上 下
22 / 24

その後 1

しおりを挟む
「……お姉ちゃん」
「どうしたの? バリオ」
「お腹空いた……」
「ごめんね? 今から、食べられるもの、探しに行くから。今は……。我慢して?」
「うぅうう……」

泣き出してしまった、バリオの頭を撫でながら。

私も、空腹で、吐きそうだった。

何も胃に入れていないせいで、胃酸が暇をしているのかな……。
吐いたところで、その胃酸しか、出てこないと思う。

「じゃあ、私、行ってくるから……」

死にかけのバリオを置いて、今日も私は、食料を手に入れるため、彷徨う。

フラフラと歩いていると、牧場が見えた。
優しそうなおじさんに、声をかける。

「何回も言ってるだろ? お前は大罪を犯した。食事を与えたら、俺まで罰せられちまう」
「お願いします。何でもいいんです。何でも……」
「……出て行ってくれ」

一か月前は、それでも、腐った牛乳を、分けてくれたのに……。
今は、それすらもらえなくなった。

「……シズリー?」
「……えっ」

牧場の肥溜めで……。
スイーナが、蹲っている。
彼女もまた、大罪を犯した者として、生き地獄を味わっている内の一人だ。

「これ、美味しいのよ?」

スイーナが握っているのは……。
牛の糞だった。

私は、何も見なかったことにして、その場から逃げ出した。

ハムリンは、今頃何をしているだろう。
彼女は賢いから、すぐに国から逃げ出した。

だけど……。
私やスイーナは、そういうわけにもいかない。
特に、スイーナの一家は、スイーナを残して、みんな裁かれてしまった。

王族や兵がいなくなった後、この国は、民によって、平和的な統治がなされている。
その平和の陰には……。
私たちみたいな、大罪を犯した者がいて。

生きるか死ぬか……。ギリギリの生活を強いられている。

「さぁ~! 世にも奇妙な、放屁人間だぁ!」
「ぺ、ぺぺぺぺ」

放屁人間……?

妙な商売があるんだなぁ……。

そっちに注目が集まってる間に、私は商店に忍び込み。
なんとか、パンを三つほど、手に入れることができた。

大慌てで、バリオの元へ戻る。
待っててね……。バリオ。
久々の食事だよ……。

「バリオ! ただいま!」

私は、土管の中にいる、バリオに声をかけた。

返事が無い。

「バリオ……? 寝てるの?」

バリオを揺さぶった。
起きない。

「バリオ? パンだよ? ほら。焼きたてで……」

パンをちぎり、バリオの口元に当てた。
反応が無い。

手に、息がかからない。

「いやぁ……。バリオオオオ!!!!!!」

あの時……。
ユーラに、最初から、謝っておけば。

私は後悔しながら、泣き叫んだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

実は私、転生者です。 ~俺と霖とキネセンと

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:1

宇佐美くんと辰巳さん〜人生で一番大変だったある年越しの話

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:312pt お気に入り:1

恋人を目の前で姉に奪い取られたので、両方とも捨ててやりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,721pt お気に入り:1,588

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:20,058pt お気に入り:1,499

負け犬の恋【R18】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:38

婚約者の番

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:300

『欠片の軌跡』オマケ・外伝(短編集)

BL / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:8

処理中です...