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プライドの高い悪役令嬢
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公爵家が爵位を失ったことは、大きなニュースとなった。
しかし、動揺という意味での騒ぎは、全く起こることはなく……。
むしろ街の人々の間で、公爵家没落を祝う祭りが開かれるほどだった。
「賑やかだね……」
オーレンとリゼッタも、その祭りに招待されたが、あまり表に出ることはしなかった。
しかし、王族に次ぐ権力を持った家がなくなったことで、侯爵家には期待が募り始めている。
「リゼッタ。これからはより一層、君の支えが必要になると思う。……協力してくれるかい?」
「もちろんです。共にこの国を……平和へと導いていきましょう」
二人は手を握り合い……。
徐々に顔を近づけていった。
しかしそこで、部屋のドアがノックされる。
二人は慌てて距離を取り、咳ばらいをした。
「……入ってくれ」
オーレンが少し上擦った声で答えると、慌てた様子の執事が中に入ってきた。
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「……アイナ様がお見えです」
「なっ……」
オーレンが立ち上がろうとするのを、リゼッタが止めた。
「私が行きます……」
「待ちなさい。危険な香りがする」
「大丈夫です。……直接言ってやりたいこともありますから」
「……そうか」
リゼッタはオーレンに微笑みかけたあと、アイナの元へと向かった。
アイナは狭い部屋で、椅子に踏ん反り返り、入ってきたリゼッタを睨みつける。
「私を助けなさい」
開口一番、憎たらしい声でそう言い放った。
「それが助けを乞う者の態度でしょうか」
「ふんっ。私は公爵令嬢なのよ?」
「……その公爵家は、今どうなっているのでしょう」
「うるさいわね。そんな話はどうでもいいの。とにかく私を助けなさい」
「ただ助けろと申しましても、事情が……」
「はぁ……」
ため息をついてから、アイナは床を強く踏みつけて立ち上がった。
そして、自分よりも背の高いリゼッタを見上げ、腰に手を当てながら睨みつけている。
「公爵令嬢である私にまで、悪い噂が流れていて。子爵家がピンチなの。……お荷物もいるし」
アイナは舌打ちをした。
今、頭の中には、ハメッドの姿が思い浮かんでいるのだろう。
「あんなの、金がなければ何の価値も無いじゃない。子爵家の入り口で、わぁわぁと騒ぎ立てているのよ。面倒だから牢屋にぶち込んでくれないかしら」
「……できません」
「どうして? あのまま公爵令息を放置したら、困るのはあんたたちでしょ? 何をするかわからないわよ?」
「どうやら、あの男の性格を理解していないようですね」
リゼッタは、呆れたように笑った。
「彼は私たち女性を、おもちゃとしか思っていません。そして――。精神的に未熟な人間は、おもちゃに執着するものです」
「……何が言いたいのよ」
アイナがそう尋ねた瞬間……。
大きな音を立てて、ドアが開かれた。
しかし、動揺という意味での騒ぎは、全く起こることはなく……。
むしろ街の人々の間で、公爵家没落を祝う祭りが開かれるほどだった。
「賑やかだね……」
オーレンとリゼッタも、その祭りに招待されたが、あまり表に出ることはしなかった。
しかし、王族に次ぐ権力を持った家がなくなったことで、侯爵家には期待が募り始めている。
「リゼッタ。これからはより一層、君の支えが必要になると思う。……協力してくれるかい?」
「もちろんです。共にこの国を……平和へと導いていきましょう」
二人は手を握り合い……。
徐々に顔を近づけていった。
しかしそこで、部屋のドアがノックされる。
二人は慌てて距離を取り、咳ばらいをした。
「……入ってくれ」
オーレンが少し上擦った声で答えると、慌てた様子の執事が中に入ってきた。
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「……アイナ様がお見えです」
「なっ……」
オーレンが立ち上がろうとするのを、リゼッタが止めた。
「私が行きます……」
「待ちなさい。危険な香りがする」
「大丈夫です。……直接言ってやりたいこともありますから」
「……そうか」
リゼッタはオーレンに微笑みかけたあと、アイナの元へと向かった。
アイナは狭い部屋で、椅子に踏ん反り返り、入ってきたリゼッタを睨みつける。
「私を助けなさい」
開口一番、憎たらしい声でそう言い放った。
「それが助けを乞う者の態度でしょうか」
「ふんっ。私は公爵令嬢なのよ?」
「……その公爵家は、今どうなっているのでしょう」
「うるさいわね。そんな話はどうでもいいの。とにかく私を助けなさい」
「ただ助けろと申しましても、事情が……」
「はぁ……」
ため息をついてから、アイナは床を強く踏みつけて立ち上がった。
そして、自分よりも背の高いリゼッタを見上げ、腰に手を当てながら睨みつけている。
「公爵令嬢である私にまで、悪い噂が流れていて。子爵家がピンチなの。……お荷物もいるし」
アイナは舌打ちをした。
今、頭の中には、ハメッドの姿が思い浮かんでいるのだろう。
「あんなの、金がなければ何の価値も無いじゃない。子爵家の入り口で、わぁわぁと騒ぎ立てているのよ。面倒だから牢屋にぶち込んでくれないかしら」
「……できません」
「どうして? あのまま公爵令息を放置したら、困るのはあんたたちでしょ? 何をするかわからないわよ?」
「どうやら、あの男の性格を理解していないようですね」
リゼッタは、呆れたように笑った。
「彼は私たち女性を、おもちゃとしか思っていません。そして――。精神的に未熟な人間は、おもちゃに執着するものです」
「……何が言いたいのよ」
アイナがそう尋ねた瞬間……。
大きな音を立てて、ドアが開かれた。
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