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本編
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結婚は更なる栄達のための道具、貧民、平民でもそうならば貴族ならば尚更。物語の王子様、騎士様に憧れつつも煌びやかな世間の裏で家のために好きでもない人に嫁ぐ世界。
クレセント王国は狼の獣人の国。獣人は獣の姿と人の姿を持つ。人族と獣人族が結ばれれば子供が獣人である可能性は半々。獣人出ない方の子供が人族と結ばれて子供が獣人である可能性はさらに半分。獣人族と結ばれれば同じくらいの確率で子供は人族。私は獣人ではなかったから狼にはなれないので一族の中で浮いていた。特に本家の御曹司との仲が良くなくて肩身が狭い。逆に獣人の姉と妹は仲良しで産まれなければよかったのにと何度も言われた。
こんな状況だから早くから家を出るつもりでお相手探し、破断続き。そんなこんなで18歳。気づいたら姉も妹も家を出ていた。しかも、姉は海の民に嫁いで絶縁になっている。妹はなんと出家して聖女様。結婚できない訳では無いけど我が家より大きなものに責任を負っているからもう家には戻ってこない。我が家に男の子は居ないため家を残すには婿取り一択。つまり、将来的には不仲な当主が率いる一族でそのものの旦那様と肩身の狭い思いをすることが確定。こんなところに物語のような騎士様が来るはずもないから私は結婚してもひとりきりだろう。
我が家は下っ端宮廷貴族で父の給与も屋敷の維持でカツカツ。使用人は必要なときのみの臨時雇で家事は私が一手に担うようになった。そこに祖母の介護。さらに結婚が遠のいた。
私は一体どうなるのかと途方に暮れていたら父が亡くなった、仲の悪い親戚に扱き使われながらどうにか葬儀の用意をしているところで心労が祟ったのか体調を崩し祖母も亡くなった。
呆然としているうちに葬儀が終わって気がついたら遺産の話。何故か姉もいた。
家にいるのは私だけだから遺産は私かと思ったら姉妹に何故か怒られたけどなぜ怒っているのか分からない。本家の御曹司も何か言っているけど何を言っているのか分からない。とにかく家を売って遺産は三等分ということになった。いやだといっても聞き入れて貰えず、私は父の親友だという下京に住む騎士の男性の家に身を寄せることになる。騎士は宮廷代々仕える家。貴族では無い。貴族から嫁をもらってなりあがることもある。
食べて空を眺めて寝て。奥方様はよく私を気にかけてくれるけどどうにも出来なくて。拒んでただ空を眺めていた。
そんな失礼を積み重ねてだんだんと扱いが悪くなっていき、どうにかしなくてはと思うも何もする気になれない。こんなありふれたことで落ち込むなんて、こんなに気を使っていただいているのだから元気な顔して笑わないとと思うものの、出来ない。
自分の力でどうにもならないときは神頼み。というわけで縁結びで有名な神社を詣でることにした。出かけるとだけ言いおいて軽装でふらふらと歩き出す。伴もつけずひとりきり。なんか言われた気がするけど分からない。
参拝客がごった返す中、拝殿まで辿り着き2礼2拍手1礼。下京7区に住むリサーラ・アザレアです。家名はなくなりました。貧乏でも真っ直ぐで強くて優しい人と結婚して幸せになりたいです。でもたくさんの不幸があって努力が淡雪のように溶けてしまいもう頑張る気力もありません。どうかこの小娘を憐れんでその後神徳をお与えくださいませ。
そんなことを願う。神様に願うときは住所と名前も心の中で言うものだ。少し早いけど家名はなくなったということで。本当は私まではシスティーナを名乗れる。
ふわり、風がそよいだ。この神社の神様は風の神様。男なのに女の服を好む方。見た目に惑わされることなかれというのがその教え。歌舞伎はこの神社の神楽が発祥だと言う。男も女も同じように官吏として宮廷務めて政治に携わるのは他国では見られない。それもこの神様への進行の影響。性別ではなく能力主義。ただし血筋主義でもある。特定の血縁でないと担えない仕事があるから仕方がない。血筋ももまた実力主義。
少し気が晴れて空を見る。女学校の講師になって翠玉先生みたいに一生結婚せず生きてゆくのも悪くない。ほら、こんなに空が蒼いのだから。
「痛え、何ぶつかってんだてめぇ」
あっ
そんなことを思って空ばかり見ていたばっかりに強面の男とぶつかってしまった。最悪。
「すみません」
「すみませんで済むわけないだろ、誠意を見せろ誠意」
ニタニタとした笑顔が気持ち悪い。生理的に受け付けない。そもそも神社で何やってんだこいつ。
「こいつの腕の傷が悪化したかもしれないから診療所まで付き合えよ。」
それ絶対路地や空き家に連れ込まれるやつ。1体1ならまだ何とかなったかもしれないけど悪人はずる賢いから一人でこういうことはしない。当然仲間がいる。彼らは3人組みたいだ。これで逃げ切るのは無理だから助けが必要だけど野次馬は遠巻き。なぜならここは外見による差別を嫌うレオポルト神を祀る神社だから。悪い見た目だからといって取り押さえる人はいない。誰だって祟られたくは無いし、本当に男性が怪我していてそれを心配するあまり語気が荒れている可能性も、一応あるからだ。ちょうどぶつかる瞬間を目撃した人が居ないのかもしれない。神殿内に医務室があるのにそっちに行かないあたり相当相手の男達は怪しいしそもそも揉め事だから神官さんを誰か連れてきてくれると信じて時間稼ぎをしなくては。
「おい、何やってんだ落ち着け。そんなに凄むな。怪我してるんだってな?とりあえず治療が先だ。そこに医務室があるから付いてこい。歩くのは大丈夫か?肩かそうか?」
助けが来た!でも神官じゃなくて騎士が来た!
真っ白な羽織が神々しい。騎士様騎士様とはしゃぐ同級生の気持ちが今ならなんとなく分かりそう。
あれよあれよという間に悪者は逃げ去っていく。悪意がなければ怖くない言い回しから賢さが感じられる大きな人。
私を今日物語のように救った騎士様は平民の士官で名前をウォルフというのだそう。
しばらくあとになって、そんな騎士様とお見合いをすることになった。本人かは知らないけどあの釣り書で名前がウォルフなんてそうそうないからきっと彼。
多分彼が私の運命。なんとなく良い方向に物事が向きそうな気がしてきた。
クレセント王国は狼の獣人の国。獣人は獣の姿と人の姿を持つ。人族と獣人族が結ばれれば子供が獣人である可能性は半々。獣人出ない方の子供が人族と結ばれて子供が獣人である可能性はさらに半分。獣人族と結ばれれば同じくらいの確率で子供は人族。私は獣人ではなかったから狼にはなれないので一族の中で浮いていた。特に本家の御曹司との仲が良くなくて肩身が狭い。逆に獣人の姉と妹は仲良しで産まれなければよかったのにと何度も言われた。
こんな状況だから早くから家を出るつもりでお相手探し、破断続き。そんなこんなで18歳。気づいたら姉も妹も家を出ていた。しかも、姉は海の民に嫁いで絶縁になっている。妹はなんと出家して聖女様。結婚できない訳では無いけど我が家より大きなものに責任を負っているからもう家には戻ってこない。我が家に男の子は居ないため家を残すには婿取り一択。つまり、将来的には不仲な当主が率いる一族でそのものの旦那様と肩身の狭い思いをすることが確定。こんなところに物語のような騎士様が来るはずもないから私は結婚してもひとりきりだろう。
我が家は下っ端宮廷貴族で父の給与も屋敷の維持でカツカツ。使用人は必要なときのみの臨時雇で家事は私が一手に担うようになった。そこに祖母の介護。さらに結婚が遠のいた。
私は一体どうなるのかと途方に暮れていたら父が亡くなった、仲の悪い親戚に扱き使われながらどうにか葬儀の用意をしているところで心労が祟ったのか体調を崩し祖母も亡くなった。
呆然としているうちに葬儀が終わって気がついたら遺産の話。何故か姉もいた。
家にいるのは私だけだから遺産は私かと思ったら姉妹に何故か怒られたけどなぜ怒っているのか分からない。本家の御曹司も何か言っているけど何を言っているのか分からない。とにかく家を売って遺産は三等分ということになった。いやだといっても聞き入れて貰えず、私は父の親友だという下京に住む騎士の男性の家に身を寄せることになる。騎士は宮廷代々仕える家。貴族では無い。貴族から嫁をもらってなりあがることもある。
食べて空を眺めて寝て。奥方様はよく私を気にかけてくれるけどどうにも出来なくて。拒んでただ空を眺めていた。
そんな失礼を積み重ねてだんだんと扱いが悪くなっていき、どうにかしなくてはと思うも何もする気になれない。こんなありふれたことで落ち込むなんて、こんなに気を使っていただいているのだから元気な顔して笑わないとと思うものの、出来ない。
自分の力でどうにもならないときは神頼み。というわけで縁結びで有名な神社を詣でることにした。出かけるとだけ言いおいて軽装でふらふらと歩き出す。伴もつけずひとりきり。なんか言われた気がするけど分からない。
参拝客がごった返す中、拝殿まで辿り着き2礼2拍手1礼。下京7区に住むリサーラ・アザレアです。家名はなくなりました。貧乏でも真っ直ぐで強くて優しい人と結婚して幸せになりたいです。でもたくさんの不幸があって努力が淡雪のように溶けてしまいもう頑張る気力もありません。どうかこの小娘を憐れんでその後神徳をお与えくださいませ。
そんなことを願う。神様に願うときは住所と名前も心の中で言うものだ。少し早いけど家名はなくなったということで。本当は私まではシスティーナを名乗れる。
ふわり、風がそよいだ。この神社の神様は風の神様。男なのに女の服を好む方。見た目に惑わされることなかれというのがその教え。歌舞伎はこの神社の神楽が発祥だと言う。男も女も同じように官吏として宮廷務めて政治に携わるのは他国では見られない。それもこの神様への進行の影響。性別ではなく能力主義。ただし血筋主義でもある。特定の血縁でないと担えない仕事があるから仕方がない。血筋ももまた実力主義。
少し気が晴れて空を見る。女学校の講師になって翠玉先生みたいに一生結婚せず生きてゆくのも悪くない。ほら、こんなに空が蒼いのだから。
「痛え、何ぶつかってんだてめぇ」
あっ
そんなことを思って空ばかり見ていたばっかりに強面の男とぶつかってしまった。最悪。
「すみません」
「すみませんで済むわけないだろ、誠意を見せろ誠意」
ニタニタとした笑顔が気持ち悪い。生理的に受け付けない。そもそも神社で何やってんだこいつ。
「こいつの腕の傷が悪化したかもしれないから診療所まで付き合えよ。」
それ絶対路地や空き家に連れ込まれるやつ。1体1ならまだ何とかなったかもしれないけど悪人はずる賢いから一人でこういうことはしない。当然仲間がいる。彼らは3人組みたいだ。これで逃げ切るのは無理だから助けが必要だけど野次馬は遠巻き。なぜならここは外見による差別を嫌うレオポルト神を祀る神社だから。悪い見た目だからといって取り押さえる人はいない。誰だって祟られたくは無いし、本当に男性が怪我していてそれを心配するあまり語気が荒れている可能性も、一応あるからだ。ちょうどぶつかる瞬間を目撃した人が居ないのかもしれない。神殿内に医務室があるのにそっちに行かないあたり相当相手の男達は怪しいしそもそも揉め事だから神官さんを誰か連れてきてくれると信じて時間稼ぎをしなくては。
「おい、何やってんだ落ち着け。そんなに凄むな。怪我してるんだってな?とりあえず治療が先だ。そこに医務室があるから付いてこい。歩くのは大丈夫か?肩かそうか?」
助けが来た!でも神官じゃなくて騎士が来た!
真っ白な羽織が神々しい。騎士様騎士様とはしゃぐ同級生の気持ちが今ならなんとなく分かりそう。
あれよあれよという間に悪者は逃げ去っていく。悪意がなければ怖くない言い回しから賢さが感じられる大きな人。
私を今日物語のように救った騎士様は平民の士官で名前をウォルフというのだそう。
しばらくあとになって、そんな騎士様とお見合いをすることになった。本人かは知らないけどあの釣り書で名前がウォルフなんてそうそうないからきっと彼。
多分彼が私の運命。なんとなく良い方向に物事が向きそうな気がしてきた。
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