「君の話はつまらない」と言われて婚約を破棄されましたが、本当につまらないのはあなたの方ですよ。

冬吹せいら

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ハメッドの本性

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 王都に蔓延る裏組織。
 軽く数えるだけでも、その構成員は百を超える。

「さ~てと。どうやって遊んであげようかなぁ」

 構成員たちをまとめているのが……。
 公爵家の令息、ハメッドなのだ。

 普段は間抜けな令息のフリをしている彼は、実に高い知能の持ち主だった。
 
 リゼッタの頭脳を持ってしても、婚約するまでそれに気が付くことはできなかったのだ。

「ん~っ!!! んんっ!」
 
 口を布で縛り上げられたアイナが、涙を流しながら暴れている。
 アイナを取り囲むようにして、大勢の大柄な男たちが集まっていた。

「今日はパーティだからね……。……ちゃんと全員集まってる?」
「はい! 全員集合しております!」

 ハメッドの問いかけに、男が答えた。
 
 王都に蔓延る裏組織の構成員が、全員街外れの森に集まっているのだ。
 普段は王都や郊外に点々と存在し、汚れ仕事をしている悪者たちが、待ちきれないと言った表情で、アイナを見降ろしていた。

「どれ……。外してやろう。この子が助けを乞う声も聞きたいよね?」
 
 男たちから歓声が上がった。
 ハメッドは何度か頷いた後、アイナの口を塞いでいる布を外した。

「助けてください!!!」
「あははははっ! 面白いね! こないだの威勢はどうしちゃったのかなぁ。僕と戦うんじゃなかったの?」
「戦いません! 私が悪かったです!」

 さすがのアイナでも、この状況が何を意味するのかはわかっていた。
 もはやプライドも何も無い。
 必死で涙と鼻水を垂らしながら、許しを乞う。

「君さぁ。僕と一緒に奴隷を蹴りつけていたけど……。僕は一応、傷が残らないように蹴ってるんだよ? なのに君は派手に蹴り上げるから、奴隷に傷がついて可哀そうだった。あれじゃあ売り物にならないよ」
「うぅうううっ……!」
「人を傷つけるのが好き。それは良いけど……。自分が同じ目に遭っても、文句言えないよね?」
「や、やだっ! 助けてくださいっ!」
「よ~し。まずは手始めに、その腕を――」

 ガサガサ……。

 大勢の足音が、森に響いた。

「そこまでだ!」

 現れたのは、王都の騎士団だ。

 ハメッドが舌打ちをする。

「……こりゃあやられた。まさか没落貴族を狙いにくるなんてね」

 ハメッドは武器を捨て、両手を挙げた。

 騎士団たちが、一人残らず構成員たちを捕まえていく。

「大丈夫ですか? アイナ様」
「あっ、あっああぁあっ……」

 アイナは恐怖で怯えて、まともに返答することができない。

 リゼッタの作戦とは……。

 王都に蔓延る悪者たちを一網打尽にすることで、公爵家の息の根を完全に止めることだった。

 見事作戦は成功し、ハメッドたちは処刑されることになったらしい――・ 
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