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反省する悪役令嬢
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「うっ、ひぅうう」
アイナは牢獄に捕らえられている。
小さな物音にすら怯えるようになり、会話することが難しくなっていた。
「アイナ……。私です。リゼッタです」
アイナは頭を抱え、鉄格子の向こうにいるリゼッタに気が付かない。
「アイナ」
もう一度呼びかけると、ようやくアイナが顔を上げた。
「ひぃいっ。ごめんなさい!」
「……謝罪を要求しにきたのではありません。あなたに、やり直す意思があるかどうかを尋ねに来たのです」
「……やり直す?」
「そうです。あなたは腐っても子爵令嬢。元々の性格はもちろんありますが、それでも公爵家が原因で狂ってしまった面も否めない。……だから、しばらく反省し、いずれ表に戻っていただこうかと思っているわけです」
「本当……?」
アイナの目から、涙が溢れる。
「……あなたが街の人々に対してしたことを、許すつもりはありませんが――。それでも同じ被害者という考え方もできます」
リゼッタは、アイナに微笑みかけた。
アイナはこれまで、リゼッタの余裕たっぷりの態度に腹を立てていたが……。
今となっては、その包み込むような寛大さに、ようやく気が付くことができた。
「ありがとうございます……」
アイナは地面に、でこが傷つくほど頭を打ち付け、感謝の意を示した。
「世間の風当たりは、とても強いです。できるかぎりのサポートはしますが……。それでも結局はあなた次第になるでしょう」
「頑張ります……。リゼッタ様が与えてくれた機会を、逃すことは致しません」
「……そうですか」
リゼッタは、静かに牢獄を去った。
◇
「……君は優しいね」
夜、オーレンと共にベッドに入りながら、リゼッタは目を閉じていた。
「そうでしょうか」
「うん。……国によっては、アイナもそのままさようなら――。だったかもしれない」
「あの子には才能があります。力の使い方を間違えただけです」
「君が言うなら、そうなんだろうな」
オーレンはリゼッタを強く抱きしめた。
リゼッタは抵抗することなく、ただ身をゆだねる。
「これで……。ようやく全て終わった」
「いいえ。全てこれから始まるんです」
「そうだったね」
「オーレン様が主体となり……。国を安寧へと導くのです」
「僕にできるだろうか……」
「私が支えます。婚約者……妻として」
「ありがとう」
リゼッタの頬に優しくキスをして、オーレンは微笑んだ。
今度はリゼッタが、オーレンにキスを返す。
「目を開けてくれないか? リゼッタ」
「……恥ずかしいのです」
「……ふふっ」
こうして二人は……幸せな夜を過ごした。
アイナは牢獄に捕らえられている。
小さな物音にすら怯えるようになり、会話することが難しくなっていた。
「アイナ……。私です。リゼッタです」
アイナは頭を抱え、鉄格子の向こうにいるリゼッタに気が付かない。
「アイナ」
もう一度呼びかけると、ようやくアイナが顔を上げた。
「ひぃいっ。ごめんなさい!」
「……謝罪を要求しにきたのではありません。あなたに、やり直す意思があるかどうかを尋ねに来たのです」
「……やり直す?」
「そうです。あなたは腐っても子爵令嬢。元々の性格はもちろんありますが、それでも公爵家が原因で狂ってしまった面も否めない。……だから、しばらく反省し、いずれ表に戻っていただこうかと思っているわけです」
「本当……?」
アイナの目から、涙が溢れる。
「……あなたが街の人々に対してしたことを、許すつもりはありませんが――。それでも同じ被害者という考え方もできます」
リゼッタは、アイナに微笑みかけた。
アイナはこれまで、リゼッタの余裕たっぷりの態度に腹を立てていたが……。
今となっては、その包み込むような寛大さに、ようやく気が付くことができた。
「ありがとうございます……」
アイナは地面に、でこが傷つくほど頭を打ち付け、感謝の意を示した。
「世間の風当たりは、とても強いです。できるかぎりのサポートはしますが……。それでも結局はあなた次第になるでしょう」
「頑張ります……。リゼッタ様が与えてくれた機会を、逃すことは致しません」
「……そうですか」
リゼッタは、静かに牢獄を去った。
◇
「……君は優しいね」
夜、オーレンと共にベッドに入りながら、リゼッタは目を閉じていた。
「そうでしょうか」
「うん。……国によっては、アイナもそのままさようなら――。だったかもしれない」
「あの子には才能があります。力の使い方を間違えただけです」
「君が言うなら、そうなんだろうな」
オーレンはリゼッタを強く抱きしめた。
リゼッタは抵抗することなく、ただ身をゆだねる。
「これで……。ようやく全て終わった」
「いいえ。全てこれから始まるんです」
「そうだったね」
「オーレン様が主体となり……。国を安寧へと導くのです」
「僕にできるだろうか……」
「私が支えます。婚約者……妻として」
「ありがとう」
リゼッタの頬に優しくキスをして、オーレンは微笑んだ。
今度はリゼッタが、オーレンにキスを返す。
「目を開けてくれないか? リゼッタ」
「……恥ずかしいのです」
「……ふふっ」
こうして二人は……幸せな夜を過ごした。
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