王子に浮気され、婚約破棄をされた私ですが、街中のみんなが味方してくれました。

冬吹せいら

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さらなる味方

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「がっはっは! なるほど、してやられたのう!」

 王宮の王の間にて、国王が大声で笑っている。
 
 これまで起きている状況を報告しているのは、悪人顔の騎士団長だ。
 
 国王の隣でワインを飲んでいるアレスは、ニヤニヤしながら横にいる女性の肩を抱いている。

「しかし、たかが副団長と庶民共が集まったくらいで、僕たちに勝てるつもりなんでしょうか。カムラの奴は」
「そう言ったことを計算できぬバカだから、男爵令嬢なのだろう」
「なるほど! それは言えてます!」

 そこにいる全員が、大きな声で笑う。
 
「騎士団長! 酒を飲もうじゃないか! みんな王宮に集めてさ! どうせ奴らはここを目指してやってくる! 返り討ちにしてやろう!」
「それは名案です! すぐに騎士を集めさせていただきます!」

 こうして、王の間に大勢の騎士が集結した。

 ――実際は、副団長のセインの方へ、その7割が移っているのだが、誰もそれに気が付くことはない。
 騎士団長は日々酒を飲むだけの生活を送っているので、騎士団の状況を正確に把握していなかったのだ。

 最初は五分五分だった、団長と副団長の勢力争いは、既に決着してしまっているということになる。

「あぁ君。他の女の子たちも連れて来てよ。大勢男がいるからさ」
「えぇ。わかりましたわ」

 アレスに抱かれていた女が、アレスの頬にキスをした後、王宮を後にした。

「……ふぅ。全く。どうしてあんなに口が臭いのかしらね」

 女は王宮の外で待っていた執事から、ハンカチを手渡された。
 自分の舌を拭うようにして、歩き始める。

 向かったのは公爵家だ。

 執事に案内されたのは、公爵令息――エイザー・ジオルゲンの部屋である。

「スパイというのは意外に高くつくものだ」
「身体のサービスがなかったから、普段よりも半額なのよ?」
「ははっ。それは困ったな」

 エイザーは笑いながら、女にワインを手渡した。

「これよこれ。探していたの。どんな金貨よりも欲しかったわ」
「そんなもので良ければ、まだたくさんある。……で、情報を教えてもらえるかい?」
「王宮に騎士を集めて……。副団長を返り討ちにするつもりらしいわよ」
「なんてことだ。自ら袋に入るだなんて」
「しかも、酒を飲んで大騒ぎ。呆れちゃうわね」

 早速受け取ったワインを開けて、執事から手渡されたグラスに入れることも無く、そのまま飲み始める女。

「おかげでこっちまで、酒が飲みたくて仕方なくなっちゃった。あ~あ。これ、とっても貴重なのに」
「好きなだけ持っていくといいさ」
「あら。次期王子は余裕が違うわね」
「そうかもしれない」

 エイザーは執事に合図をした。

 執事は頷いた後、公爵家を出て……。
 
 男爵家へと向かった。
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