛同を意味してしまう。
「本物の聖女の怒りをかえば最後。エルモバルアも、サンティーカも、いずれ滅びてしまう。その前に母上……。私と一緒に、逃げましょう」
「……ついに、時が来たようですね」
「遅くなってしまい、申し訳ございません。このような国、もっと早くに、見捨てるべきでした」
こうして、サンティーカの国から、リーマスとエメルがいなくなった。
――サンティーカの滅亡が、始まった瞬間であった。
エルモバルアの国王、ベリオル・クラマーは、その巨体を揺らしながら、怒り狂っていた。
「し、しかし!真でございます!」
「……くそっ。どうして我が娘ではなく、あの農民娘なのだ!」
サンダルシアが聖女に目覚めた知らせを聞いたベリオルは、酷く嘆いた。本当に、何の取り柄も無い、ただの小娘であったはずなのに……。
「どういたしましょうか」
エルモバルアの騎士団をまとめる、団長のレンクセイが、その悪人面をベリオルに向けた。
「ど、どういたすとは、なんだ」
「聖女の力は、殺すことで奪うことができます。サンダルシアをシーシア様が、自らの手によって、殺すことができれば……」
「なるほど……。それは名案だ!すぐに実行を!」
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詞とは、兵士が動くための理由である。国王から発せられ、兵士はこれに従い、命尽きるまで戦いに身を投じる――。
「……偽物の聖女を、滅する」
「……かしこまりました」
レンクセイが、ニヤリと笑った。
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同じころ、サンティーカは、エルモバルアの指示により、偽物の聖女、サンダルシアを弾圧するように求める祭りを開いていた。
祭りの盛り上がりが、そのまま民意となる。これはつまり、サンダルシアの心を乱すための儀式だった。
「……はぁ」
リーマスは、王宮のバルコニーから、祭りの様子を眺めている。
(サンティーカには、不勉強なバカしかいない。このような祭りを催したところで、サンダルシア様が気にするわけもなかろうに)
エルモバルアも、サンティーカも、野蛮で、考えが短絡的である。そのように、リーマスは考えていた。
「リーマス。ここにいたのですね」
「母上……」
リーマスの母、エメルが来て、同じように祭りの様子を確認し、ため息をついた。
「どうしてこのようなことになってしまうのでしょうか。我が国には、聖女様がおられる。もしサンダルシア様が偽物であるのならば、処罰は聖女様が下すべきであるのに」
「母上の申す通りです。我らが口を出すことではありません。エルモバルアも、サンティーカも……。シーシア様も、信用に値しない」
「……シーシア様も?」
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「……ついに、時が来たようですね」
「遅くなってしまい、申し訳ございません。このような国、もっと早くに、見捨てるべきでした」
こうして、サンティーカの国から、リーマスとエメルがいなくなった。
――サンティーカの滅亡が、始まった瞬間であった。
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