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第3話 判断ミス
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「あいつらって本当に馬鹿なのね! こんなに良い屋敷を捨てていくなんて!」
「そ、そうですね……」
あなたが追い出したからでしょうに……。
喉元まで出かかっていた言葉を、侍女のセオリンは飲み込んだ。
「本当は追い出すつもりなんてなかったのよ! 私に頭下げて、ごめんなさい許してくださ~い! って、懇願する姿を楽しみにしていたのに……。まさか真に受けて出て行ってしまうなんて。領地を治めるものとしての覚悟が足りないわ。あれでも伯爵家なのかしら!」
「そうですね……」
そうですね。と、相槌を打つことしかできない。
「それにしても、領民までみんな出て行っているなんて……。まるで世界が終わったみたいで、とってもノスタルジックだわ……」
相槌を打つことすらやめた。
セオリンは、正直早く家に帰りたいと思っている。
仕事柄、この土地には良く出向くことがあったのだが……。
来るたびに、白い服を着た、浄化魔法の使い手たちが、土地の至るところで働いていたという印象がある。
それだけ、この土地は汚れているということなのだ。
土地が汚れる理由は様々あるが、単に神の気まぐれで汚れるということも少なくない。
嫌な予感しかしなかった。
「あはは! 見なさいセオリン! 商品盗み放題よ!」
……だというのに、このわがまま姫は。
呆れながらも、笑みを絶やさず、セオリンはメーシャの後を追いかけた。
しばらく歩き、エスメラルダ伯爵家の屋敷に到着。
「すご~い! あの子たち、こんな良い家に住んでいたのね! 全く贅沢なんだから!」
文句を言いつつも、メーシャはベッドで飛び跳ねたり、残されていたガラスのコップを床にたたきつけて割ったり……。
十五歳とは思えないほどのやんちゃっぷりに、セオリンはただただ呆れていた。
「ここが私の城よ! 姫じゃなくて王様! さぁセオリン崇めなさい! 崇め奉りなさいよ!」
「は、はは~……」
とりあえず、跪いてみせたが、自分は何をやらされているのだろうという、羞恥心に抗うことができず、すぐやめてしまった。
そして、話題を無理矢理切り替えることを試みる。
「風呂場など覗いてみてはいかがでしょう。伯爵家ですから、大層立派な造りになっているかと思われますが」
一般家庭には無い風呂場。
貴族や王族は、水の魔法を閉じ込めたアイテムなどを使い、入浴をしていた。
家の特色が出るとすると、部屋の内装よりも風呂場というくらいである。
「そうね。ついでに水を浴びようかしら」
話題の切り替えに上手くいったセオリンは、ホッとした。
「おぉ~。結構広いわね」
さすが伯爵家、風呂場は相当な広さである。
「ん?」
そんな広い風呂場の端。
メーシャが何かを発見した。
「ちょっと……。毒が溢れ出てるじゃない」
真紫の、うじゃうじゃとうごめく粘着質のヘドロ。
強い毒は、触れると皮膚が溶けることもある。
セオリンの嫌な予感は、やはり的中したのだった。
――この土地の汚染は、深刻なレベルに達している!
「メーシャ様! すぐに浄化の魔法を!」
「えぇ? 嫌よめんどくさい。明日にしましょう」
「しかし! 毒は放置しておくと、増殖する危険性があります!」
「うるさいわねぇ。私は王都でも有数の浄化魔法の使い手なのよ?」
メーシャはそう言うが、彼女の腕はそこまでのレベルではない。
それをセオリンは知っている。
毒が小さいうちに対処しなければ、最悪の事態を招くのだ。
しかし、メーシャを頷かせる方法が思いつかない。
こうして、毒は放置され……。
着々と、屋敷を蝕み始めていた。
「そ、そうですね……」
あなたが追い出したからでしょうに……。
喉元まで出かかっていた言葉を、侍女のセオリンは飲み込んだ。
「本当は追い出すつもりなんてなかったのよ! 私に頭下げて、ごめんなさい許してくださ~い! って、懇願する姿を楽しみにしていたのに……。まさか真に受けて出て行ってしまうなんて。領地を治めるものとしての覚悟が足りないわ。あれでも伯爵家なのかしら!」
「そうですね……」
そうですね。と、相槌を打つことしかできない。
「それにしても、領民までみんな出て行っているなんて……。まるで世界が終わったみたいで、とってもノスタルジックだわ……」
相槌を打つことすらやめた。
セオリンは、正直早く家に帰りたいと思っている。
仕事柄、この土地には良く出向くことがあったのだが……。
来るたびに、白い服を着た、浄化魔法の使い手たちが、土地の至るところで働いていたという印象がある。
それだけ、この土地は汚れているということなのだ。
土地が汚れる理由は様々あるが、単に神の気まぐれで汚れるということも少なくない。
嫌な予感しかしなかった。
「あはは! 見なさいセオリン! 商品盗み放題よ!」
……だというのに、このわがまま姫は。
呆れながらも、笑みを絶やさず、セオリンはメーシャの後を追いかけた。
しばらく歩き、エスメラルダ伯爵家の屋敷に到着。
「すご~い! あの子たち、こんな良い家に住んでいたのね! 全く贅沢なんだから!」
文句を言いつつも、メーシャはベッドで飛び跳ねたり、残されていたガラスのコップを床にたたきつけて割ったり……。
十五歳とは思えないほどのやんちゃっぷりに、セオリンはただただ呆れていた。
「ここが私の城よ! 姫じゃなくて王様! さぁセオリン崇めなさい! 崇め奉りなさいよ!」
「は、はは~……」
とりあえず、跪いてみせたが、自分は何をやらされているのだろうという、羞恥心に抗うことができず、すぐやめてしまった。
そして、話題を無理矢理切り替えることを試みる。
「風呂場など覗いてみてはいかがでしょう。伯爵家ですから、大層立派な造りになっているかと思われますが」
一般家庭には無い風呂場。
貴族や王族は、水の魔法を閉じ込めたアイテムなどを使い、入浴をしていた。
家の特色が出るとすると、部屋の内装よりも風呂場というくらいである。
「そうね。ついでに水を浴びようかしら」
話題の切り替えに上手くいったセオリンは、ホッとした。
「おぉ~。結構広いわね」
さすが伯爵家、風呂場は相当な広さである。
「ん?」
そんな広い風呂場の端。
メーシャが何かを発見した。
「ちょっと……。毒が溢れ出てるじゃない」
真紫の、うじゃうじゃとうごめく粘着質のヘドロ。
強い毒は、触れると皮膚が溶けることもある。
セオリンの嫌な予感は、やはり的中したのだった。
――この土地の汚染は、深刻なレベルに達している!
「メーシャ様! すぐに浄化の魔法を!」
「えぇ? 嫌よめんどくさい。明日にしましょう」
「しかし! 毒は放置しておくと、増殖する危険性があります!」
「うるさいわねぇ。私は王都でも有数の浄化魔法の使い手なのよ?」
メーシャはそう言うが、彼女の腕はそこまでのレベルではない。
それをセオリンは知っている。
毒が小さいうちに対処しなければ、最悪の事態を招くのだ。
しかし、メーシャを頷かせる方法が思いつかない。
こうして、毒は放置され……。
着々と、屋敷を蝕み始めていた。
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