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本当の聖女に……
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「なるほど、そのようなことが……」
リーマスは、国に嫌気がさして、母親と共に抜け出してきたらしい。
祭りのことは残念だけど……。シーシアは、一体どう思っているのだろう。
「私はこの国に残って、民を守ります。リルと共に」
「心強い……。リーマスは、本当に素晴らしい剣の使い手なのです」
「いやいやそんな……。リルがあれだけの数を、一人で止めてくれていたからこそ、私が間に合ったのだ」
「しかし、リーマスがいなければ、あの団長を倒すことはできなかった」
二人がお互いの健闘を称え合っている。良い光景だなぁ……。
「サンダルシア様。結界も張り終わり、これで万事解決……。というわけには参りません。……あなたの両親が、心配です」
「……そうですね」
「きっと、両親を利用して、またあなたを国へ連れ戻そうとするでしょう」
「そんな……。リーマス、急いでエルモバルアに行かねば!」
「……私も同じ気持ちだ。しかし、下手に刺激すれば、奴らは躊躇いなく、両親を殺すだろう」
私も同じ考えだった。エルモバルアの国王、ベリオルは、非常に冷酷な人間で、躊躇いなくミスをした兵士を殺したり、民を見せしめで殺したりする。私の両親がその標的になるのも……、きっと時間の問題だ。
「では、どうする?何かしら動かねば、結果は同じ……」
「あぁ。私たちだけではどうすることもできない。が……。聖女様なら、解決できるかもしれない」
「……本当ですか?」
「祈りの力は、闇の心を持つ者の動きを、封じ込めることができると、聞いたことがあります」
確かにそれは、私も本で読んだことがある。しかし、どれも熟練の聖女のなせる業として、書いてあった。
……私は、つい先日目覚めたばかりの聖女だ。できるとは思えない。
「なるほど。それならばきっと!」
「……すいません」
「……どうされましたか?サンダルシア様」
「……」
リルは首をかしげているが、リーマスはもう、とっくに気がついている様子だった。
――白状するのであれば、このタイミングだろう。
「……私はリルに、そして、民に謝らなければなりません」
「えっ……。何をです?」
「リル。君は、サンダルシアを愛しているか?」
「と、突然どうした。それはもちろん……。この世の何より、愛している」
リルの顔が真っ赤になった。
「なぜそのようなことを?」
「……サンダルシア様。リルは大丈夫です。お話になってください」
「……はい」
私は涙を流しながら、リルに謝った。
私が偽物の聖女であったこと。全てがエルモバルアの国王の罠であったこと。
リルは静かに、全て聞いてくれた後……。私をそっと、抱きしめてくれた。
「リル……?」
「辛かったですね。サンダルシア様。一人で全部を抱えてしまって」
「怒らないのですか?私は」
「怒る必要などありません。例え聖女でなかったとしても、私はサンダルシア様のことを、最初から愛しておりました。このお方と国を守る。その気持ちしかなかったのです」
「……うぅ」
「泣かないでください。今、サンダルシア様は、立派なダントレイの聖女となりました。過去のことなどお忘れください。聖女として……。何をすべきか。誰を救うべきか。それが重要です」
「ありがとう。リル」
「聖女様。思いの強さがあれば……。きっと、いかなる道も開けていくでしょう。自分を信じてください」
私は涙を拭いて、二人に向き直った。二人とも、力強く頷いてくれた。
「これから……。両親を、救いに向かいます!」
リーマスは、国に嫌気がさして、母親と共に抜け出してきたらしい。
祭りのことは残念だけど……。シーシアは、一体どう思っているのだろう。
「私はこの国に残って、民を守ります。リルと共に」
「心強い……。リーマスは、本当に素晴らしい剣の使い手なのです」
「いやいやそんな……。リルがあれだけの数を、一人で止めてくれていたからこそ、私が間に合ったのだ」
「しかし、リーマスがいなければ、あの団長を倒すことはできなかった」
二人がお互いの健闘を称え合っている。良い光景だなぁ……。
「サンダルシア様。結界も張り終わり、これで万事解決……。というわけには参りません。……あなたの両親が、心配です」
「……そうですね」
「きっと、両親を利用して、またあなたを国へ連れ戻そうとするでしょう」
「そんな……。リーマス、急いでエルモバルアに行かねば!」
「……私も同じ気持ちだ。しかし、下手に刺激すれば、奴らは躊躇いなく、両親を殺すだろう」
私も同じ考えだった。エルモバルアの国王、ベリオルは、非常に冷酷な人間で、躊躇いなくミスをした兵士を殺したり、民を見せしめで殺したりする。私の両親がその標的になるのも……、きっと時間の問題だ。
「では、どうする?何かしら動かねば、結果は同じ……」
「あぁ。私たちだけではどうすることもできない。が……。聖女様なら、解決できるかもしれない」
「……本当ですか?」
「祈りの力は、闇の心を持つ者の動きを、封じ込めることができると、聞いたことがあります」
確かにそれは、私も本で読んだことがある。しかし、どれも熟練の聖女のなせる業として、書いてあった。
……私は、つい先日目覚めたばかりの聖女だ。できるとは思えない。
「なるほど。それならばきっと!」
「……すいません」
「……どうされましたか?サンダルシア様」
「……」
リルは首をかしげているが、リーマスはもう、とっくに気がついている様子だった。
――白状するのであれば、このタイミングだろう。
「……私はリルに、そして、民に謝らなければなりません」
「えっ……。何をです?」
「リル。君は、サンダルシアを愛しているか?」
「と、突然どうした。それはもちろん……。この世の何より、愛している」
リルの顔が真っ赤になった。
「なぜそのようなことを?」
「……サンダルシア様。リルは大丈夫です。お話になってください」
「……はい」
私は涙を流しながら、リルに謝った。
私が偽物の聖女であったこと。全てがエルモバルアの国王の罠であったこと。
リルは静かに、全て聞いてくれた後……。私をそっと、抱きしめてくれた。
「リル……?」
「辛かったですね。サンダルシア様。一人で全部を抱えてしまって」
「怒らないのですか?私は」
「怒る必要などありません。例え聖女でなかったとしても、私はサンダルシア様のことを、最初から愛しておりました。このお方と国を守る。その気持ちしかなかったのです」
「……うぅ」
「泣かないでください。今、サンダルシア様は、立派なダントレイの聖女となりました。過去のことなどお忘れください。聖女として……。何をすべきか。誰を救うべきか。それが重要です」
「ありがとう。リル」
「聖女様。思いの強さがあれば……。きっと、いかなる道も開けていくでしょう。自分を信じてください」
私は涙を拭いて、二人に向き直った。二人とも、力強く頷いてくれた。
「これから……。両親を、救いに向かいます!」
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