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お腹に温かい温度を感じて結依が目を覚ますと、結依のお腹に背中をくっつけて丸まるように依茉が隣で眠っていた。先ほどまで顔すら見せてくれなかったのに、結依が寝てしまっている間に、依茉の意志で結依の元まで来てくれたと思うと愛しさが込み上げ、ぎゅっと依茉の体を抱き締める。すると依茉が動いて目を覚ました。
「おはよう。依茉も一緒に寝たの?」
「話しようと思ったらね、お母さんが寝てた。」
「ごめんね。依茉がこっちの部屋に来るの待ってたら寝ちゃってた。」
「いいよ。」
依茉がソファから降りるとダイニングテーブルに行き、何かを後ろ手に隠しながら結依の元へ戻ってくる。
「はい。」
「見ていいの?」
「うん。」
依茉はそっぽを向いて気まずそうに畳まれた画用紙を結依に手渡した。結依はソファから起き上がり画用紙を開くと覚えたての時で「ごめんね。」と書かれていた。結依は込み上げる涙を堪えるのが精一杯で黙って依茉の頭を撫でた。
「お父さんとね、海行ったやつ見てたから。会いたくなっちゃったの。でもお父さんはお泊まりしないと会えない所にいるから今日は行っちゃ駄目でしょ?だから電話したくなったの。」
「そうだよね。依茉お父さんに会えなくて寂しいよね。」
「お母さんがいるから大丈夫。でもお父さんが居るともっと楽しいもん。」
「そうだね。じゃあ夜にさ、お父さんに会いに行ってもいいって電話してみようか?」
「いいって言うかな?」
「お父さんだって依茉に会いたいの我慢して仕事してるんだよ。依茉が電話してくれたら嬉しくてびっくりしちゃうかもしれないね。」
「へへ。そうかな。」
依茉をぎゅっと抱き締めると依茉も結依の体をぎゅっと抱き締めた。依茉と体を離し、顔を見ると頬の赤みは引いてい手を触ればひんやりしていた。抱っこしたまま熱を測ると37.2℃まで下がっている。結依が「お薬が効いたね。」と依茉のおでこを触ると、依茉は「お腹空いた」と自分のお腹を両手で擦った。壁に掛けられた時計を見ればもうすぐ18時になろうとしている。今から夕食の準備をする気力も湧かず、依茉に「何食べたい?」と聞くと「ピザ!」と元気に答えた。結依はスマホでデリバリーピザを注文した。30分程で届くと、2人でピザを食べる。体調不良の子供に消化や栄養を考えた物も出せず散らかった部屋の中でジャンクフードを食べさせている事に結依は罪悪感を覚えていた。
「お母さんズルしちゃってごめんね。明日の朝は風邪バイ菌やっつけるご飯作るからね。」
「え?依茉の食べたい物を食べさせてくれるお母さん大好きだよ!依茉全部食べちゃいそう!」
結依の方を向き、大きい口でピザを頬張る姿を見せた。自分の行動を肯定してくれる依茉の言動に結依の心が満たされていく。1枚とはいかなかったが、半分依茉が食べた。お腹が満たされると、大和に「今夜電話していい?」と結依がメッセージを送った。するとすぐに大和から電話が掛かってきた。結依が通話ボタンを押して依茉に渡した。
「お父さん!お仕事おわった?」
「おお、依茉!お仕事終わったよー!」
「今日ね、お熱出て保育園やめたんだよ。」
「そうなの?大丈夫?」
「先生のとこ行って薬もらってチョコアイスに入れて飲んだ!」
「そうか!偉かったな!」
「ご飯はね、ピザ食べた!お母さんと半分こして食べちゃった!」
「すごいな!そんなに食べれたら風邪すぐ治りそうだね。」
「お父さん、いつ帰ってくる?」
「お父さんお休みの日もお仕事だからまだ帰れないな。」
「‥ふーん。」
大和が帰れないと答えると依茉はしょんぼりとうつ向き唇を尖らせている。結依が依茉の肩をとんとんと叩くと依茉が結依にスマホを渡し電話を代わった。
「もしもし、お疲れ様。」
「お疲れ。依茉風邪引いたの?大丈夫?」
「うん。薬もちゃんと飲んだし、熱も朝より下がった。」
「そうか。良かった。」
「あのさ、依茉の風邪が治ったらそっちに会いに行っていい?」
「え?」
「何処も出掛けなくていい。みんなでご飯が食べたい。いいかな?」
「許可なんていらないよ。遠方に依茉を連れて来るの大変だと思って言えなかったんだ。待ってるわ。」
「お父さん!もう治ったから明日行くね!」
「明日?ちゃんとお熱下がって、もらったお薬全部飲んじゃってからおいで。」
「分かった。」
「依茉に会えるの楽しみにしてる。」
電話を切ると久々に父親の声を聞け、父親と会う約束をした事が嬉しくて依茉はピョンピョンと跳ねている。
「お泊まり何持ってっていい?」
「お父さんに見せたい物ある?その前に早く風邪治さなくちゃね。」
「あ!まだチョコアイスの薬飲んでない!早く作って!」
「はーい。」
大和の仕事の足枷になってはならないと結依も自分の気持ちを押さえていたが、一歩踏み入れた発言を大和が受け止めてくれた事が嬉しくて胸が満たされていく。まだまだ興奮がおさまらない依茉の頭を撫でながら結依は柔らかな表情で依茉に微笑んだ。
終
「おはよう。依茉も一緒に寝たの?」
「話しようと思ったらね、お母さんが寝てた。」
「ごめんね。依茉がこっちの部屋に来るの待ってたら寝ちゃってた。」
「いいよ。」
依茉がソファから降りるとダイニングテーブルに行き、何かを後ろ手に隠しながら結依の元へ戻ってくる。
「はい。」
「見ていいの?」
「うん。」
依茉はそっぽを向いて気まずそうに畳まれた画用紙を結依に手渡した。結依はソファから起き上がり画用紙を開くと覚えたての時で「ごめんね。」と書かれていた。結依は込み上げる涙を堪えるのが精一杯で黙って依茉の頭を撫でた。
「お父さんとね、海行ったやつ見てたから。会いたくなっちゃったの。でもお父さんはお泊まりしないと会えない所にいるから今日は行っちゃ駄目でしょ?だから電話したくなったの。」
「そうだよね。依茉お父さんに会えなくて寂しいよね。」
「お母さんがいるから大丈夫。でもお父さんが居るともっと楽しいもん。」
「そうだね。じゃあ夜にさ、お父さんに会いに行ってもいいって電話してみようか?」
「いいって言うかな?」
「お父さんだって依茉に会いたいの我慢して仕事してるんだよ。依茉が電話してくれたら嬉しくてびっくりしちゃうかもしれないね。」
「へへ。そうかな。」
依茉をぎゅっと抱き締めると依茉も結依の体をぎゅっと抱き締めた。依茉と体を離し、顔を見ると頬の赤みは引いてい手を触ればひんやりしていた。抱っこしたまま熱を測ると37.2℃まで下がっている。結依が「お薬が効いたね。」と依茉のおでこを触ると、依茉は「お腹空いた」と自分のお腹を両手で擦った。壁に掛けられた時計を見ればもうすぐ18時になろうとしている。今から夕食の準備をする気力も湧かず、依茉に「何食べたい?」と聞くと「ピザ!」と元気に答えた。結依はスマホでデリバリーピザを注文した。30分程で届くと、2人でピザを食べる。体調不良の子供に消化や栄養を考えた物も出せず散らかった部屋の中でジャンクフードを食べさせている事に結依は罪悪感を覚えていた。
「お母さんズルしちゃってごめんね。明日の朝は風邪バイ菌やっつけるご飯作るからね。」
「え?依茉の食べたい物を食べさせてくれるお母さん大好きだよ!依茉全部食べちゃいそう!」
結依の方を向き、大きい口でピザを頬張る姿を見せた。自分の行動を肯定してくれる依茉の言動に結依の心が満たされていく。1枚とはいかなかったが、半分依茉が食べた。お腹が満たされると、大和に「今夜電話していい?」と結依がメッセージを送った。するとすぐに大和から電話が掛かってきた。結依が通話ボタンを押して依茉に渡した。
「お父さん!お仕事おわった?」
「おお、依茉!お仕事終わったよー!」
「今日ね、お熱出て保育園やめたんだよ。」
「そうなの?大丈夫?」
「先生のとこ行って薬もらってチョコアイスに入れて飲んだ!」
「そうか!偉かったな!」
「ご飯はね、ピザ食べた!お母さんと半分こして食べちゃった!」
「すごいな!そんなに食べれたら風邪すぐ治りそうだね。」
「お父さん、いつ帰ってくる?」
「お父さんお休みの日もお仕事だからまだ帰れないな。」
「‥ふーん。」
大和が帰れないと答えると依茉はしょんぼりとうつ向き唇を尖らせている。結依が依茉の肩をとんとんと叩くと依茉が結依にスマホを渡し電話を代わった。
「もしもし、お疲れ様。」
「お疲れ。依茉風邪引いたの?大丈夫?」
「うん。薬もちゃんと飲んだし、熱も朝より下がった。」
「そうか。良かった。」
「あのさ、依茉の風邪が治ったらそっちに会いに行っていい?」
「え?」
「何処も出掛けなくていい。みんなでご飯が食べたい。いいかな?」
「許可なんていらないよ。遠方に依茉を連れて来るの大変だと思って言えなかったんだ。待ってるわ。」
「お父さん!もう治ったから明日行くね!」
「明日?ちゃんとお熱下がって、もらったお薬全部飲んじゃってからおいで。」
「分かった。」
「依茉に会えるの楽しみにしてる。」
電話を切ると久々に父親の声を聞け、父親と会う約束をした事が嬉しくて依茉はピョンピョンと跳ねている。
「お泊まり何持ってっていい?」
「お父さんに見せたい物ある?その前に早く風邪治さなくちゃね。」
「あ!まだチョコアイスの薬飲んでない!早く作って!」
「はーい。」
大和の仕事の足枷になってはならないと結依も自分の気持ちを押さえていたが、一歩踏み入れた発言を大和が受け止めてくれた事が嬉しくて胸が満たされていく。まだまだ興奮がおさまらない依茉の頭を撫でながら結依は柔らかな表情で依茉に微笑んだ。
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