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第3話 旅は道連れラーメン道中
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「いきなりラーメン食べに行こうなんて珍しいねぇ~!」
それは、駅でポスターを見た歌織がラーメンスタンプラリーへの参加を決めた次の土曜日のこと。
歌織はインターネットで趣味を通じて知り合った友人である笹瀬 詩乃と駅で落ち合っていた。
ふわふわの癖っ毛のショートカットの可愛らしい女性が、歌織の方へと指をひらひら振りながら駆け寄って来る。
詩乃は歌織より3つほど年下で、控えめに言っても地味で垢抜けない歌織と比べると、ファッションにもこだわりを持っているお洒落さんなタイプだ。
着ているTシャツが変だと家族に馬鹿にされたと言うエピソードを憤慨しながら語っていたことはあるが、少なくともこの日は、シックなストライプのシャツにベージュのテーパードパンツという所謂"キレイめ"なファッションを着こなしていた。
「…いや、さすがに悩んだんだけどね…。この歳でラーメンなんて沢山食べられるモノでもないしさぁ」
歌織が頬を指で掻きながら苦笑するのを、詩乃は猫みたいに好奇心旺盛な瞳で眺めながらニコニコしている。
「えー?いやー、いいじゃん。でも、こんなイベントやってるんだね。町おこしってやつなのかなー」
「……だと思う。各店舗で貰えるスタンプを7個以上集めて応募すると、故郷納税とかで配ってるお肉詰め合わせセットが抽選で当たるんだって」
「わ。お肉! 良いね!! 応募したい!!」
歌織がスマホで特設サイトを確認しながら、ソーセージやハムの入った詰め合わせセットの写真を見せると、詩乃はぱっと目を輝かせた。
そんな風に詩乃の反応が良いことに、歌織は内心ホっと胸を撫で下ろしていた。
詩乃は自分より少し若いし、性格的にもずっとアクティブだ。
面白そうと思ったことには食いついてくるし、自分のように行動する前にあれこれ悩んだりうじうじ躊躇ったりはあまりせず、決断も行動に移すのも早い。
だからこそ今回も思い切って誘ってはみたのだが、二人とも所謂アラサーである。
まだまだ気持ち的にはオバさんと言われたくはないけれど、堂々と若いとも言い難い年齢だ。
お肉は大好きだけど揚げ物はあんまり量はいらない…となって来ている自覚もある。
お互い雑談でラーメンが好きと言う話くらいはしたことはあったが、とにかくラーメンを食べるぞ! なんてイベントに彼女が付き合ってくれるかどうかは、正直なところ不安だったのである。
さっぱりめのラーメンだってあるにはあるだろうが、基本的にラーメンは油も量もボリュームがあるのだ。
……けれど、そんな不安も杞憂で、詩乃は歌織からの連絡に二つ返事で食いついてきた。
自慢ではないが、歌織は友達と言える友達はほとんどいなかったので、こういう時に誘える相手と言うのは本当に貴重だった。
だから一見表面的には何でもないような顔をしているが、詩乃にはとても感謝していた。
別にラーメン屋に一人で入れない訳ではない。
むしろ普段は一人で全然入っている。
それでも、今までラーメンスタンプラリー参加者として、ラーメンを食べてスタンプを貰ったことなんて無かった。
この歳で、女一人で、はちゃめちゃにラーメン食べまくるぞ!!!! と気合を入れて店舗に入店していくのは、お店の人に引かれないだろうか…? 他の客に変な目で見られないだろうか? なんて、変な不安に駆られてしまった歌織はついつい旅の同行者を求めたのだ。
(……死なばもろとも……じゃないけど、旅は道連れって言うもんね)
詩乃は、特設ページで紹介されている参加店舗のリストを眺めながら、何処が美味しそうかな~♪と楽しそうに画面をスクロールさせている。
そんな彼女を眺める歌織も自然と表情が緩むのを感じていた。
仲間がいると言うのは心強いものなのである。
「かおりんは気になってるお店あるの?」
「そうだな……。一番はこっちの鶏白湯のお店かな。ほら、生のレタスみたいの乗ってて珍しくない?」
「ほんとだ~。器も何だかカフェのメニューみたいだねぇ、これ」
「ね」
ラーメンの器と言えばすぐにイメージするのは中華風のぐるぐるが描かれているようなものや、赤や黒のイメージのどんぶりが強い。
しかし、歌織が指さした店のラーメンの器は、真っ白で柄のない…少し縦に長い形のものだ。
最近はたまに見かけることがある器で、この形状だと通常のどんぶり型の器よりもスープが少なくて済む…みたいな理由で採用されてるらしい…なんて話を聞いたことがある。
一般的なラーメンどんぶりと比べると量は少なそうには見えるが、少し小洒落た見た目は悪くない。
詩乃の言う通り、確かにおしゃれなカフェのスープパスタか何かみたいにも見える。
「じゃあ、まずはここに行ってみよう!」
詩乃はそうと決まれば…と言わんばかりに歌織の腕に自分の腕に絡めて、どんどん歩き始めてしまう。
「…って、ちょっと待ってよ。私だけじゃなくて、笹瀬は? 行ってみたいお店は?」
「私のは次で良いよ、次で」
楽しそうに笑う詩乃にぐいぐい引っ張られながら、こうして歌織の人生初のラーメンスタンプラリーが始まった。
どんなラーメンとの出会いが待って居るのか、密かに胸を弾ませながら、二人は目的の場所へと急いだのだった。
それは、駅でポスターを見た歌織がラーメンスタンプラリーへの参加を決めた次の土曜日のこと。
歌織はインターネットで趣味を通じて知り合った友人である笹瀬 詩乃と駅で落ち合っていた。
ふわふわの癖っ毛のショートカットの可愛らしい女性が、歌織の方へと指をひらひら振りながら駆け寄って来る。
詩乃は歌織より3つほど年下で、控えめに言っても地味で垢抜けない歌織と比べると、ファッションにもこだわりを持っているお洒落さんなタイプだ。
着ているTシャツが変だと家族に馬鹿にされたと言うエピソードを憤慨しながら語っていたことはあるが、少なくともこの日は、シックなストライプのシャツにベージュのテーパードパンツという所謂"キレイめ"なファッションを着こなしていた。
「…いや、さすがに悩んだんだけどね…。この歳でラーメンなんて沢山食べられるモノでもないしさぁ」
歌織が頬を指で掻きながら苦笑するのを、詩乃は猫みたいに好奇心旺盛な瞳で眺めながらニコニコしている。
「えー?いやー、いいじゃん。でも、こんなイベントやってるんだね。町おこしってやつなのかなー」
「……だと思う。各店舗で貰えるスタンプを7個以上集めて応募すると、故郷納税とかで配ってるお肉詰め合わせセットが抽選で当たるんだって」
「わ。お肉! 良いね!! 応募したい!!」
歌織がスマホで特設サイトを確認しながら、ソーセージやハムの入った詰め合わせセットの写真を見せると、詩乃はぱっと目を輝かせた。
そんな風に詩乃の反応が良いことに、歌織は内心ホっと胸を撫で下ろしていた。
詩乃は自分より少し若いし、性格的にもずっとアクティブだ。
面白そうと思ったことには食いついてくるし、自分のように行動する前にあれこれ悩んだりうじうじ躊躇ったりはあまりせず、決断も行動に移すのも早い。
だからこそ今回も思い切って誘ってはみたのだが、二人とも所謂アラサーである。
まだまだ気持ち的にはオバさんと言われたくはないけれど、堂々と若いとも言い難い年齢だ。
お肉は大好きだけど揚げ物はあんまり量はいらない…となって来ている自覚もある。
お互い雑談でラーメンが好きと言う話くらいはしたことはあったが、とにかくラーメンを食べるぞ! なんてイベントに彼女が付き合ってくれるかどうかは、正直なところ不安だったのである。
さっぱりめのラーメンだってあるにはあるだろうが、基本的にラーメンは油も量もボリュームがあるのだ。
……けれど、そんな不安も杞憂で、詩乃は歌織からの連絡に二つ返事で食いついてきた。
自慢ではないが、歌織は友達と言える友達はほとんどいなかったので、こういう時に誘える相手と言うのは本当に貴重だった。
だから一見表面的には何でもないような顔をしているが、詩乃にはとても感謝していた。
別にラーメン屋に一人で入れない訳ではない。
むしろ普段は一人で全然入っている。
それでも、今までラーメンスタンプラリー参加者として、ラーメンを食べてスタンプを貰ったことなんて無かった。
この歳で、女一人で、はちゃめちゃにラーメン食べまくるぞ!!!! と気合を入れて店舗に入店していくのは、お店の人に引かれないだろうか…? 他の客に変な目で見られないだろうか? なんて、変な不安に駆られてしまった歌織はついつい旅の同行者を求めたのだ。
(……死なばもろとも……じゃないけど、旅は道連れって言うもんね)
詩乃は、特設ページで紹介されている参加店舗のリストを眺めながら、何処が美味しそうかな~♪と楽しそうに画面をスクロールさせている。
そんな彼女を眺める歌織も自然と表情が緩むのを感じていた。
仲間がいると言うのは心強いものなのである。
「かおりんは気になってるお店あるの?」
「そうだな……。一番はこっちの鶏白湯のお店かな。ほら、生のレタスみたいの乗ってて珍しくない?」
「ほんとだ~。器も何だかカフェのメニューみたいだねぇ、これ」
「ね」
ラーメンの器と言えばすぐにイメージするのは中華風のぐるぐるが描かれているようなものや、赤や黒のイメージのどんぶりが強い。
しかし、歌織が指さした店のラーメンの器は、真っ白で柄のない…少し縦に長い形のものだ。
最近はたまに見かけることがある器で、この形状だと通常のどんぶり型の器よりもスープが少なくて済む…みたいな理由で採用されてるらしい…なんて話を聞いたことがある。
一般的なラーメンどんぶりと比べると量は少なそうには見えるが、少し小洒落た見た目は悪くない。
詩乃の言う通り、確かにおしゃれなカフェのスープパスタか何かみたいにも見える。
「じゃあ、まずはここに行ってみよう!」
詩乃はそうと決まれば…と言わんばかりに歌織の腕に自分の腕に絡めて、どんどん歩き始めてしまう。
「…って、ちょっと待ってよ。私だけじゃなくて、笹瀬は? 行ってみたいお店は?」
「私のは次で良いよ、次で」
楽しそうに笑う詩乃にぐいぐい引っ張られながら、こうして歌織の人生初のラーメンスタンプラリーが始まった。
どんなラーメンとの出会いが待って居るのか、密かに胸を弾ませながら、二人は目的の場所へと急いだのだった。
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